第5回公認心理師試験・午後問78は、小児科外来で児童虐待が疑われる外傷を医師が認めた場面で、公認心理師が保護者面接において何を優先するかを問う事例問題です。
正答は ② 親の悩みや感情を聞く です。
この問題の重要なポイントは、
心理職が「虐待の事実を確定するための事情聴取」を単独で行う役割ではない
ということです。
医師が子どもの診察を続けている間、公認心理師に求められているのは、親の心理状態や困りごとを受け止め、必要な情報をチームへつなぐ支援的な面接です。

問題
小児科外来で、医師が2日前に階段から転落した乳幼児の診察中に、虐待が疑われる外傷を認めた。
医師が更に診察を行う間、乳幼児を連れてきた親の面接を依頼された公認心理師の対応として、最も適切なものを1つ選べ。
- 親の生育歴を聞く。
- 親の悩みや感情を聞く。
- 受傷起点の詳細を聞く。
- 受傷と受診の時間差の理由を聞く。
- 他の家族が受傷に関与している可能性を聞く。
正答は ② 親の悩みや感情を聞く です。
正答②|心理職は「支援的面接」を行う
この場面では、すでに医師が虐待を疑う外傷を認めています。
公認心理師が行う面接では、
- 今どのような気持ちでいるか
- 育児で困っていることはないか
- 家庭内で負担になっていることはないか
- 相談できる人はいるか
- 生活上どのようなストレスがあるか
など、保護者の心理状態や支援ニーズを把握することが重要です。
これは、虐待の可能性を軽く見るという意味ではありません。
むしろ、
子どもの安全確保を最優先しながら、心理職は自分の専門性に沿って家族の心理社会的情報を把握する
という役割分担です。
なぜ「事情聴取」をしないのか
虐待が疑われると、
「何があったのか詳しく聞かなければ」
と考えたくなります。
しかし、医療機関内で複数の職種がそれぞれ独自に詳細な聞き取りを行うと、
- 情報が食い違う
- 保護者が防衛的になる
- 同じ質問を何度も繰り返す
- チーム内で役割が曖昧になる
- 事実確認と心理支援が混在する
といった問題が起こる可能性があります。
身体所見、受傷機転、医学的危険度などの確認は、医師を中心に医療チームで整理する必要があります。
公認心理師は、捜査官や法医学者の役割を担うわけではありません。
③ 受傷起点の詳細を聞く|不適切
受傷状況は虐待評価に重要です。
しかし本問は、
医師が診察を続けている間に、公認心理師が親の面接を依頼された
という場面です。
受傷機転の詳細な事実確認を心理職が独自に進めるより、医師・看護師などと役割分担し、親の心理的側面と支援ニーズを把握することが適切です。
したがって③ではありません。
④ 受傷と受診の時間差を詳しく尋ねる|不適切
受傷から受診までの時間差は、虐待評価において重要な情報になり得ます。
ただし、これも主として受傷状況を検証するための事実確認です。
公認心理師の最初の役割としては、より支援的な面接を行う②が適切です。
⑤ 他の家族の関与可能性を尋ねる|不適切
「誰がけがをさせたのか」という方向へ踏み込む質問は、事実確認・調査の色合いが強くなります。
この場面で公認心理師が単独で加害者を特定しようとすることは適切ではありません。
必要な情報収集は、医療チームと児童相談所などの関係機関が連携して行います。
① 親の生育歴を聞く|優先度が低い
親自身の生育歴は、長期的な家族理解に役立つ場合があります。
しかし、虐待が疑われる外傷が見つかった直後の面接で、最初に詳細な生育歴を掘り下げることは優先度が高くありません。
まずは現在の心理状態、困りごと、負担感を確認する方が適切です。
虐待が疑われたときに重要なこと
児童虐待対応では、
虐待を確定してから通告する
のではありません。
虐待を受けたと思われる児童を発見した場合、必要な関係機関へ速やかにつなぐことが重要です。
厚生労働省の資料でも、確証が得られない場合であっても、虐待の疑いがあるときには通告をためらわないことが示されています。
したがって、
「親の悩みや感情を聞く=通告しない」
という意味ではありません。
心理面接と安全確保・通告は両立します。
医療機関ではチームで対応する
児童虐待が疑われる場合、
- 医師
- 看護師
- 公認心理師
- 医療ソーシャルワーカー
- 児童相談所
- 市区町村
- 必要に応じて警察
などが連携します。
各職種が同じことをするのではなく、
専門性に応じて情報を集め、チームで統合する
ことが重要です。
Ig Knowledgeの第5回午前問34|小児科における公認心理師の活動でも、虐待対応を医師だけへ丸投げしない多職種連携を扱っています。
また、学校場面での虐待対応は第4回午前問77|児童虐待への初期対応と通告も関連します。
保護者を責める面接にしない
虐待が疑われる場面では、支援者も強い感情を抱きやすくなります。
しかし、面接の場で保護者を責めたり、追及したりすると、
- 防衛的になる
- 必要な情報が得にくくなる
- 支援関係が切れる
- 子どもの安全確保に必要な連携が難しくなる
可能性があります。
心理職は、
子どもの安全を最優先しながら、保護者にも支援が必要な可能性を考える
という複眼的な視点が必要です。
「傾聴」だけで終わらない
②が正答だからといって、
「親の話を聞いて終わり」
ではありません。
面接で得られた情報は、
- 子どもの安全
- 緊急性
- 家庭の支援資源
- 保護者の精神状態
- 育児負担
などの観点からチームで共有し、必要な対応へつなげます。
重要なのは、
心理職が自分だけで虐待認定や加害者特定をしない
ことです。
試験での見分け方
虐待事例では、
誰の役割として何をするのか
を読むことが重要です。
本問では、
- 医師 → 子どもの身体診察
- 公認心理師 → 親への心理的支援・状態把握
- 医療チーム/関係機関 → 安全評価・通告・対応方針の決定
と整理すると②を選びやすくなります。
まとめ
第5回公認心理師試験・午後問78の正答は ② 親の悩みや感情を聞く です。
虐待が疑われる場面では、
心理支援と事実確認を混同しない
ことがポイントです。
公認心理師は親の心理状態や困りごとを聞き、得られた情報をチームへつなぎながら、子どもの安全確保に必要な連携へ参加します。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第5回公認心理師試験 午後問題・正答
- 厚生労働省|子ども虐待対応の手引き
- 厚生労働省|児童虐待に気づいたときの対応


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