第6回公認心理師試験・午前問29は、学習方略の中でもメタ認知方略を見分ける問題です。正答は③ メタ認知方略です。ポイントは、「自分が理解している状態を把握する」というモニタリングと、「それに基づいて学習行動を調整する」というコントロールの二段階が明示されていることです。
- 実際の問題文
- 問題文の読み解き
- 正答③ メタ認知方略
- メタ認知的モニタリングとは
- メタ認知的コントロールとは
- ① 精緻化方略が誤りである理由
- ② 体制化方略が誤りである理由
- ④ 深い処理の方略が誤りである理由
- ⑤ 外的リソース方略が誤りである理由
- 認知的方略とメタ認知的方略の違い
- 自己調整学習〈SRL〉との関係
- 学習の計画・モニタリング・評価
- 「分からないことが分かる」だけでは不十分
- 学習支援での使い方
- 既存のメタ認知記事との関係
- 試験での見分け方
- メタ認知知識とメタ認知方略の違い
- モニタリングの精度が重要
- 援助要請は複数の方略にまたがり得る
- メタ認知方略を育てる問いかけ
- メタ認知は学習以外にも使われる
- 誤答しやすい「精緻化」との違い
- まとめ
- 参考文献・資料
- Yamashun|臨床心理士・公認心理師
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実際の問題文
問29 学習者が、自分が理解している状態を把握し、それに基づいて自分の学習行動を調整する学習方略として、適切なものを1つ選べ。
① 精緻化方略
② 体制化方略
③ メタ認知方略
④ 深い処理の方略
⑤ 外的リソース方略
問題文の読み解き
設問には、メタ認知の中心となる二つの働きがそのまま書かれています。一つは「自分がどの程度理解できているかを把握する」こと、もう一つは「その結果に応じて学習方法を変える」ことです。
前者はメタ認知的モニタリング、後者はメタ認知的コントロールと考えることができます。したがって③メタ認知方略が最も適切です。
正答③ メタ認知方略
メタ認知とは、自分自身の認知活動を一段上から捉え、理解度や学習状況を把握し、必要に応じて調整する働きです。学習場面では「分かったつもりになっていないか」「この方法で覚えられているか」「この問題はまだ説明できない」といった自己評価が含まれます。
メタ認知方略は、こうしたモニタリングをもとに、復習方法を変える、学習時間を配分し直す、別の教材を使う、質問するなどの行動調整へつなげる方略です。
メタ認知的モニタリングとは
メタ認知的モニタリングは、自分の理解状態や記憶状態、課題の進み具合を評価する働きです。たとえば、問題を解いた後に「本当に説明できるか」を確認したり、学習内容を見ずに再生して理解度を確かめたりすることが該当します。
単に「勉強した」という事実ではなく、どこまで理解できているかを自分で確認する点が重要です。
メタ認知的コントロールとは
モニタリングの結果に基づいて、学習行動を調整する働きです。理解できていない箇所を再学習する、難しい単元へ時間を多く配分する、問題演習へ切り替える、他者に質問する、といった調整が含まれます。
本問は「把握し、それに基づいて調整する」と書かれているため、メタ認知のモニタリングとコントロールを連続して示しています。
① 精緻化方略が誤りである理由
精緻化方略は、新しい情報を既有知識と関連づけたり、自分の言葉で言い換えたり、具体例を作ったりして、情報に意味的なつながりを加える認知的方略です。
理解を深めるために有効ですが、「自分がどの程度理解しているかを把握し、その結果をもとに学習方法を調整する」という本問の中心とは異なります。
② 体制化方略が誤りである理由
体制化方略は、学習内容を分類、階層化、図式化するなどして、情報を構造的に整理する方略です。概念マップを作る、項目をカテゴリー分けする、表にまとめるといった方法が該当します。
情報を整理する認知的方略であり、自己の理解状態を監視して学習を調整するメタ認知方略とは区別されます。
④ 深い処理の方略が誤りである理由
深い処理の方略は、表面的に暗記するのではなく、意味理解、関連づけ、理由づけなどを通して内容を深く処理することを重視する広い概念です。
精緻化や体制化を含む場合もありますが、本問の「理解状態の把握」と「学習行動の調整」を直接表す用語ではありません。
⑤ 外的リソース方略が誤りである理由
外的リソース方略は、学習者の外部にある資源を利用する方略です。教師や友人へ質問する、参考書やウェブ資料を使う、学習環境を整えるといった行動が該当します。
メタ認知の結果として外的リソースを使う場合はありますが、「外部資源を使うこと」そのものと「理解状態を把握して調整すること」は別の概念です。
認知的方略とメタ認知的方略の違い
認知的方略は、学習内容そのものを処理するための方法です。精緻化、体制化、反復などが代表例です。一方、メタ認知的方略は、「どの認知的方略をいつ使うか」「今の方法で理解できているか」を監視・調整する、より上位の働きです。
したがって、同じ学習者が精緻化方略を使いながら、その効果をメタ認知的に評価し、必要なら別の方略へ切り替えることもあります。
自己調整学習〈SRL〉との関係
自己調整学習〈self-regulated learning: SRL〉は、学習者が自分の学習を能動的に計画し、実行し、評価・調整していく包括的な枠組みです。そこには認知、メタ認知、動機づけ、行動調整、環境調整などが含まれます。
