第4回公認心理師試験・午後問92は、サクセスフルエイジングを支える要因を、高齢期の社会関係という観点から判断する問題です。正答は ③ ソーシャル・コンボイの維持 です。
この問題のポイントは、「高齢期に何かを増やせばよい」と考えるのではなく、人生を通して自分を取り巻いてきた重要な人間関係や支援ネットワークが、加齢に伴う変化の中でも機能しているかを見ることです。
ソーシャル・コンボイは、家族、友人、知人などの社会関係が「護送船団」のように人生を伴走し、情緒的支援、実際的援助、自己の確認などを提供するという考え方です。高齢期では、関係の数だけでなく、重要な人とのつながりが維持され、必要な支援を受けたり提供したりできることが適応やウェルビーイングに関係します。

問題
サクセスフルエイジングの促進要因として、最も適切なものを1つ選びます。
- 防衛機制の使用
- ライフイベントの多さ
- ソーシャル・コンボイの維持
- タイプA行動パターンの獲得
- ワーク・エンゲイジメントの増加
正答は ③ ソーシャル・コンボイの維持 です。
正答は③|高齢期の適応を支える「関係の伴走」
ソーシャル・コンボイの考え方では、人は一人で加齢していくのではありません。
人生の各段階で、
- 家族
- 配偶者・パートナー
- 友人
- 近隣の人
- 職場や地域で関わる人
などの社会関係に囲まれながら生活します。
その構成はライフイベントによって変化しますが、重要な関係は長期的に維持され、本人にとっての支援資源になります。
この「人生を一緒に進む人々のまとまり」をコンボイとして捉えます。
高齢期には、退職、身体機能の変化、配偶者や友人との死別、生活範囲の変化などによって社会関係が変わりやすくなります。だからこそ、本人にとって意味のある人間関係と支援のやり取りを維持できることが重要になります。
サクセスフルエイジングとは
サクセスフルエイジングは、高齢期を単に「病気がない状態」として考える概念ではありません。
代表的な議論では、
- 疾病や障害のリスクが低いこと
- 身体・認知機能が保たれていること
- 生活や社会への積極的な関与があること
などが重視されてきました。
ただし、現代の老年心理学・老年学では、病気や障害があるだけで「成功していない老い」と評価するような単純な理解は適切ではありません。
実際の支援では、その人の価値観、生活史、環境、社会参加、利用できる支援資源などを含めて考える必要があります。
試験ではまず、高齢期の適応を支える社会的要因として、ソーシャル・コンボイが重要であると押さえます。
ソーシャル・コンボイの構造
コンボイ・モデルでは、本人を中心として、関係の近さに応じて人間関係を複数の層として捉えることがあります。
たとえば、
- 内側:自分にとって非常に重要で、離れがたい人
- 中間:親しいが、内側ほど不可欠ではない人
- 外側:大切ではあるが、相対的には距離のある人
というように整理できます。
重要なのは「知人の人数」ではありません。
社会関係には、
- 情緒的支援
- 実際的援助
- 助言
- 承認
- 自分が誰かを支える役割
といった複数の機能があります。
高齢期のウェルビーイングを考えるときには、ネットワークの大きさだけでなく、関係の質と機能を見る必要があります。
社会情動的選択性理論との違い
高齢期の社会関係では、社会情動的選択性理論〈Socioemotional Selectivity Theory:SST〉も頻出です。
両者は似ていますが、焦点が異なります。
ソーシャル・コンボイ
「人生を通して、どのような人間関係に囲まれ、どのような支援をやり取りしているか」
を捉える理論です。
社会情動的選択性理論
「残された時間をどのように知覚するかによって、どのような目標や人間関係を優先するか」
を説明します。
高齢期には時間が有限であるという認識が強まり、情緒的に意味のある関係を優先しやすくなると考えます。
この違いは、第6回午前問15の社会情動的選択性理論の解説と合わせて整理すると見分けやすくなります。
① 防衛機制の使用が正答ではない理由
防衛機制は、不安や葛藤から自我を守る心理的な働きです。
防衛機制の中には、状況によって適応的に働くものもあります。
しかし、「防衛機制を使用すること自体」がサクセスフルエイジングを促進する一般的要因とはいえません。
重要なのは、どのような防衛が、どのような状況で、どの程度柔軟に用いられているかです。
したがって①は不適切です。
② ライフイベントの多さが正答ではない理由
ライフイベントとは、
- 退職
- 転居
- 病気
- 死別
- 家族構成の変化
など、生活上の大きな変化を指します。
出来事が多ければ多いほど適応が高まるわけではありません。
むしろ、短期間に大きな変化が重なるとストレス負荷が高まることもあります。
したがって、単純な「多さ」は促進要因とはいえません。
④ タイプA行動パターンの獲得が正答ではない理由
タイプA行動パターンは、
- 競争心が強い
- 時間に追われやすい
- 性急である
- 達成への圧力が強い
といった特徴で説明されることがあります。
これを獲得することが高齢期の適応を促進するわけではありません。
したがって④は不適切です。
⑤ ワーク・エンゲイジメントの増加が正答ではない理由
ワーク・エンゲイジメントは、仕事に対する
- 活力
- 熱意
- 没頭
などを表す概念です。
働く高齢者にとって重要な場合はありますが、サクセスフルエイジング全般を説明する促進要因としては範囲が限定的です。
退職後の高齢者にも一般化できる要因として、③の社会関係の維持の方が適切です。
試験での見分け方
高齢期の理論問題では、次のように整理すると判断しやすくなります。
- 社会関係のネットワークと支援 → ソーシャル・コンボイ
- 残された時間と情緒的に意味のある関係の選択 → 社会情動的選択性理論
- できることを選び、資源を最適化し、損失を補う → 補償を伴う選択的最適化
- 活動を保つことを重視 → 活動理論
- 社会との関わりが減少していく過程を捉える → 離脱理論
理論名を単独で覚えるより、「何を説明しようとしている理論か」で区別することが重要です。
高齢者支援の具体例については、軽度Alzheimer型認知症の非薬物的介入も合わせて確認すると、理論と実践をつなげて理解できます。
まとめ
第4回公認心理師試験・午後問92の正答は ③ ソーシャル・コンボイの維持 です。
ソーシャル・コンボイは、人生を通して本人を取り巻く重要な社会関係と、その中で交換される支援を捉える考え方です。
本問では、
サクセスフルエイジング → 高齢期の適応 → 社会関係・支援ネットワーク → ソーシャル・コンボイ
という流れで判断します。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第4回公認心理師試験 午後問題・正答
- Antonucci TC, Ajrouch KJ, Birditt KS. The Convoy Model: Explaining Social Relations From a Multidisciplinary Perspective. The Gerontologist. 2014.


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