公認心理師資格試験 過去問解説 第5回 午前 問65|パニック症の予期不安

公認心理師過去問第5回65 公認心理師試験

第5回公認心理師試験・午前問65は、電車内で強い動悸、息苦しさ、めまい、死への恐怖を経験し、その後も発作を繰り返し、電車を避けるようになった事例から、心理状態を判断する問題です。

正答は⑤ 予期不安です。

この問題では、最初の強い身体症状だけを見るのではなく、発作後に生じている「また同じことが起きるのではないか」という持続的な不安と、その結果としての回避行動を読むことが重要です。

パニック症では、突然のパニック発作だけでなく、次の発作を恐れる予期不安や、発作が起きたときに逃げにくい状況を避ける行動が、生活機能を大きく制限することがあります。

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問題

第5回公認心理師試験・午前 問65

25歳の会社員女性Aは、混雑した電車で通勤中に突然、動悸・息苦しさ・めまいと強い死への恐怖を経験しました。救急外来で心電図などの検査を受けても異常は認められず、その後も電車内で同様の症状を繰り返すようになります。次第に電車に乗ること自体を恐れるようになり、電車通勤ができなくなりました。複数の医療機関でも身体的な原因は特定されず、心療内科クリニックで公認心理師による心理的アセスメントが依頼されました。

Aの状態を最も適切に理解するものを1つ選びます。

  1. 強迫観念
  2. 心気妄想
  3. 侵入症状
  4. 対人恐怖
  5. 予期不安

※事例部分は公式問題の内容を損なわない範囲で要約しています。原文は第5回公認心理師試験 午前問題(PDF)で確認できます。

正答

⑤ 予期不安

厚生労働省の資料でも、パニック障害では、パニック発作、予期不安、広場恐怖が重要な症状として整理され、「また発作が起こるのではないか」という心配が続くことを予期不安と説明しています。

本問では、最初の発作だけでなく、その後に「また同じ症状が起きるかもしれない」という恐怖が持続し、電車利用を避けるようになっています。

この経過が予期不安を示します。

この問題の本質

この問題は、「動悸=パニック発作」と答える問題ではありません。

問題文で問われているのは、事例全体の心理的状態です。

重要なのは次の流れです。

突然の強い身体症状と恐怖 → 身体疾患を疑って受診 → 明確な異常が見つからない → 発作が反復 → 次の発作への強い心配 → 電車を回避

このうち、選択肢にある心理状態として最も適切なのが予期不安です。

パニック発作とは

パニック発作は、突然に強い恐怖や不快感が高まり、身体症状を伴う状態です。

代表的な症状には、

  • 動悸
  • 発汗
  • 震え
  • 息苦しさ
  • 胸部不快感
  • 吐き気
  • めまい
  • 非現実感
  • コントロールを失う恐怖
  • 死ぬのではないかという恐怖

などがあります。

厚生労働省「こころもメンテしよう」でも、パニック発作は突然生じ、身体症状と強い恐怖を伴うものとして説明されています。

本問の最初のエピソードは、まさにパニック発作を示唆する記述です。

パニック発作とパニック症は同じではない

ここは試験で重要です。

パニック発作は、強い恐怖と身体症状が急激に生じる「発作」です。

一方、パニック症では、予期しないパニック発作が反復し、その後に、

  • また発作が起こるのではないかという強い心配
  • 発作の意味への懸念
  • 発作を避けるための行動変化

などが持続します。

つまり、1回のパニック発作だけでパニック症と判断するわけではありません。

NIMHも、単発のパニック発作とパニック症を区別し、パニック症では反復する発作に加えて、将来の発作への持続的な心配や行動変化がみられると説明しています。

予期不安とは

予期不安は、まだ発作が起きていない段階から、

「また発作が起きるのではないか」

「電車の中で発作が起きたら逃げられない」

「今度こそ本当に倒れるのではないか」

などと心配し続ける状態です。

これは単なる漠然とした不安ではありません。

以前の発作経験があるため、特定の身体感覚や場所、状況が「次の発作の予告」に見えるようになり、不安が先回りして強まります。

本問では、電車内で発作が繰り返された結果、電車通勤そのものが困難になっています。

回避行動との関係

予期不安が強くなると、発作が起こりそうな状況を避けるようになることがあります。

たとえば、

  • 電車に乗らない
  • 人混みを避ける
  • 長い列に並ばない
  • 一人で外出しない
  • エレベーターを避ける
  • すぐに退出できない場所を避ける

