コーピングとは?ストレス対処の種類・具体例と「自分に合う方法」の選び方

コーピングでストレスと上手に付き合い、こころを整える心理学記事のアイキャッチ画像 心理学基礎

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「ストレスにはコーピングが大切」と聞いても、「結局、何をすればいいの?」と思うかもしれません。

コーピングとは、ストレスフルな状況に対して行う認知的・行動的な対処を指します。

代表的には、問題そのものへ働きかける問題焦点型コーピングと、感情やストレス反応へ働きかける情動焦点型コーピングという整理が知られています。厚生労働省「こころの耳」でも、この2つが代表的な対処方法として紹介されています。

参考:こころの耳「ストレスコーピング」

ただし、問題焦点型だから良い、情動焦点型だから一時しのぎという意味ではありません。

大切なのは、今の状況で何に働きかけようとしているのか、そして実際にその方法を試してどうだったのかを見ることです。

コーピングは「ストレス発散」だけではない

日常では、コーピングという言葉が「気分転換」や「ストレス発散」とほぼ同じ意味で使われることがあります。

しかし心理学では、もう少し広く扱います。

LazarusとFolkmanのストレス理論では、ストレスは出来事そのものだけで決まるのではなく、その出来事を本人がどのように評価し、自分にはどんな対処ができそうかを考え、実際に対処するという動的な過程として捉えられています。

FolkmanとLazarusの研究でも、ストレスフルな出来事は一回の静的なイベントではなく、時間とともに評価・感情・コーピングが変化するprocessとして扱われています。大学生を試験前、結果待ち、結果判明後の3時点で追跡した研究では、使われるコーピングも段階に応じて変化し、問題焦点型か情動焦点型のどちらか一方だけではなく、複数の対処が組み合わされていました。

参考:Folkman & Lazarus (1985)

つまり、

状況を見る
→ 自分にとって何が問題か考える
→ 対処する
→ その結果を見る
→ 必要なら対処を変える

という流れです。状況が変われば、使うコーピングを選び直しても構いません。

代表的なコーピングの種類

代表的な整理 主に働きかける対象
問題焦点型 ストレッサーや問題 情報収集、相談、計画、環境調整
情動焦点型 生じている感情や反応 気持ちを話す、休息、リラクセーション、捉え直し

この2分類は理解しやすい代表的な整理です。実際のコーピング研究では、ソーシャルサポート、受容、再評価、回避など、より細かな方略を区別する尺度もあります。

2024年のscoping reviewでは、成人を対象としたコーピング尺度だけでも複数の測定法が確認され、problem solving、social support、reappraisal、acceptance、avoidanceなど多数のstrategyが扱われています。

参考:copingとemotion regulationの測定に関する2024年scoping review

そのため、「これは問題焦点型なのか、情動焦点型なのか」を厳密に分類すること自体が目的ではありません。むしろ、この対処で何を変えようとしているのかを見る方が実用的です。

問題焦点型コーピングとは

問題焦点型コーピングは、ストレッサーや問題そのものへ働きかけようとする対処です。

  • 情報を調べる
  • 問題を小さく分ける
  • 優先順位を決める
  • 誰かへ具体的な協力を依頼する
  • 仕事量や締切について相談する
  • 行動計画を立てる

たとえば「仕事が多すぎてつらい」という場合、「もっと気合いを入れる」だけではなく、どの仕事が重いのか、期限は変更できるか、分担できるかと整理することが問題焦点型の対処につながります。

情動焦点型コーピングとは

情動焦点型コーピングは、ストレスフルな状況によって生じた感情や苦痛などへ働きかける対処です。

  • 誰かに気持ちを話す
  • 一度休む
  • 深呼吸やリラクセーションを行う
  • 気分転換する
  • 出来事の捉え方を変えてみる
  • いったん別の活動へ注意を向ける

ここで注意したいのは、感情を整える=問題から逃げるではないことです。

疲れ切った状態で問題解決を続けようとしても、判断したり行動したりする余力そのものが残っていないことがあります。その場合は、まず休んだり、気持ちを誰かに話したりすることが次の対処につながることもあります。

問題焦点型と情動焦点型、どちらが良い?

一概には決められません。

たとえば仕事量を調整できる状況なら、具体的に上司へ相談することが役立つかもしれません。一方、すでに結果が決まっていて今は変更できない出来事について、何度も解決策を考え続けても状況は変わらないことがあります。

しかし、ここも単純に、変えられるなら問題焦点型、変えられないなら情動焦点型と決めればよいわけではありません。

Folkmanは、状況を自分でコントロールできると考えることが、必ずしもストレス軽減や良好な結果につながるわけではないことを指摘しています。

参考:Folkman (1984)

「変えられるかどうか」だけでなく、何を変えようとしているのか、今どの程度の余力があるのか、その方法を実行できる条件があるのかも関わります。

「回避する」のは悪いコーピング?

「嫌なことから逃げるのはよくない」と思うかもしれません。

ただ、ここも少し分けて考える必要があります。

休息、注意の切替、距離を置くことを、すべて一括して「回避」と呼ぶ必要はありません。一方で、avoidance自体はコーピングを測定する際に扱われる代表的なstrategyの一つです。

参考:2024年scoping review

また古典的なメタ解析では、avoidanceとattentionの適応との関係が短期と長期で異なる可能性も報告されています。

参考:Suls & Fletcher (1985)

したがって、「回避」という名前だけで適応的/不適応的と決めるより、その行動が何を目的とし、どの程度続き、必要な対応を妨げているかを見る必要があります。

また、心理学研究で「coping」として分類されていることと、その行動が安全・適応的で推奨されることは同じではありません。

「一番良いコーピング」はある?

