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マインドフルネスを試してみたものの、「雑念ばかり浮かんでしまった」「頭を空っぽにできなかった」と感じたことはないでしょうか。
マインドフルネスは、何も考えない状態をつくることではありません。むしろ、考えや感情、身体感覚が生じていることに気づき、すぐに良い・悪いと決めつけずに今の経験へ注意を向け直していくことが中心です。
この記事では、マインドフルネスの意味、瞑想との違い、研究で分かっている効果と限界、初心者でも短時間で試せる実践方法、そして「うまくできない」ときの考え方まで心理学の知見から整理します。
先に要点
- マインドフルネスは「無になること」ではない
- 雑念が浮かぶこと自体は失敗ではなく、気づいて注意を戻す過程も実践に含まれる
- ストレス、不安、抑うつ、痛みなどについて一定の研究知見はあるが、万能な方法ではない
- 短時間の実践でもよいが、「長くやれば必ず効果が高い」とは限らない
- 内側に注意を向けることでつらさが強まる人もいるため、無理に続ける必要はない
- 「できた/できなかった」だけでなく、自分に合う条件を探すことが大切
マインドフルネスとは?
マインドフルネスには複数の定義がありますが、心理学研究でよく参照されるものの一つがBishopらによる2004年の操作的定義です。
Bishopらは、マインドフルネスを大きく2つの要素から整理しました。
- 今この瞬間の経験に注意を向け続けられるよう、注意を自己調整すること
- その瞬間の経験に対して、好奇心・開放性・受容を伴う姿勢で関わること
つまり、「呼吸だけに完璧に集中すること」や「考えをゼロにすること」が目的ではありません。
たとえば、呼吸に注意を向けている途中で「明日の仕事が心配だ」という考えが浮かんだとします。このとき、
「また雑念が出た。自分はマインドフルネスができない」
と評価するのではなく、
「今、仕事の心配を考えていたことに気づいた」
と捉え、必要であれば再び呼吸や身体感覚へ注意を戻します。
注意が逸れないことではなく、逸れたことに気づき、戻すことも含めて実践と考えると分かりやすくなります。
マインドフルネスと瞑想は同じ?
日常では「マインドフルネス」と「瞑想」がほぼ同じ意味で使われることがありますが、研究領域や実践の伝統によって用語の範囲は異なり、完全に同義とは限りません。
この記事では、理解しやすさを優先して、マインドフルネスを「現在の経験への注意と、その経験への関わり方」、瞑想をその状態や姿勢を練習するために用いられる実践方法の一群として区別します。これはすべての研究領域で唯一の定義という意味ではありません。
米国NCCIHは、瞑想を心身の統合に焦点を当てるさまざまな実践の総称として説明し、その一部として、現在の瞬間に判断を加えず注意や気づきを保つマインドフルネスを挙げています。
そのため、マインドフルネス瞑想はマインドフルネスを練習する代表的な方法の一つと考えると理解しやすいでしょう。
また、研究や臨床では、MBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction:マインドフルネスストレス低減法)やMBCT(Mindfulness-Based Cognitive Therapy:マインドフルネス認知療法)のように、瞑想だけでなく説明、ホームワーク、認知的な学習などを組み合わせた構造化プログラムもあります。
一方、日常生活では、食事中の味や香り、歩いているときの足裏の感覚、会話中の相手の声などに注意を戻すことも、「今起きている経験に気づく」という意味でマインドフルな関わり方になりえます。
「雑念が出たら失敗」ではない|具体例で考える
初心者がつまずきやすいのは、「集中が途切れた=できなかった」と考えてしまうことです。
たとえば、1分間だけ呼吸へ注意を向けるとします。
- 鼻や胸、お腹など、呼吸を感じやすい場所に注意を向ける
- 途中で「夕食は何にしよう」「あの仕事が終わっていない」などの考えが浮かぶ
- しばらく考え込んでいたことに気づく
- 「考えていた」と確認し、呼吸へ注意を戻す
この3番目の「気づいた」が重要です。
注意が逸れることは、人間の注意機能として自然に起こります。マインドフルネスを、雑念を一切なくす競技のように扱う必要はありません。
自分の考えや感情に「今こうなっている」と気づく点では、メタ認知とも関連します。ただし、マインドフルネスとメタ認知は同じ概念ではありません。マインドフルネスでは、気づきに加えて、現在の経験にどのような姿勢で関わるかも重視されます。
マインドフルネスにはどんな効果がある?
