第4回公認心理師試験・午後問83は、同じ参加者から複数の評定を得る研究で、評定する順番が結果に与える影響をどう統制するかを問う問題です。正答は ⑤ カウンターバランス です。
この問題は、実験計画法で頻出する「順序効果」の理解がポイントです。同じ人が複数の条件を経験する研究では、後に行う課題が前の課題の影響を受けることがあります。そこで、参加者によって条件の実施順序を入れ替え、順番の影響が一方向に偏らないようにするのがカウンターバランスです。
問題
問題の要旨: 他者について性格を評定した後に自分について評定する場合と、自分について評定した後に他者について評定する場合では、先に行った評定が後の判断に影響する可能性があります。このような順序の影響を統制する方法として最も適切なものを選びます。
- 一定化
- バランス化
- マッチング
- ランダム化
- カウンターバランス
※公式問題の趣旨を保ちながら要約しています。正答は ⑤ カウンターバランス です。
正答は⑤|カウンターバランス
カウンターバランス〈counterbalancing〉は、同じ参加者が複数の条件を経験する被験者内計画などで、条件を提示する順序を参加者間で変えることによって順序効果を相殺・分散する方法です。
本問では、
- 他者について先に評定し、その後に自分を評定する順序
- 自分について先に評定し、その後に他者を評定する順序
の2通りが考えられます。
すべての参加者が同じ順番で評定すると、たとえば「最初に他者を考えたこと」が、その後の自己評定の基準になってしまう可能性があります。そこで、一部の参加者には「他者→自己」、別の参加者には「自己→他者」という順番を割り当てます。
2条件であれば、もっとも基本的な形は AB / BA の2つの順序です。
- A→Bを経験する参加者
- B→Aを経験する参加者
を配置することで、Aが必ず先、Bが必ず後という偏りを避けます。
順序効果とは何か
順序効果〈order effect〉とは、条件そのものの違いではなく、条件を経験した順番によって測定値が変化することです。
被験者内計画では同じ人から複数条件のデータを得られるため、個人差を小さくできるという利点があります。一方で、最初の条件での経験が次の条件へ持ち越される危険があります。
代表的な順序効果として、次のようなものがあります。
練習効果
同じ種類の課題を繰り返すことで、後半の課題の成績が良くなる現象です。
たとえば、最初は操作に慣れていなくても、2回目には手順を理解して成績が上がることがあります。この場合、本当は条件Bが優れているのではなく、「後に行ったから良くなった」可能性があります。
疲労効果
課題を繰り返すうちに疲れて、後半の成績が低下する現象です。
長時間の実験では、集中力の低下や飽きによって、後の条件ほど不利になることがあります。
持ち越し効果
先に経験した条件の影響が次の条件に残ることです。
たとえば、先に強い刺激を経験したことで、次の刺激が弱く感じられることがあります。心理評定でも、先に考えた人物や特性が、その後の判断基準になる可能性があります。
本問では、他者評定と自己評定のどちらを先に行うかによって、後の評定が影響を受ける可能性があるため、順序効果への対処が必要です。
カウンターバランスは何をしているのか
重要なのは、順序効果を「完全に消す」というより、特定の条件だけがいつも先・いつも後になることを避ける点です。
もし100人全員が「他者→自己」で評定すると、「自己評定」は必ず2番目になります。その結果、自己評定の得点に変化があっても、それが「自己だから」なのか、「2番目だから」なのか分かりにくくなります。
一方、
- 50人:他者→自己
- 50人:自己→他者
のように順序を分ければ、「自己」が先になる場合と後になる場合の両方を含めることができます。
この発想がカウンターバランスです。
条件が3つ以上ある場合
条件が2つならABとBAで比較的単純ですが、条件数が増えると可能な順序も増えます。
3条件A・B・Cなら、
- ABC
- ACB
- BAC
- BCA
- CAB
- CBA
という6通りがあります。
すべての順序を均等に用いる方法を完全カウンターバランスと呼ぶことがありますが、条件数が多いと必要な順序数が急増します。そのため、実際の研究ではラテン方格などを利用して一部の順序を体系的に割り当てる方法も用いられます。
公認心理師試験では、こうした詳細な組合せ計算よりも、
「同じ人が複数条件を経験し、順番の影響が問題になる → カウンターバランス」
