公認心理師資格試験 過去問解説 第5回 午前 問67|職場復帰支援の5ステップと主治医の判断

第5回公認心理師試験 午前問67 職場復帰支援の5ステップと主治医の判断の解説図 公認心理師試験

第5回公認心理師試験・午前問67は、うつ病で休職中の労働者が回復し、復職への意欲を示し始めた時点で、職場復帰支援のどの段階に進むべきかを問う問題です。正答は ③ 主治医による職場復帰可能の判断 です。

この問題では、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に示される5つのステップの順番を理解しているかが問われています。

復職支援では、「本人が戻りたいと言ったからすぐ復職させる」のでも、「主治医が復職可能と書いたからそのまま職場復帰を決める」のでもありません。主治医の判断を起点に、職場側で必要な情報を集め、業務遂行能力や職場環境を評価し、具体的な復職支援プランを作成していきます。

問題

問題の要旨: 50歳の会社員が、職場異動後に抑うつ状態となり、うつ病と診断されて休職しています。治療と休養によって気力低下や生活リズムは改善し、本人は復職への意欲を示していますが不安も残っています。厚生労働省の職場復帰支援の手引きに基づき、現段階で必要な支援を選びます。

  1. 試し出勤制度の活用
  2. 管理監督者による就業上の配慮
  3. 主治医による職場復帰可能の判断
  4. 産業医等による主治医からの意見収集
  5. 傷病手当金など経済的保障に関する情報提供

※公式問題の趣旨を保ちながら要約しています。正答は ③ 主治医による職場復帰可能の判断 です。

正答は③|主治医による職場復帰可能の判断

本事例では、休職開始から2か月が経過し、症状や生活リズムがある程度改善しています。また、本人から復職への意欲も示されています。

厚生労働省の職場復帰支援の流れでは、休業開始・休業中のケアに続いて、第2ステップとして主治医による職場復帰可能の判断が位置づけられています。

本人が「戻りたい」と考えるようになった段階で、まず確認すべきなのは、治療を担当している主治医が医学的な観点から職場復帰可能と判断しているかどうかです。

したがって、本問では③が適切です。

職場復帰支援は5つのステップで考える

試験では5ステップの順番を覚えておくと、選択肢を整理しやすくなります。

第1ステップ|病気休業開始及び休業中のケア

休業を開始し、療養に専念できるように支援する段階です。

この時期には、

  • 休業に必要な手続き
  • 傷病手当金など経済的保障
  • 相談窓口
  • 休業可能期間
  • 職場復帰支援の流れ

などについて情報提供します。

この段階では、復職を急がせるのではなく、安心して治療や休養に取り組める条件を整えることが重要です。

第2ステップ|主治医による職場復帰可能の判断

本人から職場復帰の意思が示された後、主治医の診断書等によって職場復帰が可能かを確認する段階です。

本問はここに該当します。

ただし、ここで非常に重要なのは、主治医が「復職可能」と判断することと、会社が最終的に復職を決定することは同じではないという点です。

主治医は日常生活上の回復状況や治療経過を中心に判断します。一方、実際の職場では、

  • 所定労働時間を維持できるか
  • 通勤できるか
  • 集中力や判断力は十分か
  • 職務上の責任に耐えられるか
  • 職場で必要な配慮は何か

なども検討する必要があります。

そのため、主治医の意見を受け取った後、さらに職場側の評価へ進みます。

第3ステップ|職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

この段階では、産業医等の産業保健スタッフ、人事労務担当者、管理監督者などが必要な情報を集めます。

主な内容は、

  • 主治医からの情報収集
  • 労働者本人の状態確認
  • 職場環境や業務内容の確認
  • 復職後に必要な就業上の配慮の検討
  • 復職支援プランの作成

です。

選択肢④の「産業医等による主治医からの意見収集」は、この第3ステップとの関連が強い対応です。

第4ステップ|最終的な職場復帰の決定

第3ステップでの評価やプランを踏まえ、事業者が最終的に職場復帰を決定する段階です。

必要に応じて、

  • 短時間勤務
  • 時間外労働の制限
  • 出張の制限
  • 業務量や責任の調整
  • 配置上の配慮

などを検討します。

「主治医が復職可能と言ったから即日復職」ではなく、職場で安全かつ継続的に働ける条件を調整したうえで最終決定します。

第5ステップ|職場復帰後のフォローアップ

復職した後も支援は続きます。

  • 症状の再燃・再発の確認
  • 勤務状況の確認
  • 業務遂行能力の評価
  • 支援プランが適切だったかの確認
  • 治療継続状況の確認
  • 職場環境の再調整

などを行います。

復職は「ゴール」ではなく、再び安定して働き続けられるかを確認する過程です。

本問の時系列を整理する

事例を時間の流れで整理すると分かりやすくなります。

  1. 職場異動後に不調が生じる
  2. 欠勤が増える
  3. 精神科を受診する
  4. うつ病と診断され、3か月の休職となる
  5. 2か月間の治療・休養で一定の改善
  6. 復職への意欲が出てきた
  7. ただし不安も残っている