などです。

短期的には、回避すると不安が下がります。

しかし、「避けたから発作が起きなかった」という学習が強くなると、その状況に再び入ることが難しくなり、生活範囲が狭まることがあります。

厚生労働省の説明でも、予期不安から電車や人混みなどを避ける場合があることが示されています。

広場恐怖との関係

パニック症と広場恐怖は関連しますが、同義ではありません。

広場恐怖では、症状が生じた場合に逃げることや援助を得ることが難しいと感じる状況に強い不安を抱きます。

公共交通機関、人混み、閉鎖空間、一人での外出などが問題になり得ます。

本問では電車回避がみられますが、選択肢は「広場恐怖」ではなく「予期不安」です。

そのため、設問では「再発への心配」という心理状態を読み取ることが正答につながります。

身体疾患を除外する視点も重要

パニック発作に似た症状は、心理的要因だけで起こるとは限りません。

動悸、息苦しさ、めまいなどは、循環器疾患、呼吸器疾患、甲状腺機能異常、薬物・カフェインなど、さまざまな身体的要因でも生じます。

本問では、救急外来で心電図等の検査を受け、さらに複数の医療機関で検査を受けています。

この情報が入っているのは、身体症状を安易に心理的問題と決めつけず、医学的評価との連携を前提とするためです。

心理職は診断そのものを独断で行うのではなく、医師による評価と連携しながら、症状の出現状況、認知、回避、生活への影響を整理します。

パニック症の認知行動モデル

パニック症では、身体感覚への破局的な解釈が悪循環に関わることがあります。

たとえば、

心拍が少し速くなる → 「心臓発作かもしれない」 → 不安が強まる → さらに心拍が速くなる → 「やはり危険だ」と感じる

という循環です。

このモデルは、第5回問10の選択肢にも関連する知識です。第5回問10|トランスアクショナルモデルでは、「パニック発作と身体感覚への破局的解釈」というCBTの代表的な考え方が選択肢に登場します。

予期不安と全般性不安を区別する

予期不安は、「次のパニック発作が起きるのではないか」という発作と結びついた不安です。

一方、全般性不安症では、仕事、健康、家族、学業など複数の領域について過剰な不安や心配が持続します。

両者とも「不安」ですが、何に対する不安なのかが異なります。

全般性不安症との違いは、第3回問52|全般性不安障害と比較すると整理しやすくなります。

各選択肢の解説

① 強迫観念

誤りです。

強迫観念は、本人の意思に反して繰り返し浮かび、強い不安や苦痛を生じさせる思考、衝動、イメージなどを指します。

本問の中心は、侵入的な思考そのものではなく、パニック発作の再発への恐怖です。

② 心気妄想

誤りです。

心気妄想は、自分が重い身体疾患に罹患していると確信する妄想的な信念です。

本問では、初回発作時に「死ぬのではないか」と恐怖を感じていますが、これはパニック発作中にみられる典型的な恐怖です。

検査後も特定の病気に罹患しているという妄想的確信が持続しているわけではありません。

③ 侵入症状

誤りです。

侵入症状は、PTSDなどでみられる、出来事の記憶やイメージが意思に反して再体験される症状などを指します。

本問にはトラウマ体験の再体験を示す情報はありません。

④ 対人恐怖

誤りです。

対人恐怖・社交不安では、他者から注目されたり評価されたりする場面で強い不安が生じます。

本問では、人からどう見られるかではなく、電車内で再び身体症状が起きることへの恐怖が中心です。

⑤ 予期不安

正答です。

発作が再び起きることへの持続的な心配が生じ、電車利用の回避にまで発展しています。

試験での見分け方

この種の事例問題では、症状を時間順に並べると解きやすくなります。

  1. 最初に突然の強い身体症状が起こる
  2. 医療機関を受診する
  3. 明確な身体的原因が確認されない
  4. 発作が反復する
  5. 「また起こるのではないか」と心配する
  6. 発作を恐れて場所や行動を避ける