マインドフルネスは広く紹介されていますが、「誰にでも効く」「やれば不安が消える」と考えるのは適切ではありません。
不安・抑うつ・痛みなどでは一定の効果が報告されている
Goyalらの2014年の系統的レビュー・メタ分析では、47試験・3,515人が対象となりました。マインドフルネス瞑想プログラムについて、不安、抑うつ、痛みに小~中程度の改善を示すエビデンスが報告されました。
一方で、ポジティブ感情、注意、物質使用、食行動、睡眠、体重などについては、効果がないことを示す低いエビデンス、または結論を出すには不十分なエビデンスとされました。また、薬物療法、運動、他の行動療法などのactive treatmentより優れているというエビデンスは確認されませんでした。
したがって、「マインドフルネスには効果がある」という一文だけでまとめるより、何を対象に、何と比較し、どのようなプログラムを行ったかを見る必要があります。ここで示されているのは特定の症状やアウトカムに関する研究結果であり、「メンタルヘルス全般が一律に改善する」と一般化できるものではありません。
臨床群を対象とした大規模メタ分析でも効果は比較条件によって変わる
Goldbergらの2018年の系統的レビュー・メタ分析では、142の独立したサンプル、計12,005人が分析されました。
マインドフルネスに基づく介入は、無治療、最小限の介入、非特異的なactive control、特定のactive controlよりも良好な結果を示しました。一方、エビデンスに基づく既存治療との直接比較では、統計的な差は確認されませんでした。
これは、「マインドフルネスが既存治療より優れている」という意味ではありません。むしろ、対象や比較条件によって効果の見え方が変わることを示しています。
数分の短い実践にも研究はあるが、効果を大きく見積もらない
Schumerらの2018年のメタ分析では、短時間のマインドフルネストレーニングを扱った65件のRCT、5,489人が分析され、ネガティブ感情に対して小さな効果が報告されました。
ただし、出版バイアスを補正すると全体効果は大きく低下しました。したがって、数分の実践を「すぐ効く方法」と断定することはできません。
短い実践の利点は、即効性を保証することではなく、負担を小さくして試し、自分に合うか確認しやすいことにあります。
なぜマインドフルネスが役立つと考えられている?
マインドフルネスの作用機序は一つに確定しているわけではありません。
Hölzelらは、マインドフルネス瞑想に関連する主なメカニズムとして、次の4つを提案しています。
- 注意調整:注意が逸れたことに気づき、対象へ戻す
- 身体感覚への気づき:呼吸、緊張、心拍などの感覚に気づく
- 感情調整:感情に巻き込まれたまま反応する以外の余地をつくる
- 自己への見方の変化:一時的な思考や感情を、自分そのものと同一視しすぎない
これらは作用機序として提案・研究されているものであり、「脳のこの部分が変わるから必ず治る」といった単純な因果関係を意味しません。
感情との関わり方を詳しく知りたい場合は、感情調整の記事も参考になります。また、嫌な考えや感情があっても選択肢を保つという点では、心理的柔軟性とも関連します。
初心者が試すなら|1~3分の短い実践
ここから紹介する方法は、MBSRやMBCTなどの治療プログラムそのものではありません。日常でマインドフルな注意の向け方を試すための、簡易的な練習例です。
以下の4段階は、この記事で実践しやすいように整理した例であり、検証済みの「4ステップ・マインドフルネス・プロトコル」を示すものではありません。
1.無理のない姿勢をとる
椅子に座っても、立ったままでも構いません。姿勢を完璧に整えることより、今の身体に強い負担がないことを優先します。
目を閉じる必要もありません。目を閉じると不安が強くなる場合は、視線を少し落として周囲を見られる状態にしておきます。
2.注意を向ける対象を一つ選ぶ
呼吸が代表的ですが、必ず呼吸である必要はありません。
- 足裏が床に触れる感覚
- 椅子に触れている身体の感覚
- 周囲から聞こえる音
- 手に触れている物の感触
など、自分にとって観察しやすい対象を選びます。
3.注意が逸れたら「逸れた」と気づく
考え、記憶、予定、不安などへ注意が移ったら、「考えていた」「心配していた」と気づきます。
考えの内容をその場で解決しようとせず、まず気づくことを優先します。
4.できそうなら注意を戻す
再び呼吸、足裏、音などへ注意を戻します。
これを1~3分程度試して終了します。長時間続けることを成功条件にしません。