この段階ではまだ「復職可否の最終決定」には進んでいません。

本人が復職への意思を示したため、次に必要なのは主治医が職場復帰可能と判断する段階です。

ここから第3ステップへ進み、産業医等が主治医の意見や職場の情報を照合します。

① 試し出勤制度の活用が先ではない理由

試し出勤制度は、一定期間、実際の職場に近い環境で通勤や作業を試す制度です。

うまく活用すれば、

  • 通勤できるか
  • 職場で一定時間過ごせるか
  • 生活リズムを維持できるか
  • 疲労の程度はどうか

などを確認できます。

しかし、試し出勤は復職支援の初期段階で無条件に行うものではありません。主治医の判断や職場側の評価を経て、事業場で制度上の位置づけや安全面を整理したうえで活用します。

本問の段階では、まず主治医による職場復帰可能の判断が先です。

② 管理監督者による就業上の配慮が先ではない理由

就業上の配慮は非常に重要です。

たとえば、

  • 業務量を減らす
  • 残業を制限する
  • 夜勤を避ける
  • 出張を制限する
  • 責任の重い仕事を一時的に外す

などが考えられます。

しかし、具体的な配慮を決めるのは、主治医の意見や本人の状態、職場の業務内容を把握した後です。

したがって、「今この段階で最初に必要なこと」としては③が優先されます。

④ 産業医等による主治医からの意見収集がまだ早い理由

この選択肢は職場復帰支援として誤った行為ではありません。

むしろ、第3ステップでは非常に重要です。

ただし、本問のポイントは順番です。

主治医による職場復帰可能の判断を受けた後、職場側がより具体的な復職可否を検討する際に、産業医等が主治医から必要な情報を収集します。

試験では「正しい支援か」だけではなく、「今どの段階か」を読む必要があります。

⑤ 傷病手当金などの情報提供が現段階では遅い理由

傷病手当金など経済的保障に関する情報提供は、休業開始時や休業中の支援として重要です。

療養中に収入が減少する不安は大きく、制度の説明は安心して治療に専念するために役立ちます。

しかし、これは主として第1ステップに位置づけられる内容です。

本事例ではすでに休職から2か月経過し、復職意思が出てきています。したがって、現在の段階を問う問題では③がより適切です。

主治医の「復職可能」と会社の「復職決定」は違う

この問題で最も重要な実務的ポイントです。

主治医は、診察場面で得られる情報から医学的な回復状況を評価します。

しかし、主治医が必ずしも、

  • 実際の業務負荷
  • 職場の人員状況
  • 通勤時間
  • 業務上必要な集中力
  • 対人調整の負荷
  • 具体的な勤務時間

まで詳しく把握しているとは限りません。

そのため、主治医の「復職可能」は、職場復帰支援を次の段階へ進める重要な情報ではありますが、事業者による最終判断そのものではありません。

厚生労働省の手引きでも、主治医の判断と職場で求められる業務遂行能力が必ずしも一致しない点に注意が示されています。

復職支援で重要な「再発予防」の視点

復職を急ぎすぎると、一時的に職場へ戻れても、負荷に耐えられず再び休職する可能性があります。

そのため、復職支援では「今日出勤できるか」だけではなく、

  • 一定期間、生活リズムを保てるか
  • 通勤を継続できるか
  • 日中の活動性が安定しているか
  • 業務に必要な集中が保てるか
  • 疲労した後に回復できるか
  • 不調時の相談先が明確か

といった継続可能性を見ることが重要です。

これは個別の復職可否を一律に判断する基準ではなく、支援を組み立てる際の観点です。

試験での見分け方

このテーマでは、5ステップの「どの時期か」を確認します。

休職開始直後
→ 第1ステップ
→ 休業中のケア、傷病手当金等の情報提供

症状が改善し、本人が復職したいと言い始めた
→ 第2ステップ
→ 主治医による職場復帰可能の判断

主治医の復職可能の意見が出た
→ 第3ステップ
→ 産業医等による情報収集、職場側評価、復職支援プラン

職場側の評価とプランが整った
→ 第4ステップ
→ 事業者による最終的な復職決定

実際に復職した
→ 第5ステップ
→ フォローアップ

この時系列が分かれば、類似した選択肢でも区別できます。

まとめ

第5回公認心理師試験・午前問67の正答は ③ 主治医による職場復帰可能の判断 です。

本事例では、うつ病による休職後、治療と休養で状態が改善し、本人が復職への意欲を示し始めています。この段階は、職場復帰支援の第2ステップに当たります。

ただし、

主治医の復職可能判断=会社による最終的な復職決定

ではありません。

主治医の判断を受けた後、産業医等が職場で必要な業務遂行能力や就業上の配慮を検討し、復職支援プランを作成し、最終的には事業者が復職を決定します。

この「順番」を理解することが本問攻略のポイントです。

※本記事は公認心理師試験の制度・知識を解説するものであり、個別の労働者の復職可否を判断するものではありません。

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参考資料

  • 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第5回公認心理師試験 午前問題・正答
  • 厚生労働省|心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
  • こころの耳|職場復帰支援

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