公認理師資格試験 過去問解説 問117 公認心理師が留意すべき職責や倫理
- 2023.01.22
- 公認心理師(第3回)
- 公認心理師法, 第3回公認心理師試験, 若手心理職・大学院生
第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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問117 公認心理師が留意すべき職責や倫理について、不適切なものを1つ選べ。
① 心理的支援に関する知識及び技術の習得など資質向上に努めなければならない。
② 法律上の「秘密保持」と比べて、職業倫理上の「秘密保持」の方が広い概念である。
③ 心理的支援の内容・方法について、クライエントに十分に説明を行い、同意を得る。
④ 心理状態の観察・分析などの内容について、適切に記録し、必要に応じて関係者に説明ができる。
⑤ クライエントの見捨てられ不安を防ぐため、一度受理したケースは別の相談機関に紹介(リファー)しない。
出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
となります。
選択肢の解説
公認心理師の職責や倫理に関する問題です。
①心理的支援に関する知識及び技術の習得など資質向上に努めなければならない
公認心理師法第43条(資質向上の責務)に関する正しい記述ですね。
資質向上の責務に関しては、努めなければならないとあるように、法律上では努力義務となっており、違反した場合の明確な罰則はありません。
ただし、職業倫理上でも研鑽の必要性はあるため常に心に留めておくことが大切です。
②法律上の「秘密保持」と比べて、職業倫理上の「秘密保持」の方が広い概念である
公認心理師法第41条(秘密保持義務)では、”公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。”と定められています。
こちらが法律上の秘密保持義務となるわけですが、こちらの選択肢では、法的な意味での「秘密」と職業倫理上の「秘密」との違いがわかる必要があります。
法的な意味での「秘密」とは、本人が隠しておきたいと考えるだけでなく、隠すことに客観的・実質的な利益のある事柄が法的な保護の対象となる「秘密」と定義されている。
出典:公認心理師必携テキスト
つまり、法的な「秘密」では、①本人が隠しておきたいこと、②隠しておくことが本人の利益につながると思われること、が対象範囲となります。
続いて職業倫理上の「秘密」ですが、こちらは専門家に対して信頼を基に打ち明けた内容すべてが対象範囲に含まれます。
つまり、法的な「秘密」に含まれるような本人の意向や利益は関係なく、専門家ー相談者の関係性の場で語られたすべての内容が基本的には「秘密」の範囲に入るということになります。
よって、法的な「秘密」よりも職業倫理上の「秘密」の方が範囲が広い概念といえます。
③ 心理的支援の内容・方法について、クライエントに十分に説明を行い、同意を得る
インフォームド・コンセントに関する記述ですね。
詳細は以下の解説をご覧ください。
④心理状態の観察・分析などの内容について、適切に記録し、必要に応じて関係者に説明ができる
こちらの記述は公認心理師の仕事内容に関するものだと思われます。
公認心理師法第2条に”心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること”と公認心理師の職務が記載されています。
この内容を必要に応じて関係者に説明できる能力も重要でしょう。
⑤クライエントの見捨てられ不安を防ぐため、一度受理したケースは別の相談機関に紹介(リファー)しない
公認心理師法などの法的な制約はありませんが、職業倫理上「自分の専門的な能力の範囲と限界」を適切に理解し、範囲外と判断できる場合には適切な専門家へ紹介することが必須となります。
このように外部の他の専門家に紹介することをリファーといいます。
見捨てられ不安の問題をカバーするためにも、リファーは「できるだけ早い時期」に行うことが適切とされ、インテーク面接でリファーも視野に入れてアセスメントしていくことが重要でしょう。
よって、選択肢⑤「クライエントの見捨てられ不安を防ぐため、一度受理したケースは別の相談機関に紹介リファー しない」は職業倫理上不適切な記述となります。
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