第6回公認心理師試験・午前問54は、ゲシュタルト療法〈Gestalt therapy〉の特徴を問う問題です。
正答は ① 今ここでの体験に注目させる と ② 個人の全体性の統合を目指す の2つです。
ゲシュタルト療法では、過去について知的に分析することだけではなく、
「今、この瞬間に何を感じ、何に気づいているか」
という現在の体験を重視します。
また、人間を思考・感情・身体・行動などに分断して理解するのではなく、全体的な存在として統合的に捉えることを重視します。

問題
ゲシュタルト療法の特徴として、正しいものを2つ選べ。
- 今ここでの体験に注目させる。
- 個人の全体性の統合を目指す。
- 人間の「意味への意思」を重視する。
- M. Wertheimerによって創始された。
- 恐怖症の治療に用いられることが多い。
正答は ①と② です。
正答①|「今ここ」の体験を重視する
ゲシュタルト療法の代表的特徴が、here and now〈今ここ〉への注目です。
APA Dictionary of Psychologyでも、ゲシュタルト療法は、過去の発達史の分析よりも、クライエントの現在の機能や関係性の全体に焦点を当てる心理療法として説明されています。
たとえば、クライエントが過去のつらい出来事について話している場合でも、
「その出来事を話している今、どんな感じがしますか」
「今、身体のどこに何を感じますか」
「今この瞬間、私に話しながらどんな気持ちになっていますか」
というように、現在起きている体験へ注意を向けます。
「今ここ」は過去を扱わないという意味ではない
ゲシュタルト療法でも、過去の出来事を扱うことがあります。
ただし、
過去を客観的に再構成すること自体が中心ではない
という点が重要です。
過去の出来事が、
「今この瞬間にどのように体験されているか」
に注目します。
過去の人物との未完了な感情を空の椅子技法などで扱う場合も、その体験は現在のセッション内で生じます。
正答②|個人の全体性の統合を目指す
「Gestalt」という言葉には、形・まとまり・全体などの意味があります。
ゲシュタルト療法では、人間を、
- 認知
- 感情
- 身体感覚
- 行動
- 対人関係
- 環境との関係
に分断して扱うのではなく、相互に関係する全体〈whole〉として理解します。
そのため、
「頭では分かっているが、感情は違う」
「言葉では平気と言っているが、身体は緊張している」
といった体験の不一致にも注目し、気づきを深めながら統合を促します。
awareness〈気づき〉が中心概念
ゲシュタルト療法では、気づき〈awareness〉が非常に重要です。
治療者が正解を教えるのではなく、クライエントが、
- 今どんな感情があるか
- 身体がどう反応しているか
- 何を避けているか
- 相手との間で何が起きているか
- どのような欲求があるか
に気づくことを支援します。
気づきが深まることで、固定化した反応から新しい選択が可能になると考えます。
空の椅子技法
ゲシュタルト療法で有名なのが空の椅子技法〈empty-chair technique〉です。
目の前の空の椅子に、
- 大切な人
- 怒りを感じる相手
- 自分の一部分
などが座っていると想定し、実際に対話します。
これは単なるロールプレイではなく、今この場で感情や葛藤を体験し、気づきを深めるための体験的技法です。
2つの椅子技法
自分の中に、
「こうすべき」
と要求する側と、
「本当はそうしたくない」
と反発する側がある場合、
それぞれを別の椅子に座らせるようにして対話することがあります。
このように分裂した自己の部分を実際の対話として体験することで、統合を促します。
③ 「意味への意思」|誤り
「意味への意思〈will to meaning〉」を重視したのは、V. E. Frankl〈ヴィクトール・フランクル〉のロゴセラピー/実存分析です。
Franklは、人間の基本的動機を「意味への意思」と捉えました。
これはゲシュタルト療法の特徴ではありません。
したがって③は誤りです。
④ Wertheimerが創始|誤り
ここは非常に混同しやすいポイントです。
Max Wertheimerは、ゲシュタルト心理学〈Gestalt psychology〉を代表する心理学者です。
ゲシュタルト心理学は、
「全体は部分の単純な総和ではない」
という考え方を重視し、知覚研究などで発展しました。
Ig Knowledgeでは第4回問4|ゲシュタルト心理学で詳しく扱っています。
一方、ゲシュタルト療法〈Gestalt therapy〉は、
- Fritz Perls
- Laura Perls
- Paul Goodman
らによって1940年代以降に発展しました。
したがって、
Wertheimer=ゲシュタルト心理学
Perlsら=ゲシュタルト療法
と分けて覚える必要があります。
⑤ 恐怖症の治療に用いられることが多い|誤り
恐怖症への代表的治療としては、
- 曝露療法〈exposure therapy〉
- 系統的脱感作法
など、行動療法・認知行動療法の技法がよく知られています。
ゲシュタルト療法が恐怖症に絶対使われないという意味ではありません。
しかし、「恐怖症の治療に用いられることが多い」という記述を、ゲシュタルト療法の代表的特徴として選ぶのは不適切です。
フォーカシングとの違い
ゲシュタルト療法とフォーカシングは、どちらも現在の体験や身体感覚への注意を重視するため混同しやすいです。
Ig Knowledgeの第6回問20|フォーカシングのフェルトセンスでは、E. T. Gendlinのフォーカシングを扱っています。
ゲシュタルト療法
- Perlsら
- 今ここ
- awareness
- 接触
- 全体性
- 空の椅子技法
フォーカシング
- Gendlin
- フェルトセンス
- 身体に感じられる曖昧で意味を含む感覚
- フェルトシフト
似た部分はありますが、別の理論・方法です。
来談者中心療法との違い
ゲシュタルト療法も人間性心理学の流れと関係が深く、クライエントの主体的経験を重視します。
しかし、Rogersの来談者中心療法とは異なります。
Rogersでは、
- 自己一致
- 無条件の肯定的関心
- 共感的理解
など治療関係の中核条件が重視されます。
ゲシュタルト療法では、
- 現在の直接体験
- 身体感覚
- awareness
- 実験的技法
- 接触
などが特徴です。
ゲシュタルト心理学との関係
ゲシュタルト療法はゲシュタルト心理学から一定の影響を受けていますが、両者は同じものではありません。
ゲシュタルト心理学
主に知覚・認知の研究から発展した心理学の学派。
ゲシュタルト療法
心理療法の一つで、Fritz Perlsらによって発展。
試験では、この名称の類似を利用した選択肢が出やすいため注意が必要です。
試験での見分け方
「ゲシュタルト療法」と出たら、次のキーワードを思い出します。
今ここ
気づき〈awareness〉
全体性
空の椅子
Perls
逆に、
- 意味への意思 → Frankl
- Wertheimer → ゲシュタルト心理学
- 恐怖症への系統的脱感作 → Wolpe・行動療法
と区別します。
まとめ
第6回公認心理師試験・午前問54の正答は、
① 今ここでの体験に注目させる
② 個人の全体性の統合を目指す
です。
ゲシュタルト療法では、
今この瞬間の体験に気づき、認知・感情・身体・行動を含む人間全体の統合を促す
ことを重視します。
試験では、
Perls → ゲシュタルト療法 → 今ここ・気づき・全体性・空の椅子
というセットで覚えておきましょう。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第6回公認心理師試験 午前問題・正答
- APA Dictionary of Psychology|gestalt therapy
- American Psychological Association|Gestalt Therapy
- NCBI Bookshelf|Gestalt Therapy

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