セルフモニタリングとは?心理学・認知行動療法での意味と記録のやり方を解説

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セルフモニタリングとは、臨床心理学や行動変容の文脈では、自分の行動・思考・感情・身体反応・状況などを観察し、必要な情報を記録する方法を指します。

ただし、心理学では同じself-monitoringという語が別の意味でも使われます。社会心理学では、自分の表出行動や自己呈示を状況に合わせて調整する傾向を指す研究があります。

この記事では、この2つを区別したうえで、日常生活や認知行動療法で使われる「観察・記録」のセルフモニタリングを中心に解説します。

先に要点

  • セルフモニタリングには、心理学の領域によって異なる用法がある
  • 臨床・行動変容では、自分の行動・思考・感情・身体反応・状況などを観察し、必要な情報を記録する方法として使われる
  • 記録は「自分を採点すること」ではなく、パターンや条件を見つけるためのデータ
  • 記録そのものが行動を変えることもあり、完全に中立な測定とは限らない
  • 項目を増やしすぎず、まず1~3項目程度から始めるほうが続けやすい
  • 記録が反すうや自己批判を強める場合は、頻度を下げる・記録対象を変える・中断することも選択肢

セルフモニタリングとは?

セルフモニタリング(self-monitoring)は、一つの意味だけを持つ用語ではありません。

大きく分けると、心理学では少なくとも次の2つの文脈があります。

1.社会心理学・パーソナリティ研究でのセルフモニタリング

Snyderは1974年、self-monitoringを自己呈示や表出行動に関わる個人差として研究しました。対人場面で、周囲の状況や社会的な手がかりをどの程度参照し、自分の振る舞いを調整するかという文脈です。

この意味でのセルフモニタリングは、「記録表に行動を書き込む方法」とは別の概念です。

日本の概念分析研究でも、対人関係におけるセルフモニタリングについて、観察、状況の察知、状況に応じた行動の選択とコントロールといった要素が整理されています。

2.臨床心理学・認知行動療法・行動変容でのセルフモニタリング

一方、臨床や行動変容の文脈では、セルフモニタリングは自分の行動、思考、感情、身体反応、状況などに注意を向け、必要な情報を記録する方法として使われます。

KorotitschとNelson-Grayは、セルフモニタリングを臨床アセスメントで広く用いられる方法として整理し、専門家が行う臨床評価の中で、診断に関連する情報収集、標的行動の選択、機能的アセスメント、治療経過の把握などに使われると述べています。ここでいう「診断に関連する情報収集」は、本人が記録だけで自己診断を行うという意味ではありません。

認知行動療法でもセルフモニタリングは重要な臨床技法の一つです。Cohenらは、セラピストとクライエントが実際のデータを一緒に集め、仮説を検討していくcollaborative empiricism(協働的実証主義)を支える方法としてセルフモニタリングを位置づけています。

つまり、文脈によってセルフモニタリングは、状態やパターンを把握するためのアセスメントにも、行動や対処を調整していく介入の一部にもなります。

この記事では、以降はこちらの「観察・記録としてのセルフモニタリング」を中心に扱います。

セルフモニタリングは何のためにする?

セルフモニタリングの目的は、細かく記録すること自体ではありません。

重要なのは、記録を通じて「いつ、どんな条件で、その行動や感情が起きているのか」を見つけやすくすることです。

たとえば、「最近ずっとイライラしている」と感じているとき、印象だけでは原因が分かりにくいことがあります。

そこで、

  • 何時ごろだったか
  • その直前に何があったか
  • どんな感情があったか
  • 身体はどんな状態だったか
  • その後に何をしたか

を簡単に記録してみると、「睡眠不足の日の夕方に強くなる」「特定の仕事の後に起こりやすい」など、これまで見えなかった条件が見つかることがあります。

自分の認知に気づくという点ではメタ認知と関連します。また、その瞬間の経験に気づくという点ではマインドフルネスとも重なります。

ただし、セルフモニタリングでは「気づく」だけでなく、後から比較・検討できる形で記録することが大きな特徴になります。

何を記録すればいい?|行動と「行動の結果」を分けて考える

行動変容研究で広く使われるBehavior Change Technique Taxonomy v1(BCTTv1)では、セルフモニタリングを少なくとも2つに分けています。

  • Self-monitoring of behavior:自分が何をしたかを記録する
  • Self-monitoring of outcome(s) of behavior:その行動の結果として何が起きたかを記録する

たとえば運動であれば、

  • 行動:20分歩いた
  • 結果:歩数が7,000歩になった、気分が少し軽くなった

のように分けられます。

心理的なセルフケアでも同様です。

  • 行動:仕事の途中で5分休憩した
  • 結果:肩の緊張が少し下がった

学習であれば、

  • 行動:夕食後に10分だけ問題集を開いた
  • 結果:予定していた3問のうち2問に着手できた

というように、「何をしたか」と「その後どうなったか」を分けると、次に何を調整すればよいか考えやすくなります。

セルフモニタリングの具体例

記録は細かいほど良いわけではありません。最初は目的に関係する項目だけに絞るほうが実用的です。

例1|先延ばしを記録する

項目 記録例
やろうとしていたこと レポートを始める
そのときの状況 21時、仕事から帰宅後
実際にしたこと スマートフォンを見た
そのときの状態 眠い、疲労感が強い

