第6回公認心理師試験・午前問55は、C. R. Cloningerの気質-性格理論〈psychobiological model of temperament and character〉を問う問題です。
正答は ① 気質次元の特性は遺伝規定性が強い と ③ 新奇性追求の特性が高い人は衝動的な行動を起こしやすい の2つです。
Cloningerはパーソナリティを、
4つの気質〈temperament〉
+
3つの性格〈character〉
から説明しました。

問題
C. R. Cloningerが提唱した気質-性格理論の内容として、適切なものを2つ選べ。
- 気質次元の特性は、遺伝規定性が強い。
- 固執は、個人の行動を抑制させるパーソナリティ特性である。
- 新奇性追求の特性が高い人は、衝動的な行動を起こしやすい。
- 性格は、他者志向、協調及び自己超越の3次元から構成されている。
- 損害回避の特性が高い人は、他者評価によって行動を維持しやすい。
正答は ①と③ です。
Cloningerの4気質+3性格
Temperament and Character Inventory〈TCI〉では、パーソナリティを7次元で捉えます。
気質〈temperament〉
- 新奇性追求〈Novelty Seeking:NS〉
- 損害回避〈Harm Avoidance:HA〉
- 報酬依存〈Reward Dependence:RD〉
- 固執〈Persistence:PS〉
性格〈character〉
- 自己志向〈Self-Directedness:SD〉
- 協調〈Cooperativeness:CO〉
- 自己超越〈Self-Transcendence:ST〉
試験では、この7つの名称と意味を対応させることが重要です。
正答①|気質は遺伝規定性が比較的強い
Cloningerのモデルでは、気質は、
- 早期から現れやすい
- 自動的な情動反応や行動傾向と関係する
- 遺伝的影響を比較的強く受ける
ものとして位置づけられています。
Cloningerらの1993年のモデルでは、4つの気質次元は独立して遺伝性を持ち、人生早期から現れると説明されています。
したがって①は適切です。
正答③|新奇性追求が高いと衝動的になりやすい
新奇性追求〈Novelty Seeking〉は、
- 新しい刺激を求める
- 探索的に行動する
- 単調さを嫌う
- 衝動的になりやすい
といった特徴と関連します。
新しい刺激への反応が強く、行動を素早く起こしやすいため、高い新奇性追求は衝動性と結びつきやすいと整理できます。
したがって③は適切です。
② 固執は行動を抑制する特性|誤り
固執〈Persistence〉は、
疲労や欲求不満があっても行動を続ける傾向
を意味します。
高い固執は、
- 粘り強い
- 努力を続ける
- あきらめにくい
- 完璧主義的
といった特徴と関連します。
「行動を抑制する」のではなく、むしろ強化がなくても行動を維持する傾向です。
したがって②は誤りです。
④ 性格は「他者志向・協調・自己超越」|誤り
性格の3次元は、
- **自己志向〈Self-Directedness〉**
- 協調〈Cooperativeness〉
- 自己超越〈Self-Transcendence〉
です。
選択肢は「自己志向」を「他者志向」としているため誤りです。
このような一語の置き換えは試験でよく使われます。
自己志向〈Self-Directedness〉
自己志向は、
- 自分の目標に沿って行動を調整する
- 責任を引き受ける
- 目的意識を持つ
- 自己受容する
といった特徴と関係します。
協調〈Cooperativeness〉
協調は、
- 他者を受容する
- 共感的である
- 協力的に行動する
- 社会の一員として適応する
といった傾向です。
自己超越〈Self-Transcendence〉
自己超越は、
- 自分をより大きな全体の一部として捉える
- 超個人的な価値観を持つ
- 精神性・一体感を経験する
などと関係します。
⑤ 損害回避が高いと他者評価で行動維持|誤り
損害回避〈Harm Avoidance〉は、
- 将来を心配しやすい
- 不確実な状況を避ける
- 見知らぬ人に慎重
- 疲れやすい
といった行動抑制傾向に関係します。
一方、
他者からの承認や報酬の手掛かりによって行動を維持しやすい
という特徴は、報酬依存〈Reward Dependence〉により近いものです。
したがって⑤は誤りです。
報酬依存〈Reward Dependence〉
報酬依存は、
- 他者との愛着
- 承認への反応
- 温かい対人関係
- 報酬による行動維持
などと関連します。
選択肢⑤は「損害回避」と「報酬依存」を入れ替えたひっかけです。
4気質を整理する
新奇性追求〈NS〉
新しい刺激への接近、探索、衝動性。
損害回避〈HA〉
危険や罰を予測して行動を抑制しやすい。
報酬依存〈RD〉
社会的報酬や承認に反応し、行動を維持しやすい。
固執〈PS〉
報酬が乏しくても努力を継続しやすい。
気質と性格の違い
Cloningerの理論では、
気質
比較的自動的で、生物学的・遺伝的要因との関連が強い行動傾向。
性格
自己概念や価値観、目標などと関係し、発達・学習の影響を受けながら成熟していく側面。
と整理されます。
「気質=完全に遺伝」「性格=完全に環境」という二分法ではありませんが、試験ではこの相対的な違いが重要です。
Big Fiveとの違い
CloningerのTCIとBig Fiveは、どちらもパーソナリティを複数次元で捉えますが、同じ理論ではありません。
Big Fiveでは、
- 外向性
- 協調性
- 誠実性
- 神経症傾向
- 開放性
の5因子を用います。
Cloningerでは、
4気質+3性格
という心理生物学的モデルを用います。
Ig Knowledgeでは第3回問85|パーソナリティ理論で、5因子理論など他のパーソナリティ理論との違いも扱っています。
試験での見分け方
次の対応をセットで覚えると解きやすくなります。
- 新奇性追求 → 新しい刺激・衝動性
- 損害回避 → 不安・行動抑制
- 報酬依存 → 承認・社会的報酬による維持
- 固執 → 努力・継続
- 自己志向 → 自分の目標に沿った自己調整
- 協調 → 他者との協力
- 自己超越 → より大きな全体との一体感
まとめ
第6回公認心理師試験・午前問55の正答は ①と③ です。
Cloningerの気質-性格理論では、
4気質=新奇性追求・損害回避・報酬依存・固執
3性格=自己志向・協調・自己超越
と整理されます。
試験では、特に
新奇性追求=衝動性
損害回避=行動抑制
報酬依存=社会的報酬で維持
固執=継続
の取り違えに注意しましょう。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第6回公認心理師試験 午前問題・正答
- Cloninger CR, Svrakic DM, Przybeck TR. A Psychobiological Model of Temperament and Character. 1993.
- APA Dictionary of Psychology|Temperament and Character Inventory

コメント