という判断ができることが重要です。
① 一定化が違う理由
一定化は、結果に影響しそうな外的変数を、すべての条件で同じ状態に保つ方法です。
たとえば、
- 実験室の明るさを同じにする
- 実験時間を同じにする
- 説明方法を統一する
- 使用する機器を同じにする
といった統制です。
一定化は重要な実験統制ですが、「自己評定と他者評定のどちらを先にするか」という順序そのものを調整する方法ではありません。
② バランス化が違う理由
バランス化は、結果に影響し得る属性や条件が特定の群だけに偏らないよう、各条件へできるだけ均等に配置する考え方です。
たとえば性別や年齢などの構成が、ある群だけに偏らないようにする場面が考えられます。
しかし本問で直接問題になっているのは参加者属性の偏りではなく、評定を行う順番の影響です。順序を体系的に入れ替える方法としてはカウンターバランスが最も適切です。
③ マッチングが違う理由
マッチングは、年齢、知能、症状の程度など、研究結果に影響しそうな特徴が近い参加者を組み合わせ、それぞれ別の群へ配置する方法です。
たとえば、年齢や事前得点がほぼ同じ参加者同士をペアにして、一方を実験群、もう一方を統制群に割り当てる方法です。
これは主として群間の個人差をそろえるための方法であり、同一人物が複数条件を経験するときの順序効果への対応ではありません。
④ ランダム化が違う理由
ランダム化は、参加者を条件へ無作為に割り当てたり、刺激の提示順を無作為にしたりする方法です。
ランダム化も実験上の偏りを減らすために重要ですが、本問は「両者の評定を行う順序について適用すべき方法」を直接問うています。
順序効果を統制するため、参加者間で条件順序を組織的に入れ替えるという意味では、カウンターバランスがより直接的な答えです。
ランダムに順序を割り当てても、人数が少ない場合には偶然「A→B」に偏る可能性があります。カウンターバランスでは、順序の偏りを意図的に調整します。
カウンターバランスとランダム化の違い
この2つは混同しやすいので整理しておきます。
ランダム化
- 偶然性を利用して偏りを減らす
- 群への割付、刺激順など幅広く利用する
カウンターバランス
- 順序効果を統制することが目的
- 条件の実施順を参加者間で体系的に変える
試験では、「順序」「先にやった影響」「後の課題への持ち越し」という言葉が出たら、カウンターバランスを優先して考えます。
前問の2要因混合分散分析とのつながり
第4回午後問82では、被験者間要因と被験者内要因を組み合わせた2要因混合分散分析が問われました。
被験者内要因では、同じ参加者が複数条件を経験するため、個人差を統制しやすい一方、順序効果が生じる可能性があります。
つまり、
- 研究計画を見て被験者内要因を見抜く
- 同じ参加者が複数条件を経験するなら順序効果を考える
- 必要に応じてカウンターバランスを行う
という流れで理解すると、問82と問83を関連づけて覚えられます。
試験での見分け方
選択肢に「カウンターバランス」が出たら、次の3点を確認します。
- 同じ参加者が複数の条件を経験するか
- 条件の実施順序が結果へ影響し得るか
- 参加者によって順番を変えることで統制できるか
3つとも当てはまれば、カウンターバランスが有力です。
覚え方は、
順番が問題 → 順番を逆にする人も作る → カウンターバランス
です。
まとめ
第4回公認心理師試験・午後問83の正答は ⑤ カウンターバランス です。
同じ参加者が自己評定と他者評定を行う場合、どちらを先に行ったかによって後の判断が影響を受ける可能性があります。このような順序効果を一方向に偏らせないため、参加者によって条件の実施順序を入れ替えます。
試験では、
「同じ人が複数条件」+「順番の影響」=カウンターバランス
と整理しておくと判断しやすくなります。
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参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第4回公認心理師試験 午後問題・正答
- Brooks JL. Counterbalancing for serial order carryover effects in experimental condition orders. Psychological Methods. 2012;17(4):600-614.


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