注意が何度逸れたかではなく、逸れたことに何度気づけたかという見方をすると、失敗感を減らしやすくなります。
マインドフルネスがうまくできないときに確認したいこと
「集中できない」「続かない」とき、それだけで自分に向いていないと決める必要はありません。一方で、無理に続ける必要もありません。
まず、実践できなかった理由を条件として見てみます。
| 起きていること | 調整の例 |
|---|---|
| 眠気や疲労が強い | 時間を短くする、休息を優先する |
| 静かにすると考え込みやすい | 呼吸ではなく周囲の音や足裏に注意を向ける |
| 目を閉じると不安になる | 目を開けたまま行う |
| 「正しくやらなければ」と緊張する | 1分だけ観察して終える |
| 一人で内側に注意を向けることがつらい | 中断し、別のセルフケアや支援を選ぶ |
ストレスへの対処はマインドフルネスだけではありません。状況を変える、休む、誰かに相談するなど、他の方法を含めて選ぶことが重要です。具体的な選択肢は、コーピングの記事でも整理しています。
マインドフルネスが合わない・つらくなることもある
マインドフルネスや瞑想は一般にリスクが少ない方法として紹介されることがありますが、「誰にとっても安全」と断定できるわけではありません。
Fariasらの2020年の系統的レビューでは、瞑想実践に関連する有害事象を扱った83研究、計6,703人が分析されました。研究全体から算出された有害事象の推定割合は8.3%でしたが、実験研究では3.7%、観察研究では33.2%と大きな差がありました。
このレビューはマインドフルネスだけを対象にしたものではなく、さまざまな瞑想実践を含みます。そのため、8.3%という値を「マインドフルネスをすると8.3%の人に有害事象が起こる」と読み替えることはできません。
また、研究デザイン、瞑想法、対象者、有害事象の定義や把握方法が異なるため、この数字だけを個人のリスクへ直接当てはめることもできません。
報告された有害事象には、不安、抑うつ、認知面の異常などが含まれていました。NCCIHも、瞑想やマインドフルネスは一般にリスクが少ないと考えられている一方、有害影響を十分に調べた研究はまだ少なく、安全性について断定できないとしています。
実践中に不安、フラッシュバック、強い身体的不快感などが増える場合には、無理に続けることを「頑張り」と考える必要はありません。いったん中止し、より外側の刺激に注意を向ける、別のセルフケアを選ぶ、必要に応じて医療機関や心理職などへ相談することも選択肢です。
マインドフルネスは医療機関での診断・治療や心理支援の代替ではありません。強い症状や生活への大きな支障がある場合は、セルフケアだけで抱え込まないことが重要です。
日常で続けるなら「できたか」より条件を見る
マインドフルネスを習慣にするとき、「今日は10分できた」「今日はできなかった」と実施時間だけを記録すると、新しい達成課題になってしまうことがあります。
Ig Knowledgeでは、できた/できなかっただけではなく、どのような条件なら取り組みやすかったかを見ることを重視します。
たとえば、
- 朝より夜のほうが取り組みやすかった
- 呼吸より足裏の感覚のほうが安心して注意を向けられた
- 疲れている日は1分でも負担だった
- 仕事の直後より、入浴後のほうが考え込みにくかった
- 静かな場所より、少し生活音がある場所のほうが落ち着いた
といった情報です。
「できなかった日」を失敗として消すのではなく、その日の疲労、環境、時間帯、考えていたこと、感情などを見ていくと、自分に合う方法を調整しやすくなります。
PR|気分・考え・出来事を記録して振り返りたい人へ
Awarefyでは、3コラム法・5コラム法・7コラム法を使って、できごと、感情、考えなどを記録できます。また、記録した感情の変化や構成、使用したタグを後から確認できます。
ここではAwarefyを「マインドフルネスの効果を保証するアプリ」や「マインドフルネス治療を行うアプリ」としてではなく、自分がどのような場面で何を感じ、何を考えていたかを記録し、後から条件を振り返るための補助的な選択肢として位置づけます。
Awarefyは、セルフケアや記録を補助する選択肢の一つです。医療機関での診断・治療や心理支援の代替を意味するものではありません。
まとめ|マインドフルネスは「雑念をなくす練習」ではない
マインドフルネスは、頭を空っぽにしたり、嫌な感情をなくしたりすることを目的とするものではありません。
大切なのは、
- 今起きていることに注意を向ける
- 注意が逸れたことに気づく
- 生じた考えや感情をすぐに良い・悪いと決めつけすぎない
- 必要であれば注意を今の経験へ戻す