この場合、「また先延ばしした」と採点するだけでは、次の一手につながりません。

一方、「21時・帰宅直後・強い疲労」という条件まで記録できれば、「夜ではなく朝にする」「最初の5分だけ着手する」など調整案を考えやすくなります。

例2|気分の変化を記録する

項目 記録例
できごと 上司から修正を依頼された
感情 不安 70/100
考え 「全部やり直しかもしれない」
行動 すぐ返信せず、内容を読み直した

このように記録すると、できごと・感情・考え・行動が混ざりにくくなります。

感情への対処を考える場合は、感情調整の記事も参考になります。

記録するだけで行動が変わることがある|reactivity

セルフモニタリングで注意したいのが、reactivity(反応性)です。

KorotitschとNelson-Grayは、セルフモニタリングには記録の正確さだけでなく、記録そのものが対象となる行動を変化させる可能性があることを整理しています。

たとえば、お菓子を食べた回数を毎回記録し始めると、「記録しなければならない」という意識だけで食べる回数が変わることがあります。

つまり、セルフモニタリングは必ずしも「何も影響を与えずに自分を測る方法」ではありません。

これは欠点だけではなく、行動変容を目的とする場合には利用されることもあります。ただし、記録前と記録後で行動が変わった場合に、「もともとの自然な状態をそのまま測定した」とは言い切れない点には注意が必要です。

セルフモニタリングには効果がある?

セルフモニタリングは多くの行動変容プログラムで使われていますが、記録すれば何にでも効果があると考えるのは適切ではありません。

健康行動のmeta-reviewでは結果は一貫していない

Springらの2021年のmeta-reviewでは、食行動、身体活動、減量に関する30のメタ分析、合計409,185人分のデータが統合されました。

self-monitoringは20のレビューで検討されていましたが、self-monitoringを含む個々の行動変容技法が、すべてのアウトカムで一貫して良い結果と関連していたわけではありません。

さらに著者らは、複数の行動変容技法を組み合わせた介入研究が多いため、そこからセルフモニタリングだけの寄与を切り分けることには方法論的な限界があると指摘しています。

そのため、「セルフモニタリング単独の効果」がどの程度なのかは、介入内容や対象によって慎重に考える必要があります。

座位行動では短期的な減少が報告されている

Compernolleらの2019年の系統的レビュー・メタ分析では、self-monitoringを含む19のランダム化比較試験、合計2,800人が対象となりました。

短期的には、総座位時間と仕事中の座位時間の減少が報告されています。

一方で、研究規模が小さいこと、研究間の異質性が大きいこと、変化がself-monitoringそのものによるものか、他の介入要素によるものかを十分に分けられないこと、効果が持続するか不明であることが限界として挙げられています。

つまり、セルフモニタリングは行動変容の材料になりうる一方、万能な単独介入として扱わないことが重要です。

初心者が始めるなら|まず1~3項目だけ記録する

セルフモニタリングを始めるとき、ありがちな失敗は「全部記録しよう」とすることです。

睡眠時間、気分、考え、食事、運動、仕事、対人関係、身体症状まで一度に記録すると、記録すること自体が大きな負担になりやすくなります。

日本心理学会の一般向け解説でも、自己モニタリングでは目標を決め、記録対象を絞り、記録方法を簡潔にすることや、完璧に続けようとしすぎないことが紹介されています。

まずは次のように、目的に合う1~3項目から始めます。

  • 睡眠を整えたい:就床時刻/起床時刻/起床時の眠気
  • 先延ばしを減らしたい:やる予定だったこと/実際にしたこと/そのときの疲労
  • 不安のパターンを知りたい:できごと/不安の強さ/そのときの考え
  • ストレス対処を見直したい:ストレス場面/使った対処/その後の変化

ストレスへの対処方法そのものを整理したい場合は、コーピングの記事も参考になります。

「記録できなかった日」は失敗ではない

セルフモニタリングを始めると、記録表を埋めることが新しい課題になってしまうことがあります。

しかし、記録できなかった日にも情報があります。

たとえば、

  • 疲労が強い日は記録できない
  • 項目が5つになると面倒になる
  • 仕事中は記録できないが帰宅後ならできる
  • 感情を数値化しようとすると迷って止まる
  • 毎日ではなく週3回のほうが続く