ここまで読むと、「結局、何をすれば一番いいの?」と思うかもしれません。

その問いに関連するのがcoping flexibilityです。

Chengらの2014年メタ解析では、329の効果量・58,946人を統合した結果、coping flexibilityと心理的適応の間に、小〜中程度の正の関連が示されました(r=.23)。

参考:Cheng et al. (2014), Psychological Bulletin

ただし、flexibilityには「レパートリーの広さ」「状況との適合」「変化に対応できるという知覚」など複数の定義があり、関連の大きさも定義によって異なります。

つまり、コーピングを何種類も知っているだけでよいという話ではありません。

状況に合わせて対処を選び直せることと心理的適応には関連が報告されていますが、これは「柔軟に対処すれば必ず心理状態が改善する」という因果関係を示したものではありません。

具体例1|仕事量が多すぎる

仕事量が多く、毎日残業して疲れているとします。

問題へ働きかける

  • 優先順位を整理する
  • 締切を相談する
  • 業務を分担する

同時に、自分の反応へ働きかける

  • 休息を取る
  • 家では仕事から距離を置く
  • 誰かに気持ちを話す

こともできます。どちらか一方だけを選ぶ必要はありません。

具体例2|試験結果を待っている

試験はすでに終わっていて、結果発表を待っている。今から試験結果そのものを変えることはできません。

しかし、

  • 結果について考える時間を区切る
  • 日常の活動を続ける
  • 不安を誰かに話す
  • 次に必要なことだけ準備する

など、今の時間への対処はできます。「問題を解決できない=何もできない」ではありません。

具体例3|人間関係でストレスを感じる

人間関係では、「相手を変える」か「自分が我慢する」という二択になりやすいことがあります。

しかし実際には、

  • 自分の考えを伝える
  • 接触する頻度を調整する
  • 第三者へ相談する
  • 相手が変わらない前提で距離を考える
  • 自分の感情を整理する

など複数の働きかけ方があります。コーピングを考えることは、選択肢を増やすことでもあります。

自分のコーピングを増やす方法

最初から「自分に合う完璧なストレス対処法リスト」を作る必要はありません。

まずは、

何があった?
→ そのとき自分に何が起きた?
→ 何をした?
→ その後どうだった?
→ 次も使う?変える?

の5つだけ確認します。

たとえば、

仕事で指摘された
→ 帰宅後も考え続けた
→ 散歩した
→ 少し考える時間が減った
→ 次も余力がある日は試してみる

という程度で構いません。

別の日には同じ散歩でも、「疲れが強くて、むしろしんどかった」かもしれません。

それも失敗ではありません。「今日はその方法がFitしにくかった」という情報が増えたと捉えることができます。

Ig Knowledgeでは、「対処法を実行できたか」だけでなく、その方法を試した結果、どの条件なら使いやすかったかを見ることを重視しています。これはコーピング理論そのものではなく、Ig Knowledgeが実践へ翻訳するときに大切にしている見方です。

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自分のコーピングを増やすときは、頭の中だけで覚えておくより、使えそうな方法をリストにしておく方法もあります。

Awarefyには、ストレスへの対処方法を登録しておくコーピングリストがあり、自分用に編集したり、新しい対処を追加したりできます。公式案内では、あらかじめ対処方法をリスト化し、必要なときに選択できる機能として説明されています。

参考:Awarefy公式「コーピングリスト」

Awarefyは、セルフケアや記録を補助する選択肢の一つです。医療機関での診断・治療や心理支援の代替を意味するものではありません。

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コーピングと感情調整は違う?

完全に別のものとして切り分けるのも難しいところです。

coping研究はストレスへの対処から発展し、emotion regulation研究は感情をどのように調整するかという枠組みから発展してきました。

しかし2024年のscoping reviewでは、両者の測定内容には大きな重複があり、reappraisal、problem solving、acceptance、avoidance、suppressionなどが両方の領域で扱われています。

参考:2024年scoping review

そのため、「これはコーピング、これは感情調整」と完全に二分するよりも、何をどのように調整しようとしているのかを見る方が理解しやすい場合があります。

コーピングとレジリエンスは違う?

コーピングは、ストレスに対して行う具体的な対処過程です。

一方、レジリエンスは、逆境や困難の中での適応を扱う、より広い概念です。

レジリエンスとコーピングの違いを詳しく見る

ストレス対処全体から整理したい場合

「コーピングの種類より、まず今のストレスにどう対処すればよいか知りたい」という場合は、先にこちらの記事から読むと整理しやすくなります。

ストレス対処法を心理学から解説|自分に合うストレス解消・セルフケアの選び方

既存のストレス記事では、休息、身体、環境、問題解決、記録、注意の切替、人的支援という複数の入口から整理しています。

セルフケアだけで対応しなくてもよい

コーピングをたくさん持つことは、自分だけで何とかしなければいけないという意味ではありません。

相談することや、環境を調整してもらうことも対処の一部です。

ストレス反応が強く続いている、睡眠や食事、仕事・学校など日常生活への影響が大きい、自分だけでは整理しにくいと感じる場合には、医療機関や心理職など専門家へ相談することも選択肢になります。

参考:こころの耳

まとめ

コーピングとは、ストレスフルな状況へ対処するための認知的・行動的な取り組みです。

代表的には問題焦点型と情動焦点型という整理がありますが、コーピングはその2種類だけではありません。

そして、問題焦点型なら良い、情動焦点型なら悪い、回避なら悪いと名前だけで判断することもできません。

大切なのは、

今、何が負荷になっているのか
何に働きかけようとしているのか
今の自分に実行できそうか
試したあと、どうだったか

を見ることです。

一度で正解を見つけるより、選択肢を持ち、状況に合わせて試し、必要なら選び直す。コーピングは、そのための考え方として使うことができます。

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