という過程です。
研究では、不安、抑うつ、痛みなどについて一定の効果が報告されていますが、対象や比較条件によって結果は異なります。また、短時間で必ず効果が出る方法でも、誰にでも合う方法でもありません。
そして、「今日はできなかった」ときも、それ自体が情報になります。
どんな時間帯ならやりやすかったか。どの注意対象なら負担が少なかったか。疲労や不安が強い日は何が必要だったか。
マインドフルネスを新しい自己評価の基準にするのではなく、自分の状態に気づき、自分に合う条件を探すための一つの方法として使うことが重要です。
参考文献・出典
- Bishop, S. R., Lau, M., Shapiro, S., et al. (2004). Mindfulness: A Proposed Operational Definition. Clinical Psychology: Science and Practice, 11(3), 230–241. https://doi.org/10.1093/clipsy.bph077
- Goyal, M., Singh, S., Sibinga, E. M. S., et al. (2014). Meditation programs for psychological stress and well-being: A systematic review and meta-analysis. JAMA Internal Medicine, 174(3), 357–368. https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2013.13018
- Goldberg, S. B., Tucker, R. P., Greene, P. A., et al. (2018). Mindfulness-based interventions for psychiatric disorders: A systematic review and meta-analysis. Clinical Psychology Review, 59, 52–60. https://doi.org/10.1016/j.cpr.2017.10.011
- Schumer, M. C., Lindsay, E. K., & Creswell, J. D. (2018). Brief mindfulness training for negative affectivity: A systematic review and meta-analysis. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 86(7), 569–583. https://doi.org/10.1037/ccp0000324
- Hölzel, B. K., Lazar, S. W., Gard, T., et al. (2011). How Does Mindfulness Meditation Work? Proposing Mechanisms of Action From a Conceptual and Neural Perspective. Perspectives on Psychological Science, 6(6), 537–559. https://doi.org/10.1177/1745691611419671
- Farias, M., Maraldi, E., Wallenkampf, K. C., & Lucchetti, G. (2020). Adverse events in meditation practices and meditation-based therapies: A systematic review. Acta Psychiatrica Scandinavica, 142(5), 374–393. https://doi.org/10.1111/acps.13225
- National Center for Complementary and Integrative Health (NCCIH). Meditation and Mindfulness: Effectiveness and Safety. NCCIH公式ページ
- Awarefy「分析」タブに反映される情報.https://www.awarefy.com/app/help/PckcDeWg


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