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ストレスがたまったとき、「運動した方がいい」「気分転換しよう」「考えすぎない方がいい」など、さまざまな対処法を目にします。
どれも選択肢にはなりますが、すべての人・すべての状況に同じ方法が合うわけではありません。
たとえば、仕事量そのものが多すぎるときには、休息だけで問題が解決しないことがあります。一方、疲れ切っているときに「問題を整理して解決しよう」とさらに頭を使うことが負担になる場合もあります。
ストレスへの対処では、「何が一番よい方法か」を探すよりも、今どこに負荷があり、どこなら変えられそうかを整理するところから始めると考えやすくなります。
「ストレス」と「ストレッサー」を分けて考える
日常では、嫌な出来事も、そのとき感じるつらさもまとめて「ストレス」と呼ぶことがあります。
心理・健康領域では、反応を引き起こす外部からの刺激や状況をストレッサー、それによって生じる心理・身体・行動面の変化をストレス反応として区別することがあります。
厚生労働省「こころの耳」では、人間関係の葛藤、責任、将来への不安なども心理社会的ストレッサーとして挙げ、ストレス反応には心理面だけでなく、生理的・行動的な反応も含まれると説明しています。
この区別が役立つのは、どこへ対処するのかを考えやすくなるからです。
- 仕事量が明らかに多い → 量・締切・分担など環境側を調整する
- 人間関係の問題が続く → 話し合い、距離、相談などを検討する
- 問題をすぐ変えられない → 感情・注意・身体への対処を考える
- 疲労や睡眠不足が強い → まず休息や生活条件を整える
- 一人では抱えきれない → 周囲や専門家へ相談する
「心の持ち方」だけを変えようとしないことがポイントです。
心理学でいう「コーピング」とは
ストレスに対して行うさまざまな対処をコーピングと呼びます。
厚生労働省は、ストレスそのものに働きかける方法、周囲の協力を得て解決する方法、不安や怒りなどを誰かに話す方法など、複数のコーピングを示しています。また、自分だけでは対応しきれない場合には、周囲や専門家の力を利用することも重要だとしています。
ここで注意したいのは、「問題を解決する対処=良い」「気分を整える対処=逃げ」ではないということです。
自分ではすぐ変えられない状況で、いったん休む、気持ちを整える、誰かに話すことには意味があります。逆に、変更可能な問題があるのに気晴らしだけを続けても、ストレッサー自体は残るかもしれません。
特定の対処法を常に「良い・悪い」と固定するのではなく、状況との適合やcoping flexibilityを見る研究もあります。2014年のメタ解析では、coping flexibilityと心理的適応の間に小〜中程度の正の関連が報告されましたが、coping flexibilityの定義によって関連の大きさは異なっていました。
参考:Cheng et al. (2014), Psychological Bulletin
つまり、柔軟であれば必ずうまくいくということではなく、今の状況に何が合うかを考える視点として捉えるのがよいでしょう。
ストレスへの対処を7つの入口から考える
対処法をランキングにするよりも、今の負荷に合いそうな入口を探す方が実際には使いやすくなります。
1.休息から始める
疲労や睡眠不足が強い日は、何か新しいセルフケアを追加すること自体が負担になることがあります。
厚生労働省も、その日の気分や体調に合わせてセルフケアを選ぶことを案内しています。
休むことも一つの対処です。「何もしなかった」と評価するのではなく、今の余力に対して負荷を下げる必要があったのかを見ることができます。
2.身体から整える
軽い運動や呼吸など、身体側から緊張を整える方法もあります。
厚生労働省は、散歩などを含む身体活動や腹式呼吸をセルフケアの例として紹介しています。一方で、体調が悪いときまで無理に実施する必要はありません。
身体から始めることを唯一の正解とせず、言葉で考える余力が少ないときに利用できる入口の一つとして考えます。
3.環境を変える
ストレスへの対処というと、自分自身を変える方法に目が向きがちです。
しかし、通知を減らす、作業量を調整する、場所を変える、頼める仕事を頼むなど、環境側を調整する方が直接的な場合もあります。
本人の努力だけに解決を求めないことも大切です。
4.問題を小さく整理する
変更できる問題であれば、「全部解決する」ではなく、今変えられる部分はどこかを探します。
たとえば「仕事がつらい」という大きな問題も、締切、作業量、優先順位、役割、人間関係などに分けると、働きかけられる場所が見つかることがあります。
5.頭の中から一度外へ出す
頭の中だけで考え続けていると、同じ考えを繰り返してしまうことがあります。
厚生労働省は、今の気持ちを書いてみることをセルフケアの一つとして紹介し、書くことで悩みと距離を取り、別の選択肢に気づくことがあると説明しています。
ここで大事なのは、きれいな日記を書くことではありません。「何があったか」「どう感じたか」「今何が負担か」を短く残すだけでも構いません。
6.一時的に注意を別へ向ける
散歩、音楽、趣味、人と過ごすなど、問題から一時的に距離を取ることもあります。
ただし「考えないようにすれば解決する」という意味ではありません。休息や気分転換によって余力を戻したあとに、必要なら問題へ戻るという使い方もできます。
7.誰かの力を借りる
ストレス対処はセルフケアだけではありません。
自分では変えられない条件や、一人で扱うには大きすぎる問題では、家族、友人、職場、学校、医療・心理など周囲へ働きかけること自体が対処になります。
「できたか」より、試した後を見る
ストレス対処では、「運動した」「日記を書いた」「休んだ」という実行の有無だけを見る必要はありません。
むしろ、その方法を試したあと、どうだったかを確認する方が次につながります。
- 少し余裕が戻ったか
- 逆に疲れたか
- 問題そのものに変化があったか
- 続けられそうか
- 別の方法や支援が必要そうか
同じ「散歩」でも、ある日はちょうどよく、別の日には外へ出ること自体が重いことがあります。
Ig Knowledgeでは、このような結果を「成功/失敗」と二分するより、今の自分に合っていた条件を学ぶための情報として扱います。
セルフケアだけで抱え込まない
セルフケアには役立つ場面がありますが、セルフケアで全部解決する必要はありません。
厚生労働省は、眠れない状態が続く、気持ちの不安定さが数週間続く、何もする気になれない、すぐ疲れるといった状態では、一人で頑張り続けず専門家へ相談するよう案内しています。
WHOも、ストレスへの対処が難しい場合には、医療者や信頼できる人へ支援を求めることを勧めています。
セルフケアと人的支援は二者択一ではありません。自分だけで抱え込まず、必要に応じて支援を増やしていくことも対処の一部です。
まとめ
ストレスへの対処には一つの正解があるわけではありません。
ストレッサーそのものを変える必要がある場合もあれば、身体や感情を整える方が先のこともあります。誰かに助けを求めることが必要な場合もあります。
今、何が負荷になっているか。
どこなら変えられそうか。
今の余力で何を試せそうか。
試したあと、どうだったか。
「一番よいストレス解消法」を探し続けるより、自分の状態と状況に合う対処を選び直せることの方が、長い目では役に立ちます。

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