公認心理師資格試験 過去問解説 第6回 午前 問33|発熱時の身体変化

公認心理師過去問 第6回33 公認心理師試験

第6回公認心理師試験・午前問33は、発熱時にみられる全身の生理反応を問う基礎医学問題です。正答は④ 消化液分泌の抑制です。

発熱では、体温調節中枢の設定温度が上がり、身体は熱を産生・保持する方向へ反応します。その過程では代謝が亢進し、心拍数や呼吸数は増える方向に働きます。また炎症時には異化が進み、タンパク質分解も増加しやすくなります。したがって「減少・低下・抑制」という選択肢の中で適切なのは消化液分泌の抑制です。

問題

発熱時に起こる身体変化として最も適切なものを1つ選ぶ問題です。選択肢には、呼吸数の減少、心拍数の減少、基礎代謝量の低下、消化液分泌の抑制、タンパク質分解の抑制が並んでいます。発熱時に身体がどちらの方向へ変化するかを理解していれば解けます。

選択肢の要点

  1. 呼吸数の減少
  2. 心拍数の減少
  3. 基礎代謝量の低下
  4. 消化液分泌の抑制
  5. タンパク質分解の抑制

正答

④ 消化液分泌の抑制

まず「発熱」と「高体温」を区別する

発熱では、感染や炎症に伴うシグナルによって視床下部の体温調節の設定温度が高い側へ変化します。身体は、新しい設定温度に到達するために熱産生を増やし、熱放散を減らします。寒気や悪寒が生じるのは、実際の体温が新しい設定温度より低い段階で「寒い」と判断されるためです。

一方、熱中症などの高体温では、設定温度そのものが上がっているとは限りません。熱産生や外部環境の負荷が熱放散能力を上回って体温が上昇します。試験では、この違いも基礎知識として押さえておくとよいでしょう。

発熱時は代謝が上がる

体温を上昇させるにはエネルギーが必要です。発熱時には基礎代謝・エネルギー消費が増える方向に働き、酸素需要も増加します。そのため、選択肢③の「基礎代謝量の低下」は発熱時の方向性と逆です。

体温が高い状態を維持するだけでも代謝負担は増えます。感染症では免疫反応そのものにもエネルギーが必要であり、安静時でも平常時より消耗しやすくなります。

選択肢① 呼吸数の減少が誤りの理由

発熱時には代謝亢進によって酸素消費と二酸化炭素産生が増えるため、呼吸数は一般に増加する方向に働きます。特に感染症や炎症が強い場合には、全身代謝の増加に加えて呼吸器症状そのものが呼吸数を押し上げることもあります。

したがって「呼吸数が減少する」を一般的な発熱時の変化として選ぶのは不適切です。ただし実臨床では、薬剤、中枢神経障害、呼吸不全などにより例外的な所見を示すことがあるため、「発熱なら必ず一定数だけ増える」と機械的に覚える必要はありません。

選択肢② 心拍数の減少が誤りの理由

発熱すると代謝需要が増え、組織へ酸素や栄養を運ぶため循環も増える方向に働きます。そのため心拍数は一般に上昇します。臨床では体温上昇と頻脈が同時にみられることが多く、「心拍数の減少」は通常の方向性と反対です。

ただし、体温1℃上昇につき心拍数が何回増える、といった固定値を絶対的な規則として覚える必要はありません。年齢、薬剤、自律神経機能、感染症の種類などで反応は変わります。

選択肢③ 基礎代謝量の低下が誤りの理由

発熱では熱産生が増え、全身の代謝活動は高まります。したがって基礎代謝量は低下するのではなく、増加する方向です。食欲が落ちているからといって、代謝そのものが低くなっていると考えないようにしましょう。

試験では「発熱=代謝亢進」という基本を押さえておけば、この選択肢は比較的容易に除外できます。

選択肢④ 消化液分泌の抑制が正しい理由

発熱や急性炎症時には、身体は感染防御や体温維持に資源を振り向け、食欲や消化管活動が低下しやすくなります。消化液の分泌も抑制される方向に働くため、④が正答です。

ここは、発熱時に「すべての臓器機能が上がる」と考えないことがポイントです。代謝・循環・呼吸は需要増加に応じて亢進しますが、消化活動はむしろ抑えられる側面があります。

選択肢⑤ タンパク質分解の抑制が誤りの理由

発熱を伴う炎症状態では、身体は異化傾向になります。筋タンパク質などの分解が進み、アミノ酸が免疫応答や急性期タンパク質の合成、エネルギー供給に利用されます。したがってタンパク質分解は「抑制」ではなく、むしろ促進される方向です。

長引く発熱や重い感染症で体重減少や筋力低下が起こりやすいのも、摂取量低下だけでなく、こうした異化亢進が関係します。

発熱のしくみ

感染や炎症によってサイトカインなどが産生されると、視床下部の体温調節系に作用し、設定温度が上昇します。身体は皮膚血管収縮やふるえなどによって熱を保持・産生し、設定温度まで体温を上げます。解熱するときには設定温度が元に戻り、今度は発汗や皮膚血管拡張によって熱を逃がします。

発熱時にみられやすい全身変化

  • 代謝率・酸素消費の増加
  • 心拍数の増加傾向
  • 呼吸数の増加傾向
  • 食欲低下や消化機能の低下
  • タンパク質異化の亢進
  • 発汗・脱水リスクの増加