ということが分かれば、その情報自体がセルフモニタリングの方法を調整する材料になります。

Ig Knowledgeでは、「記録できたか」を成績にするのではなく、自分に合う記録条件を探すことを重視します。

感情の数値が分からなければ「よく分からない」と書いても構いません。考えが言葉にならなければ、空欄でも構いません。

正確に書くことを目的にするより、後から見たときに「このときはこういう条件だった」と分かる程度の情報を残すほうが実用的です。

記録がつらくなるときは減らしていい

セルフモニタリングは誰にとっても、どの状態でも適しているとは限りません。

とくに、記録するたびに嫌なできごとを繰り返し考えてしまう、数字を良くすることに強くこだわる、自分を責める材料にしてしまう場合には、方法を調整する必要があります。

その場合は、

  • 記録頻度を毎日から週数回に減らす
  • 感情や思考ではなく、睡眠時刻や行動など外から確認しやすい項目だけにする
  • 記録時間を1分以内に決める
  • 詳細を書かず、チェック式にする
  • いったん中止する

といった方法があります。

強い不安や抑うつ、フラッシュバック、生活への大きな支障などがある場合、セルフモニタリングだけで対応しようとせず、必要に応じて医療機関や心理職などへ相談してください。

セルフモニタリングは、診断・治療や専門的な心理支援の代わりになるものではありません。

記録したデータは「次に何を変えるか」に使う

記録は、集めるだけでは役立ちにくいものです。

数日~1週間程度たまったら、次のような視点で振り返ります。

  • 起きやすい時間帯はあるか
  • 直前に共通するできごとはあるか
  • 睡眠や疲労と関係していそうか
  • うまくいった日は何が違ったか
  • 行動の後に何が変わったか

そして、一度に大きく変えるのではなく、「朝に5分だけ着手してみる」「疲れている日は記録項目を1つにする」など、小さな調整につなげます。

セルフモニタリングは、自分を監視するためではなく、自分に合う条件を見つけるための観察として使うと実用性が高まります。

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ここではAwarefyを「セルフモニタリングの効果を保証するアプリ」や「治療の代替」としてではなく、記録を残し、後から振り返るための補助的な選択肢として位置づけます。

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Awarefyは、セルフケアや記録を補助する選択肢の一つです。医療機関での診断・治療や心理支援の代替を意味するものではありません。

まとめ|セルフモニタリングは「自分を採点する記録」ではない

セルフモニタリングは、心理学の領域によって意味が異なる用語です。

社会心理学では自己呈示や表出行動を状況に合わせて調整する個人差として研究される一方、臨床心理学・認知行動療法・行動変容では、自分の行動・思考・感情・身体反応などを観察し、必要な情報を記録する方法として使われます。

日常で使うときのポイントは、記録量を増やすことではありません。

  • 何を知りたいかを決める
  • 1~3項目程度に絞る
  • できた/できなかっただけでなく、そのときの条件を見る
  • 数日たまったら、共通点や違いを振り返る
  • 記録が負担なら減らす・変える・やめる

記録できなかった日も、「なぜ記録しづらかったのか」という情報が残ります。

セルフモニタリングの目的は、自分を細かく監視することではなく、自分に合う条件を見つけ、次の調整に使えるデータを得ることです。

参考文献・出典

  • Snyder, M. (1974). Self-monitoring of expressive behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 30(4), 526–537. https://doi.org/10.1037/h0037039
  • Korotitsch, W. J., & Nelson-Gray, R. O. (1999). An overview of self-monitoring research in assessment and treatment. Psychological Assessment, 11(4), 415–425. https://doi.org/10.1037/1040-3590.11.4.415
  • Cohen, J. S., Edmunds, J. M., Brodman, D. M., Benjamin, C. L., & Kendall, P. C. (2013). Using Self-Monitoring: Implementation of Collaborative Empiricism in Cognitive-Behavioral Therapy. Cognitive and Behavioral Practice, 20(4), 419–428. https://doi.org/10.1016/j.cbpra.2012.06.002
  • Michie, S., Richardson, M., Johnston, M., et al. (2013). The Behavior Change Technique Taxonomy (v1) of 93 Hierarchically Clustered Techniques. Annals of Behavioral Medicine, 46(1), 81–95. https://doi.org/10.1007/s12160-013-9486-6
  • 田中広美(2018).対人関係におけるセルフモニタリングの概念分析.日本看護学教育学会誌, 28(1), 13–23. https://doi.org/10.51035/jane.28.1_13
  • Spring, B., Champion, K. E., Acabchuk, R., & Hennessy, E. A. (2021). Self-regulatory behaviour change techniques in interventions to promote healthy eating, physical activity, or weight loss: a meta-review. Health Psychology Review, 15(4), 508–539. https://doi.org/10.1080/17437199.2020.1721310
  • Compernolle, S., DeSmet, A., Poppe, L., et al. (2019). Effectiveness of interventions using self-monitoring to reduce sedentary behavior in adults: a systematic review and meta-analysis. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 16, 63. https://doi.org/10.1186/s12966-019-0824-3
  • 日本心理学会.自己モニタリングでゆるり行動変容.心理学ワールド110号
  • Awarefy.「分析」タブに反映される情報.Awarefy公式ヘルプ

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