第5回公認心理師試験・午前問56は、文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について」(令和元年10月25日)の内容を問う問題です。正答は③と⑤です。ポイントは、「学校に登校することだけ」を目標にしないこと、児童生徒理解・支援シートを活用すること、そして校長のリーダーシップの下でスクールカウンセラー等を含む組織的支援体制を整えることです。
- 実際の問題文
- 問題文の読み解き
- 正答③ 児童生徒理解・支援シートの活用
- 正答⑤ 校長のリーダーシップと組織的支援
- ① 「登校すること」を最終目標とする、が誤りである理由
- 社会的自立を目標とするとは
- ② 個別の教育支援計画を必ず作成する、が誤りである理由
- 児童生徒理解・支援シートと個別の教育支援計画の違い
- ④ 民間施設やNPOとの連携を控える、が誤りである理由
- 多機関連携で重要なこと
- 不登校の時期が持つ意味
- 支援では背景要因を多面的に捉える
- 本人・保護者との協働
- 公認心理師の役割
- 試験での見分け方
- 「社会的自立」を本人の文脈で考える
- 児童生徒理解・支援シートの意義
- SCとSSWの役割は同じではない
- 支援の評価は「できた・できない」だけにしない
- 早期支援と長期化への備え
- まとめ
- 参考文献・資料
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実際の問題文
問56 不登校児童生徒への支援の在り方について(令和元年、文部科学省)の内容として、適切なものを2つ選べ。
① 学校に登校するという結果を最終的な目標として支援する。
② 学習内容の確実な定着のために、個別の教育支援計画を必ず作成する。
③ 組織的・計画的な支援に向けて、児童生徒理解・支援シートを活用する。
④ フリースクールなどの民間施設やNPO等との積極的な連携は、原則として控える。
⑤ 校長のリーダーシップの下、スクールカウンセラー等の専門スタッフも含めた組織的な支援体制を整える。
問題文の読み解き
この問題では、不登校支援を「登校させることだけ」に狭めていないか、支援が個人対応に偏らず組織的に行われるか、学校外の機関や専門職と連携するか、という通知の基本方向を押さえます。
③の児童生徒理解・支援シートの活用、⑤の校長のリーダーシップと専門スタッフを含む組織的支援体制は、通知の内容に合致します。一方、①の「登校という結果を最終目標とする」、②の「個別の教育支援計画を必ず作成する」、④の「民間施設等との連携を原則控える」は通知の方向と一致しません。
正答③ 児童生徒理解・支援シートの活用
文部科学省通知では、不登校児童生徒への支援を学校だけで抱え込まず、関係者が情報を共有し、組織的・計画的に支援することが重視されています。そのためのツールとして「児童生徒理解・支援シート」を活用することが示されています。
このシートは、児童生徒の状況、これまでの支援、本人・保護者の意向、関係機関との連携状況、今後の支援方針などを整理し、関係者間で共通理解を形成するために用いられます。
正答⑤ 校長のリーダーシップと組織的支援
通知は、学級担任や養護教諭など特定の教職員だけに対応を任せるのではなく、校長のリーダーシップの下で組織的な支援体制を整えることを求めています。
そこには、教員だけでなくスクールカウンセラー〈SC〉、スクールソーシャルワーカー〈SSW〉などの専門スタッフを含めることが重要です。児童生徒の心理面、家庭環境、福祉課題、学習保障など複数の観点を統合して支援します。
① 「登校すること」を最終目標とする、が誤りである理由
通知では、不登校児童生徒への支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立することを目指す必要があるとされています。
ここで重要なのは、「登校を目標にしてはいけない」という意味ではないことです。本人にとって登校再開が適切な目標になることもあります。しかし、登校の可否だけを成功・失敗の唯一の指標にしない、という点が通知の趣旨です。
社会的自立を目標とするとは
社会的自立とは、単に学校へ戻ることではなく、本人が自分の将来を考え、学びや生活、進路を主体的に選択していける状態を目指すことです。学校復帰、教育支援センター、ICTを活用した学習、民間施設での学びなど、経路は一つではありません。
そのため、支援者は「今登校できているか」だけでなく、学習機会が確保されているか、生活リズムや心理状態はどうか、本人が将来をどう考えているかなど、多面的に状況を確認します。
② 個別の教育支援計画を必ず作成する、が誤りである理由
個別の教育支援計画は、主として特別な教育的支援を必要とする児童生徒について、長期的視点で教育・福祉・医療等の連携を図るために作成されるものです。
一方、不登校支援の通知で重視されているのは「児童生徒理解・支援シート」です。本問の②は「学習内容の確実な定着のために」「必ず個別の教育支援計画を作成する」としており、通知の内容とは異なります。
児童生徒理解・支援シートと個別の教育支援計画の違い
児童生徒理解・支援シート
不登校児童生徒への組織的・計画的支援のために、本人の状況、支援方針、関係者間の役割などを共有するためのものです。
個別の教育支援計画
特別な教育的支援を必要とする児童生徒について、教育・福祉・医療などを含む長期的支援の見通しを整理する計画です。
試験での注意
名称が似た「支援計画」を一括りにせず、どの制度・通知で何が求められているかを確認します。