発熱と食欲低下の関係

発熱時に食欲が落ちることは日常的にも経験されます。炎症性サイトカインは食欲や消化管機能にも影響し、身体は活動や摂食よりも感染防御を優先する状態になります。消化液分泌の抑制という正答も、この全身反応の一部として理解すると覚えやすくなります。

試験での見分け方

この問題では、まず「発熱時は代謝が上がる」と置きます。すると基礎代謝量低下は消えます。代謝が上がれば酸素需要と循環需要も増えるため、呼吸数・心拍数の減少も消えます。炎症時は異化が進むのでタンパク質分解の抑制も消え、④が残ります。

方向性で覚えると強い

生理学の選択肢問題は、数値を細かく暗記するより「何が増えるか、何が減るか」という方向性を整理すると解きやすくなります。発熱なら、代謝・循環・呼吸・異化は上向き、消化活動は下向き、とまず大きな流れをつかみましょう。

発熱の初期に寒気が出る理由

体温の設定値が急に高くなると、現在の体温は新しい設定値より相対的に低い状態になります。そのため身体は「もっと温度を上げる必要がある」と判断し、皮膚血管を収縮させたり、筋肉を細かく収縮させるふるえを起こしたりします。これが発熱初期の寒気や悪寒につながります。

解熱時には反対の反応が起こる

炎症シグナルが弱まり設定温度が元に戻ると、今度は実際の体温が設定温度より高い状態になります。身体は熱を逃がすために皮膚血管を拡張し、発汗を増やします。発熱の上がり始めと下がり始めで体感や自律神経反応が反対になることを理解しておくと、体温調節を立体的に捉えられます。

タンパク質異化が進む意味

感染や炎症の際には、エネルギーやアミノ酸を免疫反応・組織修復に回すため、筋タンパク質などの分解が進みやすくなります。長期間の重い炎症で筋力が落ちる背景には、食事摂取量の低下だけでなく、この異化亢進もあります。したがって⑤の「タンパク質分解の抑制」は方向が逆です。

発熱と脱水

発熱中は呼吸や発汗による水分喪失が増えやすく、食欲低下によって飲水量も減ることがあります。そのため脱水に注意が必要です。試験問題の直接の正答ではありませんが、「代謝が上がり、呼吸・循環の負担も増える」という全身反応を理解する補助になります。

すべての患者が同じ反応を示すわけではない

高齢者、乳幼児、重症感染症、薬剤服用中の人などでは、典型的な頻脈や体温上昇がはっきりしないことがあります。試験では一般的な生理反応を答えますが、実臨床では例外があることも重要です。国家試験では「一般にどちらへ変化するか」という方向性と、臨床での個人差を分けて理解しましょう。

消化機能だけが下向きになると考える

本問では、呼吸・循環・代謝・タンパク質異化は発熱時に上向くのに対し、消化機能は下向くという対比を押さえると解きやすくなります。体調不良時に食欲が落ち、胃腸の働きが鈍く感じられる経験とも結びつけられます。ただし、経験だけに頼らず生理学的な方向性で説明できるようにしましょう。

発熱時のエネルギー消費をイメージする

身体が設定温度を高く保とうとすると、平常時より多くのエネルギーを使います。筋肉のふるえ、免疫反応、心拍・呼吸の増加などが重なるため、患者は横になっていても疲労感を覚えやすくなります。このイメージを持つと、「基礎代謝量が低下する」「心拍数が減る」といった選択肢が不自然だと判断できます。

急性期反応としてまとめる

感染や組織障害が起こると、発熱だけでなく、食欲低下、倦怠感、急性期タンパク質の変化、筋タンパク質の異化などが一連の全身反応として起こります。個々の変化を別々に暗記するより、身体が感染防御へ資源を集中させる急性期反応として理解すると、④と⑤の違いも整理しやすくなります。

「消化液分泌の抑制」の覚え方

発熱時には「攻める機能は上がり、食べる機能は下がる」と覚えると整理しやすいです。代謝・循環・呼吸・異化は感染防御や熱産生を支えるため上がる方向、消化活動は食欲低下とともに抑えられる方向です。国家試験では、この大きな方向性を外さないことが重要です。

関連する過去問

代謝の基礎を復習する場合は、甲状腺機能と代謝に関する過去問解説が関連します。また、身体疾患と代謝を整理したい場合は、糖尿病に関する過去問解説も合わせて確認すると理解がつながります。

消去法でも解ける

発熱で代謝が亢進することを起点にすると、①呼吸数減少、②心拍数減少、③基礎代謝低下は同じ方向の誤りとして消せます。さらに炎症時は異化が進むため⑤も除外できます。知識が一部曖昧でも、身体が熱を作り感染防御を進める方向を考えることで④に絞れます。

基礎医学問題としての位置づけ

公認心理師試験では心理学だけでなく、医療領域で必要となる身体の基礎知識も問われます。発熱は精神科・心療内科を含む医療現場でも頻繁に出会う所見です。薬剤副作用や感染症など身体要因を見逃さないためにも、典型的な生理反応を理解しておくことが重要です。

まとめ

第6回午前問33の正答は④ 消化液分泌の抑制です。発熱時は視床下部の体温設定が高まり、代謝需要が増加します。そのため呼吸数・心拍数・基礎代謝は減少ではなく増加方向、タンパク質分解も抑制ではなく異化亢進の方向です。一方、消化活動は抑制されやすいため④が適切です。

参考資料

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