第4回公認心理師試験・午後問91は、L. Kohlbergの道徳性発達理論において、具体的な判断がどの段階に当たるかを見分ける問題です。正答は ⑤ 報酬と取引への志向性 です。
本問の判断文は、「近所のおばあさんは、いつもお菓子をくれるから良い人である」という内容です。
この判断では、「相手が社会的に立派だから」「ルールを守るから」「普遍的な倫理原則に沿っているから」ではなく、自分にとって利益・報酬を与えてくれるかどうかが「良い人」の基準になっています。
これはKohlbergの前慣習的水準の第2段階、いわゆる報酬・交換・道具的目的を重視する段階に該当します。

問題
Kohlbergの道徳性発達理論において、「近所のおばあさんは、いつもお菓子をくれるから良い人である」という判断に該当する発達段階を選びます。
- 法と秩序の志向性
- 社会的契約の志向性
- 罰と服従への志向性
- 対人的同調への志向性
- 報酬と取引への志向性
正答は ⑤ 報酬と取引への志向性 です。
正答は⑤|「自分に利益があるか」で判断している
Kohlbergは、道徳的判断が発達とともに質的に変化すると考えました。
重要なのは、単に「正しい答えを選べるか」ではありません。
なぜそれを正しいと判断したのか
という理由づけに注目します。
本問では、
「お菓子をくれる」
↓
「自分にとってうれしい・利益がある」
↓
「だから良い人」
という判断です。
つまり、道徳的評価の基準が報酬や交換、自分の利益にあります。
したがって⑤です。
Kohlbergの3水準6段階
Kohlbergの理論は、一般に3つの水準と6つの段階に整理されます。
第1水準|前慣習的水準
社会の規則そのものよりも、自分にどのような結果が返ってくるかを重視します。
第1段階|罰と服従への志向性
「罰を受けるから悪い」
という判断です。
善悪の基準が、権威者からの罰に置かれています。
第2段階|報酬と取引への志向性
「自分に利益があるから良い」
「相手がしてくれたから自分も返す」
という判断です。
本問はこの段階です。
第2水準|慣習的水準
周囲の期待や社会のルールを重視します。
第3段階|対人的同調への志向性
「良い子と思われたい」
「家族や友人から認められる行動が良い」
という判断です。
他者からの承認や、人間関係の維持が重要になります。
第4段階|法と秩序の志向性
「法律や社会のルールを守ることが大切」
という判断です。
個人的な人間関係を超えて、社会秩序や義務を重視します。
第3水準|後慣習的水準
既存のルールをそのまま受け入れるのではなく、その背後にある原理や権利を考えます。
第5段階|社会的契約の志向性
法律や制度は重要ですが、それらは人々の権利や福祉を守るための社会的合意として捉えられます。
必要なら制度を変更できるという発想も含まれます。
第6段階|普遍的倫理原則への志向性
正義、人間の尊厳、平等など、普遍的な倫理原則に基づいて判断します。
③「罰と服従への志向性」との違い
第1段階では、
罰を避けること
が中心です。
たとえば、
「先生に怒られるから盗んではいけない」
という判断です。
一方、本問では「お菓子をもらえる」という報酬が基準です。
したがって③ではなく⑤です。
④「対人的同調への志向性」との違い
第3段階では、周囲からの評価や期待を重視します。
たとえば、
「お母さんに良い子だと思われたいから手伝う」
という判断です。
本問の「お菓子をくれるから良い人」は、他者からの承認よりも自分に返ってくる利益を重視しています。
したがって④ではありません。
①「法と秩序の志向性」との違い
第4段階では、
- ルール
- 社会秩序
- 義務
- 法律
などを守ることが道徳判断の中心になります。
「法律で決まっているから守る」という判断は第4段階です。
本問は個人的な報酬が基準なので①ではありません。
②「社会的契約の志向性」との違い
第5段階では、社会のルールを絶対視するのではなく、
人々の権利や福祉を守るための合意
として捉えます。
本問のような具体的な報酬に基づく判断とは大きく異なります。
「行動」ではなく「理由」を見る
Kohlbergの問題で最も重要なのはここです。
同じ行動を選んでも、理由が違えば道徳性の段階も異なります。
たとえば「ルールを守る」という行動でも、
- 怒られるから → 第1段階
- 得をするから → 第2段階
- 良い人と思われたいから → 第3段階
- 社会秩序のため → 第4段階
と変わります。
したがって、試験では理由づけのキーワードを拾います。
Heinzのジレンマ
Kohlbergは、道徳的ジレンマを提示し、その答えではなく理由づけを分析しました。
有名なのがHeinzのジレンマです。
「妻を救うために、高価な薬を盗んでもよいか」というような葛藤場面に対して、
- 罰を避けたい
- 自分に得がある
- 良い夫でありたい
- 法律を守るべき
- 生命の権利を優先する
など、どのような理由で判断したかを見ることで道徳性の発達段階を捉えます。
Piagetとの関係
KohlbergはPiagetの認知発達理論の影響を受け、道徳性についても段階的な発達を考えました。
ただし、
年齢だけで自動的に段階が決まるわけではありません。
同じ人でも、状況によって異なる水準の理由づけを示すことがあります。
試験では典型的な段階特徴を理解しておくことが重要です。
Kohlberg理論の限界
Kohlbergの理論は道徳性研究に大きな影響を与えましたが、批判もあります。
たとえばC. Gilliganは、Kohlbergが正義や権利を重視した道徳判断に偏っており、ケアや関係性を重視する道徳のあり方が十分に捉えられていないと指摘しました。
この点から、道徳性を単一の発達軸だけで捉えない見方も広がっています。
試験対策では理論の基本構造を押さえたうえで、このような背景を知っておくと理解が深まります。
試験での見分け方
次のキーワードで対応させます。
- 罰を避ける → 第1段階
- 報酬・取引・自分の利益 → 第2段階
- 良い子・他者からの承認 → 第3段階
- 法律・社会秩序・義務 → 第4段階
- 社会契約・権利 → 第5段階
- 普遍的倫理原則 → 第6段階
本問は「お菓子をくれる」という報酬が明確なので⑤です。
まとめ
第4回公認心理師試験・午後問91の正答は ⑤ 報酬と取引への志向性 です。
「相手が自分に利益を与えてくれるから良い」という判断は、Kohlbergの前慣習的水準の第2段階に該当します。
試験では6段階を丸暗記するより、
罰 → 報酬 → 承認 → 法秩序 → 社会契約 → 普遍原理
という流れで整理すると見分けやすくなります。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第4回公認心理師試験 午後問題・正答
- OpenStax Psychology|Kohlberg’s Theory of Moral Development


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