④ 民間施設やNPOとの連携を控える、が誤りである理由
通知は、学校外の多様な教育機会や支援資源を否定していません。教育支援センター、医療機関、児童相談所、福祉機関などに加え、一定の条件の下で民間施設やNPO等との連携も重要です。
したがって、「積極的な連携は原則として控える」という④は通知の方向と逆です。学校のみで支援を完結させるのではなく、本人の状況に応じて適切な機関と連携します。
多機関連携で重要なこと
連携は、単に「紹介して終わり」ではありません。誰が何を担当するのか、どの情報を共有するのか、本人・保護者の意向をどう確認するのか、学校との関係をどう保つのかを整理する必要があります。
また、情報共有では必要性と範囲を吟味し、本人・保護者への説明やプライバシーへの配慮を行います。
不登校の時期が持つ意味
通知では、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的意味を持つことがある一方、学業の遅れや進路選択上の不利益、社会的自立へのリスクも存在することに留意するとされています。
したがって、「休ませればよい」「登校させればよい」という一方向の支援ではなく、本人の状態と今後の見通しを継続的に評価することが必要です。
支援では背景要因を多面的に捉える
不登校は、一つの原因だけで説明できるとは限りません。学校生活上の困難、対人関係、学習上のつまずき、心身の状態、家庭環境、発達特性など、複数の条件が重なる場合があります。
そのため、支援者は原因を一つに決めつけず、本人の負担やニーズを把握し、必要に応じてSC、SSW、医療、福祉等と連携します。
本人・保護者との協働
支援計画は、学校側だけで作って本人へ提示するものではありません。本人・保護者の意向を確認し、何が負担になっているか、どのような支援なら受け入れやすいかを話し合いながら進めます。
児童生徒理解・支援シートも、関係者間の情報整理だけでなく、本人の状態変化や支援の進捗に応じて見直していくことが重要です。
公認心理師の役割
スクールカウンセラーとしては、本人の心理状態や学校適応だけでなく、家庭・教員との関係、学習上の課題、支援資源へのつながりを把握します。また、教職員へ心理学的見立てを共有し、対応方針の共通理解を支えます。
ただし、心理職だけで支援を抱え込まず、学校組織や関係機関と役割分担することが不可欠です。
試験での見分け方
「登校だけ」が目標なら誤りを疑う
通知の目標は社会的自立です。登校再開は選択肢の一つですが、唯一の成果指標ではありません。
支援シートと組織的支援は正答候補
児童生徒理解・支援シート、校長のリーダーシップ、SC・SSW等との連携は通知の中心事項です。
学校外資源を排除する表現は誤り
民間施設やNPO等との連携を一律に避ける方向ではありません。
「社会的自立」を本人の文脈で考える
社会的自立は、全員に同じ進路や生活様式を求める概念ではありません。本人が自分の状態や希望を踏まえ、必要な支援を受けながら学びや進路を選択し、社会とのつながりを形成していけることが重要です。
そのため、学校復帰が実現したとしても、本人が強い疲弊を抱え続けていれば支援が十分とは言えません。逆に、登校していなくても学習機会や対人関係、将来への見通しが確保されている場合があります。
児童生徒理解・支援シートの意義
不登校支援では、担当者が替わるたびに情報が分断されたり、支援方針が人によって大きく異なったりすることがあります。児童生徒理解・支援シートは、本人の状況、これまでの経過、関係者の見立て、支援内容を共有し、支援の連続性を保つために役立ちます。
また、支援が有効だったかどうかを振り返る基盤にもなります。「何を実施したか」だけでなく、「その結果本人の負担や学習状況がどう変わったか」を追うことが重要です。
SCとSSWの役割は同じではない
スクールカウンセラーは、児童生徒や保護者への心理相談、教職員へのコンサルテーションなどを担います。スクールソーシャルワーカーは、家庭環境や福祉制度、関係機関との調整など、環境面への働きかけを強みとします。
実際には役割が重なる部分もありますが、両者の専門性を生かし、担任、養護教諭、管理職、教育支援センター等と協働することで、支援の選択肢を広げられます。
支援の評価は「できた・できない」だけにしない
不登校支援では、登校日数だけを成果指標にすると、本人の疲労や不安、学習への取り組み、生活の安定などの変化を見落とすことがあります。本人にとって何が改善したのか、どの負荷なら継続可能かを丁寧に確認します。
短期的に登校できても、その後に強い疲労や体調悪化が生じる場合があります。継続可能性を含めて支援を評価する視点が重要です。
早期支援と長期化への備え
不登校が始まった初期には、欠席の背景を把握し、本人や保護者と早めに関係を作ることが重要です。一方、支援が長期化する場合には、学習保障や進路情報、学校外の居場所との連携も必要になります。
そのため、支援は一度決めた計画を固定するのではなく、状態の変化に応じて更新します。通知が組織的・計画的支援を強調するのは、この継続的な調整を可能にするためでもあります。
まとめ
第5回午前問56の正答は③と⑤です。不登校支援では、登校という結果のみを目標にせず、社会的自立を見据えます。そのために児童生徒理解・支援シートを活用し、校長のリーダーシップの下でSC・SSW等を含む組織的支援体制を整えることが重要です。


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