公認理師資格試験 過去問解説 問89 知能検査実施の心構え
- 2021.11.06
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 心理検査, 第3回公認心理師試験
第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問89】知能検査実施の心構え
問89 知能検査の実施について、最も適切なものを1つ選べ。
① 検査者が十分に習熟していない検査を用いることを控えた。
② 被検査者に求められたため、検査用紙をコピーして渡した。
③ 客観的情報を収集するために、被検査者とのラポール形成を避けた。
④ 被検査者が検査に対する先入観や恐怖心を抱かないように、事前に検査について説明することを控えた。
⑤ 実施時間が2時間を超え、被検査者が疲れている様子であったが、そのまま続けて全ての検査項目を実施した。
① 検査者が十分に習熟していない検査を用いることを控えた
となります。
今回の問題は知能検査含めた心理検査を実施する前や実施中の心構え・態度に関する問題となっていますね。
実践家となる前に押さえておくべき内容ですし、実践していく中でも定期的に振り返る必要のある項目といえるでしょう。
選択肢の解説
今回の選択肢の解説には、知能検査のひとつであるWISC-Ⅳに関して日本文化科学社から公開されているテクニカルレポートを参考にしている部分があります。
以下にリンクを貼っておきますが、WISC-Ⅳを実施する際には一度確認してくださいね💁🏻
① 検査者が十分に習熟していない検査を用いることを控えた
こちらの選択肢に関してですが、WISC-Ⅳ知能検査テクニカルレポートの#2(2012年2月17日)には、以下のように記載されています。
- テスト・スタンダードに則って、検査は作られ、使われなくてはならない
- 心理検査は十分な専門的研修を積んだ有資格者によって実施されなければならない
テスト・スタンダードとは、「検査の概要」「実施法」「解釈」「責任と倫理」などが含まれています。
心理検査は被検査者にとって負担がかかり、かつ、結果によって今後の生活に影響が出る重要な個人情報になります。
妥当性のある検査結果を得るためにも専門的な研修などを経て十分に習熟した検査を用いることが、公認心理師に問われる責任といえるでしょう。
よって、選択肢①「検査者が十分に習熟していない検査を用いることを控えた」は正しい記載といえますので、今回の問題の正答となりますね。
② 被検査者に求められたため、検査用紙をコピーして渡した
こちらの選択肢に関してですが、WISC-Ⅳ知能検査テクニカルレポートの#2(2012年2月17日)を見ていきます。
- 保護者に検査結果のプロフィールをコピーして渡すことは原則として認められない
とあります。
WISC-Ⅳは子ども用の知能検査であるため、「保護者」という文言になっていますが、基本的にどの心理検査であっても被検査者に対して検査用紙自体をコピーして渡すことは避けられるべきでしょう。
その理由としては、「検査の詳細がわかることによって検査の妥当性が危ぶまれるようになる」ことなどが挙げられますよね。
よって、選択肢②「被検査者に求められたため、検査用紙をコピーして渡した」は不適切な記述といえます。
③ 客観的情報を収集するために、被検査者とのラポール形成を避けた
心理検査実施時に収集する客観的情報とは、検査時の行動観察に基づく情報という意味ですが、検査場面での検査者との相互作用ももちろん情報に含まれます。
できるだけ日常の姿に近い客観的情報を得るためには、被検査者とのラポール形成は欠かせません。
そのため、選択肢③「客観的情報を収集するために、被検査者とのラポール形成を避けた」という記述は不適切とわかります。
④ 被検査者が検査に対する先入観や恐怖心を抱かないように、事前に検査について説明することを控えた
こちらの選択肢については、寧ろ正反対といっても過言ではないでしょう。
「被検査者が検査に対する先入観や恐怖心を抱かないように」最大限の配慮をすることは重要で、そのために「検査の目的」「結果がどのように使われるのか」などを簡単に説明することが必要となります。
検査について説明することで、動機づけを高めることにも繋がります。
医療機関での心理検査では、主治医の先生から検査目的を詳しく伝えられていない状態で検査に臨まれる方が案外多いので、検査実施前に「主治医の先生から今日どんなことをする、と聞いていますか?」などと質問をすることもしばしばあります。
以上のことから、選択肢④「被検査者が検査に対する先入観や恐怖心を抱かないように、事前に検査について説明することを控えた」は正しい記述とはいえませんね。
⑤ 実施時間が2時間を超え、被検査者が疲れている様子であったが、そのまま続けて全ての検査項目を実施した
こちらの選択肢については、「検査の途中で休憩を挟むか否か」について問うています。
心理検査の種類によっては、途中で休憩を挟むことによって検査の妥当性が担保しにくくなる検査もあるので注意が必要です。
*多くの場合は、対面式で実施する人格検査が該当します
一方で、知能検査はほとんどの検査が1時間〜2時間程度の時間がかかるため、長丁場となり被検査者への負担も大きいといえます。
こうした実施に時間のかかる知能検査では、下位検査ごとに区切られていることが多いため、被検査者が疲れている様子があれば、連続して実施する必要のない下位検査同士の合間であれば休憩を挟んだ方が良いと考えられます。
冷静に考えると、日常生活で2時間以上合間なくずっと集中し続けるような場面はそれほど多くないですよね。
よって、選択肢⑤「実施時間が2時間を超え、被検査者が疲れている様子であったが、そのまま続けて全ての検査項目を実施した」は適切とは言い難く、問題の解答としては不適当といえるでしょう。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問89は、知能検査実施の心構えに関する問題でした❗️
今回の問題はそれほど難易度が高くはないですが、
- 被検査者に検査用紙をコピーしてそのまま渡すことは原則避ける
という部分だけは押さえておくようにしておきましょう!
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