この5番目が予期不安です。

「突然の発作」だけで終わらず、その後の認知と行動変化まで読むことがポイントです。

事例問題では「発作中」と「発作後」を分ける

パニック症の問題では、発作中に起きていることと、発作後に続いていることを分けて読むと混乱しにくくなります。発作中の動悸、息苦しさ、死への恐怖はパニック発作の特徴です。一方、「また起きたらどうしよう」という心配が発作のない時間にも続いている状態が予期不安です。本問は後者を答えさせる問題だと整理できます。

まとめ

第5回公認心理師試験・午前問65の正答は、⑤ 予期不安です。

予期不安とは、パニック発作を経験した後に、「また発作が起こるのではないか」と持続的に心配する状態です。

試験では、

パニック発作 → 予期不安 → 回避行動

という流れを押さえてください。

また、身体症状がある場合には身体疾患の評価が重要であり、「検査で異常がないから心理的」と短絡しないことも実践上の重要な視点です。

アセスメントでは何を確認するか

心理的アセスメントでは、「パニック症かどうか」というラベルだけを急いで決めるのではなく、発作の出現条件と生活への影響を具体的に整理します。

たとえば、

  • 最初の発作はいつ、どこで起きたか
  • 発作時にどのような身体感覚があったか
  • その身体感覚をどのように解釈したか
  • 何分程度でピークに達し、どのくらい続いたか
  • 発作後にどのような心配が続いているか
  • 避けている場所や行動は何か
  • 安心するために必ず行っていることはあるか
  • 仕事、通学、家事、対人関係にどの程度影響しているか
  • カフェイン、アルコール、薬物、睡眠不足などの影響はないか

といった情報を確認します。

本問では「電車に乗れなくなった」という生活機能への影響が明確です。この情報は、単に発作があっただけではなく、予期不安と回避が生活を狭めていることを示す重要な手掛かりです。

安全確保行動にも注目する

パニック症では、完全な回避だけでなく「安全確保行動」がみられることがあります。

たとえば、

  • 必ずドアの近くに立つ
  • 水や薬を持っていないと外出できない
  • 家族に同行してもらう
  • すぐ降りられる各駅停車しか使わない
  • 心拍を何度も確認する

などです。

これらは本人にとって不安を下げる工夫ですが、「これがないと危険だ」という学習を強めることもあります。

試験では、こうした行動が直接選択肢に出るとは限りません。しかし、パニック発作後に生活がどのように変化したかを見る視点は、事例問題で役立ちます。

治療とのつながり

パニック症に対する心理療法では、認知行動療法が代表的です。

NIMHは、CBTをパニック症に対して広く研究されている心理療法として紹介しており、身体感覚への反応の仕方や回避行動に働きかけます。

治療では、発作に伴う身体感覚をどう解釈しているかを検討したり、避けている状況へ段階的に近づいたり、身体感覚そのものへの曝露を行ったりする場合があります。

ただし、試験問題で「予期不安」を問われている段階では、治療技法を先に選ぶのではなく、まず症状の構造を正確に読むことが大切です。

参考文献・出典

  • 一般財団法人 公認心理師試験研修センター.第5回公認心理師試験 午前問題・正答.
  • 厚生労働省.セルフメンタルヘルス(不安障害・パニック障害).
  • 厚生労働省.こころもメンテしよう「不安障害」.
  • National Institute of Mental Health. Panic Disorder: What You Need to Know.

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