第4回公認心理師試験・午後問81は、心理療法の創始者と理論を対応させる基本問題です。正答は④ 論理情動行動療法〈Rational Emotive Behavior Therapy:REBT〉です。
この問題は一見すると「A. Ellis=REBT」という人物名の暗記で解けます。しかし、公認心理師試験では、心理療法を人物名だけで覚えるよりも、その治療が何を問題とみなし、どこに介入するのかまで整理しておくと、別の設問にも対応しやすくなります。
REBTは、出来事そのものが感情を直接決めるのではなく、出来事をどのような信念・評価を通して捉えるかが、感情や行動に大きく関わると考える認知行動的な心理療法です。後の認知行動療法〈CBT〉の発展を理解するうえでも重要な位置にあります。
[adchord]
問題
第4回公認心理師試験・午後問81では、A. Ellisが創始した心理療法として最も適切なものを1つ選ぶことが求められました。
選択肢は、行動療法、精神分析療法、ゲシュタルト療法、論理情動行動療法、クライエント中心療法という、心理療法史で頻出の代表的アプローチです。
正答
④ 論理情動行動療法〈REBT〉
Albert Ellisは1950年代にREBTの前身となるRational Therapyを発展させ、その後Rational Emotive Therapy、さらにRational Emotive Behavior Therapyという名称へ展開しました。Albert Ellis Instituteも、REBTをEllisが開発した認知行動療法の先駆的アプローチとして位置づけています。
この問題の本質
この問題で押さえるべきことは、単純な「人物と療法の対応」だけではありません。
試験対策としては、次の3点を一まとまりで理解すると効率的です。
1つ目は、A. Ellis=REBTであることです。
2つ目は、REBTが認知行動療法の系譜に位置づくことです。
3つ目は、REBTでは、出来事そのものよりも、その出来事に対する硬直した信念や要求が、強い情緒的苦痛や非適応的行動に関係すると考えることです。
この3点がつながっていれば、「Ellisは誰か」という知識問題だけでなく、ABCモデル、非合理的信念、認知的介入に関する問題にも対応しやすくなります。
A. Ellisとは
Albert Ellisは、20世紀の心理療法史で重要な人物の一人です。
当時の心理療法では精神分析的アプローチの影響が大きかった一方、Ellisは、過去の無意識的葛藤を長く探索することだけではなく、現在の信念や考え方に積極的に働きかけることを重視しました。
REBTは、考え、感情、行動を相互に関連するものとして扱います。単純に「考えを変えれば気分がよくなる」という発想ではなく、本人が出来事にどのような意味づけを行い、どのような要求や評価を持っているかを明確にし、それを検討していく点が特徴です。
現在のCBTには多様なモデルがありますが、EllisのREBTは、認知的アプローチの歴史的な基盤を理解するうえで外せない理論です。
REBTのABCモデル
REBTを理解する際に最も有名なのがABCモデルです。
A:Activating Event
Aは、きっかけとなる出来事です。
たとえば、
- 上司から修正を求められた
- 試験で不合格になった
- 友人から返信がこなかった
- 人前で失敗した
といった状況がAに当たります。
B:Belief
Bは、その出来事についての信念や評価です。
同じ出来事でも、
「失敗してはいけない。失敗する自分には価値がない」
と捉える場合と、
「失敗は望ましくないが、失敗することはあり得る。次に修正できる部分を探そう」
と捉える場合では、その後の感情や行動が異なります。
REBTでは、特に「絶対に〜でなければならない」「〜してはいけない」といった硬直した要求や、極端な自己評価などに注目します。
C:Consequence
Cは、感情的・行動的な結果です。
同じ失敗でも、強い絶望、自己否定、回避につながることもあれば、悔しさを感じながら再挑戦につながることもあります。
REBTでは、AからCへ直接つながると考えるのではなく、Bが重要な媒介要因になると整理します。
ABCモデルは「出来事は関係ない」という意味ではない
試験勉強では、「出来事ではなく認知が感情を決める」と極端に覚えてしまうことがあります。
これは注意が必要です。
現実には、重大な喪失、暴力、差別、経済的困難、病気など、環境そのものへの働きかけが必要な状況があります。REBTやCBTの考え方を、現実の問題を本人の「考え方のせい」に還元するために使うべきではありません。
試験ではABCモデルの構造を理解しつつ、臨床では、環境調整、問題解決、支援要請なども含めて考える必要があります。
認知の見直しと現実的な問題解決の違いは、認知再構成法の記事でも整理しています。
DとEまで含めたABCDEモデル
REBTでは、ABCに加えてDとEを含めたABCDEモデルとして説明されることがあります。
D:Disputation
Dは、非合理的・非機能的な信念を検討する過程です。
たとえば、
「失敗してはいけない」
という信念に対して、
- なぜ絶対に失敗してはいけないのか
- 失敗したら人間としての価値まで失われるのか
- 失敗は不快でも耐えられない出来事なのか
- 同じ失敗をした他者にも同じ評価をするのか
などを検討します。
E:Effective New Philosophy / Effect
Eは、より柔軟で有効な信念や、その結果として生じる新しい感情・行動を表します。
「失敗はしたくない。しかし、失敗する可能性はある。失敗したからといって自分全体の価値が決まるわけではない」
というような捉え方です。
ここでも、無理に前向きな言葉へ置き換えることが目的ではありません。現実を踏まえつつ、硬直した要求を柔軟にすることが重要です。
REBTと認知再構成法の関係
REBTと、現在のCBTで広く用いられる認知再構成は近い部分があります。
どちらも、ある状況で生じた考えや信念を検討し、より柔軟な見方を探します。
