公認理師資格試験 過去問解説 問86 サーカディアンリズム

公認理師資格試験 過去問解説 問86 サーカディアンリズム

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

 

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【問86】サーカディアンリズム

問86 ヒトのサーカディアンリズムと睡眠について、正しいものを1つ選べ。

① 加齢による影響を受けない。

② メラトニンは、光刺激で分泌が低下する。

③ 時計中枢は、視床下部の室傍核に存在する。

④ 睡眠相遅延後退症候群は、夕方から強い眠気が出る。

⑤ ノンレム睡眠とレム睡眠は、約 45 分の周期で出現する。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ②

 

② メラトニンは、光刺激で分泌が低下する

 

となります。

 

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サーカディアンリズム

サーカディアンリズム circadian rhythm とは、睡眠・覚醒、体温、ホルモン分泌などの活動や機能が概ね24時間(25時間とも)の周期で変化していくことを意味しています。

 

昼とか夜の日照条件や気温変化など環境的な要因に由来しているわけではなく、そういった条件がなくとも、この24時間程度での周期的な変化が生じるため、内因性の周期と考えられています。

 

ただし、外部環境に同調していく機能はあるため、日によってある程度変動が生じていきます。

 

概日リズムとも呼ばれていますし、体内時計と読み替えてもほとんど同じ意味を持ちますね。

 

哺乳類の体内時計に関連する脳部位は「視床下部の視交叉上核」であることがわかっています。

 

サーカディアンリズム = 体内の様々な機能が24時間の内因性周期で変動すること ≒体内時計(視交叉上核)

 
 



 

選択肢の解説

① 加齢による影響を受けない

サーカディアンリズムは加齢によって、その振り幅が狭くなるといわれています。

 

つまり、年を重ねると1日の中での機能の変動が小さくなっていくということです。

 

高齢となってくると夜遅く寝て朝早く起きる方が増えるというのは比較的一般的な話ですが、こういった変化もサーカディアンリズムの変化に由来するとされていますね。

 

よって、選択肢①「加齢による影響を受けない」は、むしろ加齢によって影響を受けやすいため、不適切な記述となります。

 

② メラトニンは、光刺激で分泌が低下する

メラトニン melatonin は、「睡眠ホルモン」とも呼ばれる松果体で分泌されるホルモンで、サーカディアンリズムを調整する作用があります。

 

具体的には、睡眠と覚醒を切り替える作用があるようです。

 

メラトニンに関する説明を見てみましょう。

網膜から入った外界の光刺激は、体内時計(生物時計・視交叉上核)を経て松果体に達します。明るい光によってメラトニンの分泌は抑制されるため、日中にはメラトニン分泌が低く、夜間に分泌量が十数倍に増加する明瞭な日内変動が生じます。
ただし昼夜の区別のない環境(窓のない密室内など)でも、体内時計からの神経出力によって昼高夜低の日内変動は続きます。逆に強い照明(1000ルクス、コンビニの店内など)を浴びれば、夜間であってもメラトニン分泌量は低下します。すなわちメラトニンは体内時計と環境光の両方から調節を受けています。
出典:メラトニン|e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

このように、光刺激はメラトニン分泌を低下させるとされています。

 

基本的には昼に分泌量が少なく、夜間に分泌量が高くなるわけですが、夜間に強い光を浴びることでメラトニンの分泌量が下がってしまうようです。

 

朝起きて日の光を浴びるとメラトニン分泌量が低下して覚醒する。夜は暗くすることでメラトニン分泌量が増加して睡眠に誘われる

 

よって、選択肢②「メラトニンは、光刺激で分泌が低下する」は正しい記述といえますね。

 

③ 時計中枢は、視床下部の室傍核に存在する

哺乳類の時計中枢は、視床下部の視交叉上核にあるとされています。

 

視床下部の室傍核は、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを分泌する細胞があります。

 

つまり、CRHと呼ばれる副腎皮質刺激ホルモンの分泌を促進する機能があるということなのですが、この副腎皮質刺激ホルモンはストレスに関連していることがわかっています。

 

以上のことから、選択肢③「時計中枢は、視床下部の室傍核に存在する」は不適当な記述といえますね。

 

④ 睡眠相遅延後退症候群は、夕方から強い眠気が出る

睡眠相遅延後退症候群 delayed sleep phase syndrome は、入眠困難と覚醒困難が持続する、つまり、寝つきが悪くて1度眠ったら起きにくい睡眠状態を意味します。

 

この睡眠相遅延後退症候群では、重要なスケジュールがある時でも覚醒することが難しいため、社会的な機能障害を呈することが多いとされています。

 

同様の睡眠の問題として、睡眠相前進症候群 advanced sleep phase syndromeという症状があります。

 

こちらは、夕方の眠気や早朝覚醒が特徴的で、高齢者に多いとされています。

 

よって、選択肢④「睡眠相遅延後退症候群は、夕方から強い眠気が出る」というのは、正しくは睡眠相前進症候群の記述といえますね。

 

⑤ ノンレム睡眠とレム睡眠は、約 45 分の周期で出現する

ノンレム睡眠とレム睡眠に関する記述を見てみましょう。

ヒトの睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠(REM sleep)という質的に異なるふたつの睡眠状態で構成されています。レム睡眠は、眠っているときに眼球が素早く動く(英語でRapid Eye Movement)ことから名づけられました。ノンレム睡眠では脳波活動が低下し、睡眠の深さにしたがってさらに4段階に分けられます。

出典:眠りのメカニズム|e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

このノンレム睡眠とレム睡眠は約90分周期で変動するとされていますね。

 

よって選択肢⑤「ノンレム睡眠とレム睡眠は、約45分の周期で出現する」は誤った記載となります。

 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問86は、サーカディアンリズムに関する問題でした❗️

 

最低限、以下の部分は押さえておきましょう。

サーカディアンリズム = 体内の様々な機能が24時間の内因性周期で変動すること ≒体内時計(視交叉上核)

 

また、睡眠の問題はさまざまな精神科的問題に関連しているため、しっかりと復習しておきましょう。