メタ認知方略はSRLの重要な要素ですが、SRLと完全に同義ではありません。SRLの方が、動機づけや時間管理、環境調整などまで含む広い概念です。
学習の計画・モニタリング・評価
計画
学習前に目標を設定し、どの教材を使うか、どれくらい時間をかけるかを決めます。
モニタリング
学習中に「理解できているか」「予定どおり進んでいるか」「この方法は有効か」を確認します。
評価・調整
学習後に成果を振り返り、必要なら方法や時間配分を変更します。
「分からないことが分かる」だけでは不十分
メタ認知では、自分の理解不足に気づくことが重要ですが、それだけで終わるわけではありません。本問は、その把握に基づいて学習行動を調整すると明記しています。
たとえば「この単元は理解できていない」と分かった後、再読する、問題を解く、質問する、別の説明を探すなどの行動へ移すことがメタ認知方略の実践です。
学習支援での使い方
学習支援では、正解・不正解だけをフィードバックするのではなく、「どこで理解が止まったか」「自分ではどの程度分かっていると思っていたか」「次に何を試すか」を振り返らせることで、メタ認知的な学習を促せます。
特に、勉強時間は長いのに成果が出にくい場合、学習量ではなくモニタリングや方略選択に課題があることもあります。
既存のメタ認知記事との関係
メタ認知そのものの意味や日常場面での使い方については、Ig Knowledgeの「メタ認知とは?自分の考え方を一歩引いて見る心理学」で詳しく解説しています。本問では、その中でも学習場面におけるモニタリングと調整に焦点が当たっています。
試験での見分け方
「自分の理解度を確認する」
自己の認知状態を確認する記述はメタ認知の強い手掛かりです。
「方法を変える」
理解度に応じて学習方法や時間配分を調整するなら、メタ認知的コントロールを考えます。
内容処理そのものとは区別する
意味づけ、分類、図式化などは認知的方略です。「その方略がうまく機能しているかを評価する」ことがメタ認知です。
メタ認知知識とメタ認知方略の違い
メタ認知には、自分や課題、方略についての知識であるメタ認知知識と、実際に学習を監視・調整するメタ認知的活動を区別して考えることがあります。たとえば「自分は文章だけでは覚えにくい」と知っていることはメタ認知知識です。
一方、その知識を使って図にまとめる方法へ切り替え、理解度を再確認することはメタ認知方略に当たります。本問は後者の行動調整まで含んでいます。
モニタリングの精度が重要
学習者は、実際よりも「分かった」と感じてしまうことがあります。教科書を読み返すだけでは内容が見慣れて流暢に感じられ、理解できたと錯覚することもあります。そのため、自己テストや説明、問題演習などを用いて理解度を確かめることが有効です。
モニタリングの精度が低いと、必要な復習をせず次へ進んだり、逆に理解できている範囲へ過剰に時間を使ったりします。メタ認知方略は、限られた学習時間の配分にも関係します。
援助要請は複数の方略にまたがり得る
教師や友人に質問すること自体は外的リソース方略ですが、「自分だけでは理解できない」と判断して質問へ切り替える過程にはメタ認知的モニタリングとコントロールが関与します。
このように、実際の学習行動では方略同士が独立しているとは限りません。ただし試験では、選択肢が直接表している中心概念を選びます。本問は理解状態の把握と調整を明示しているため③です。
メタ認知方略を育てる問いかけ
学習支援では、「分かった?」と聞くだけでは十分なモニタリングを促しにくい場合があります。「どこまでなら自分の言葉で説明できる?」「次に何を確認する?」「この方法で覚えられた根拠は?」など、具体的な問いかけが有効です。
こうした振り返りを繰り返すことで、学習者自身が自分の理解状態を把握し、必要な方略を選ぶ力を高めていきます。
メタ認知は学習以外にも使われる
メタ認知は学習場面だけの概念ではありません。問題解決、意思決定、感情調整、対人場面などでも、自分の考え方や反応を一段引いて捉え、必要に応じて修正する働きとして重要です。
ただし、本問はあくまで学習方略を問う問題なので、試験では一般的なメタ認知の説明へ広げ過ぎず、「理解状態の把握」と「学習行動の調整」という二つのキーワードを押さえます。
誤答しやすい「精緻化」との違い
精緻化方略も学習を深める重要な方法なので、メタ認知方略と混同しやすい選択肢です。たとえば「新しい概念を自分の経験と結びつけて説明する」ことは精緻化です。一方、「その説明で本当に理解できているかを確認し、十分でなければ別の学習方法へ切り替える」ことはメタ認知方略です。
つまり、精緻化は内容をどう処理するか、メタ認知はその処理がうまくいっているかをどう監視・調整するか、という違いがあります。試験ではこの階層の違いを意識すると選びやすくなります。
まとめ
第6回午前問29の正答は③ メタ認知方略です。自分の理解状態を把握することはメタ認知的モニタリング、それに基づいて学習方法を調整することはメタ認知的コントロールに対応します。精緻化や体制化は内容を処理する認知的方略、外的リソース方略は外部資源の利用であり、本問の記述とは異なります。

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