一方で、すべてを同一視する必要はありません。
REBTは特に、硬直した要求、破局的評価、低い欲求不満耐性、自己・他者への包括的評価などの「信念」に焦点を当てる特徴があります。
認知再構成法については、自動思考の見直し方を解説した記事と合わせて読むと、試験での位置づけが整理しやすくなります。
REBTとCBTはどう違うのか
「REBT=CBT」と完全に同義語として覚えるのは避けた方がよいでしょう。
CBTは非常に広い治療体系であり、その中には認知療法、行動療法、問題解決、行動活性化、曝露など、多様な理論や技法があります。
REBTは、その認知行動的アプローチの歴史的・理論的な重要な一系統です。
第5回問37では、うつ病に対するCBTで用いられる技法が問われています。REBTと現代の疾患別CBTの違いを整理したい場合は、第5回問37|うつ病に対する認知行動療法も参考になります。
各選択肢の解説
① 行動療法
誤りです。
行動療法は、学習理論を背景として発展した心理療法です。古典的条件づけ、オペラント条件づけなどを基盤に、行動の形成や維持に注目します。
Joseph Wolpeの系統的脱感作法、B. F. Skinnerらの行動分析などが関連人物として重要です。
Ellisは行動的技法も用いますが、「Ellisが創始した心理療法」という問いに対してはREBTが正答です。
② 精神分析療法
誤りです。
精神分析はSigmund Freudによって体系化されました。
無意識、葛藤、防衛機制、転移などが代表的な概念です。EllisのREBTは、精神分析とは異なり、現在の信念を比較的直接的・能動的に検討する点に特徴があります。
③ ゲシュタルト療法
誤りです。
ゲシュタルト療法はFritz Perlsらによって発展しました。
「今、ここ」での体験や気づきを重視するアプローチであり、EllisのREBTとは異なります。
④ 論理情動行動療法〈REBT〉
正答です。
A. Ellisが創始した心理療法です。
出来事に対する硬直した信念や要求を検討し、より柔軟で現実的な信念への変化を促すことを重視します。
⑤ クライエント中心療法
誤りです。
クライエント中心療法はCarl Rogersによって発展しました。
共感的理解、無条件の肯定的関心、自己一致といった考えが重要です。
試験では「Rogers=クライエント中心療法」「Ellis=REBT」を明確に区別します。
人物と心理療法をまとめて覚える
国家試験では、創始者と心理療法の対応が繰り返し問われます。
- Freud:精神分析
- Rogers:クライエント中心療法
- Ellis:REBT
- Beck:認知療法
- Perls:ゲシュタルト療法
- Wolpe:系統的脱感作法
- Linehan:DBT
単なる丸暗記ではなく、「どこに介入する理論か」までセットにすると記憶が安定します。
試験での見分け方
この問題は、人物名を見た瞬間に正答できることが理想です。
Ellis → REBT → ABCモデル → 非合理的信念の検討
という一本のまとまりで覚えてください。
さらに、
Beck → 認知療法 → 自動思考・スキーマ
Rogers → クライエント中心療法 → 共感・無条件の肯定的関心・自己一致
と対比すると、混同しにくくなります。
第三世代CBTまで含めて整理したい場合は、第4回問54|マインドフルネスに基づく認知行動療法も関連します。
まとめ
第4回公認心理師試験・午後問81の正答は、④ 論理情動行動療法〈REBT〉です。
A. EllisはREBTを創始し、出来事そのものではなく、出来事に対する信念や評価が感情・行動に影響するという考えを重視しました。
試験対策では、
- Ellis=REBT
- ABCモデル
- B=Belief
- 硬直した要求や非合理的信念を検討する
- REBTは認知行動療法の発展に重要な位置を占める
という流れで覚えると効率的です。
REBTでいう「合理的」は感情をなくすことではない
REBTの「rational」は、「感情を持たない」「いつも冷静でいる」という意味ではありません。
たとえば、試験に落ちたときに落ち込むこと自体は自然な反応です。REBTで問題になりやすいのは、
「絶対に合格しなければならなかった。落ちた自分は価値がない」
というように、一つの出来事を自分全体の価値へ結びつけたり、現実に対して硬直した要求を課したりすることです。
そのため、REBTでは感情を消すよりも、状況に見合った感情へ変化させることを目指します。強い絶望や自己否定が、残念さや悔しさへ変われば、次の行動を選びやすくなります。
この点は、国家試験で「REBT=ポジティブ思考」と誤解しないためにも重要です。
試験で関連して出やすい用語
EllisとREBTを覚えたら、次の用語も関連づけておきましょう。
- ABCモデル
- 非合理的信念
- 硬直した要求
- 論駁〈disputation〉
- 認知行動療法
- 認知再構成
- 自動思考との区別
特にABCモデルは、他の理論のABCと混同しないようにします。行動分析でもAntecedent-Behavior-ConsequenceというABCが使われますが、REBTのABCはActivating Event-Belief-Consequenceです。同じ「ABC」でも意味が異なります。
参考文献・出典
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター.第4回公認心理師試験 午後問題・正答.
- Albert Ellis Institute. Our Mission and History / About AEI.
- American Psychological Association. APA Dictionary of Psychology: rational emotive behavior therapy.
- Ig Knowledge.認知再構成法とは?自動思考の見直し方・コラム法のやり方を心理学から解説.


コメント