公認心理師資格試験 過去問解説 第6回 午前 問23|Meichenbaumのストレス免疫訓練

公認心理師過去問 第6回23 公認心理師試験

第6回公認心理師試験・午前問23は、D. Meichenbaumが提唱した認知行動療法を問う問題です。正答は⑤ ストレス免疫訓練〈Stress Inoculation Training:SIT〉です。Meichenbaumと自己教示訓練を結びつけられるか、さらに他の選択肢の提唱者や理論背景を区別できるかがポイントです。

実際の問題文

問23 D. Meichenbaumが提唱した認知行動療法であり、自己教示訓練を主要な技法とするものとして、最も適切なものを1つ選べ。

① 自律訓練法
② モデリング
③ 自己調整学習
④ 漸進的筋弛緩法
⑤ ストレス免疫訓練

問題文の読み解き

この問題は、人物名と技法名を結びつける基本問題です。キーワードはD. Meichenbaum自己教示訓練です。この2つからストレス免疫訓練を選べれば正答できます。

ただし、用語だけの暗記では、①自律訓練法や④漸進的筋弛緩法のようなストレス対処技法と混同しやすくなります。ストレス免疫訓練がどのような考え方で構成され、自己教示がその中で何をしているのかまで理解すると、応用問題にも対応しやすくなります。

正答は⑤ ストレス免疫訓練

ストレス免疫訓練〈SIT〉は、Meichenbaumらが発展させた認知行動的アプローチです。ストレッサーに対して人がどのように意味づけ、どのような自己対話を行い、どのような対処行動を選ぶかに注目し、複数の認知的・行動的コーピングスキルを身につけていきます。

自己教示訓練は重要な技法の一つですが、SIT全体を「前向きな言葉を自分へ言う訓練」とだけ理解するのは不十分です。問題を理解し、必要な対処スキルを獲得し、実際のストレス場面へ適用する一連のプロセスとして捉える必要があります。

ストレス免疫訓練とは

「免疫」という言葉は、ストレスを完全になくすという意味ではありません。比較的管理可能な形でストレス対処を学び、より困難な状況に直面したときにも使えるスキルを準備する、という比喩です。

MeichenbaumとDeffenbacherの解説では、SITは重なり合う3段階、すなわち概念化、技能獲得・リハーサル、適用・フォロースルーからなると整理されています。各段階は厳密に分離されるというより、必要に応じて行き来しながら進みます。

第1段階:概念化〈Conceptualization〉

最初の段階では、クライエントがどのような状況をストレスとして経験しているか、どのような考え・感情・身体反応・行動が生じるかを整理します。支援者が一方的に「考え方を変えなさい」と教えるのではなく、協働的に問題の捉え方を明確化します。

この段階では、ストレス反応そのものを敵視するより、反応がどのような条件で強まり、どのような自己対話が対処を難しくしているのかを理解することが重要です。

第2段階:技能獲得とリハーサル

自己教示

自己教示は、自分に対する言葉かけを用いて注意や行動を調整する方法です。たとえば「まず状況を整理する」「一度に全部解決しなくてよい」「次にできる行動を一つ選ぶ」といった、課題遂行を助ける内的言語を練習します。

重要なのは、根拠なく「絶対大丈夫」と言い聞かせることではありません。ストレス場面で実際に役立つ、現実的で具体的な対処的自己対話を作ることです。

リラクセーションや問題解決

SITでは、必要に応じて呼吸法、筋弛緩、注意のコントロール、問題解決、認知的再評価など複数の技法を組み合わせます。したがって、一つの単独技法ではなく、対処スキルの「パッケージ」と考えると理解しやすくなります。

リハーサル

学んだスキルは、頭で理解するだけでなく、イメージやロールプレイなどを通して練習します。実際のストレス状況に近い条件で反復することで、必要な場面で使える確率を高めます。

第3段階:適用とフォロースルー

最後の段階では、獲得したスキルを実生活のストレス場面へ適用します。比較的対処しやすい状況から始め、徐々により難しい場面へ広げることがあります。うまくいかなかった場合も失敗として終わらせず、何が不足していたかを再検討して技能獲得へ戻ります。

さらに、将来の再発や新しいストレス状況にも対応できるよう、セルフモニタリングや再練習の方法を確認します。

選択肢ごとの検討

① 自律訓練法

自律訓練法はJ. H. Schultzによって体系化された方法です。身体感覚への受動的注意集中と、重感・温感などの公式を用いた段階的な練習が特徴です。ストレス対処に利用される点ではSITと近く見えますが、Meichenbaumの自己教示訓練を中核とする方法ではありません。

② モデリング

モデリングは、他者の行動とその結果を観察し、新たな行動を学習する方法です。A. Banduraの社会的学習理論・社会的認知理論との関連が重要です。MeichenbaumのSITとは異なります。

③ 自己調整学習

自己調整学習は、学習者が目標を設定し、学習方略を選び、進捗をモニタリングし、結果に応じて学習方法を調整する考え方です。教育心理学で重要な概念ですが、Meichenbaumが提唱したストレス対処の認知行動療法ではありません。

④ 漸進的筋弛緩法

漸進的筋弛緩法はE. Jacobsonと関連づけて覚える方法です。筋肉を意図的に緊張させた後に弛緩させ、緊張と弛緩の感覚差を学ぶことで身体的緊張を低減します。SITの中で弛緩技法が利用されることはありますが、漸進的筋弛緩法そのものがMeichenbaumの方法というわけではありません。

⑤ ストレス免疫訓練

正答です。Meichenbaumが提唱した認知行動的介入であり、自己教示訓練をはじめとした複数の対処技能を獲得し、ストレス場面へ適用していきます。

自己教示訓練をどう理解するか

自己教示訓練では、外から与えられる指示を徐々に自分自身の内的言語へ移していく発想が重要です。自分の行動を言語でガイドし、衝動的に反応するのではなく、課題の手順を明確化して実行しやすくします。

ストレス場面では、「これは危険で対処できない」という自動的な自己対話が不安や回避を強めることがあります。そこで、現実的で対処志向の自己教示を準備し、行動を支える形へ変えていきます。

認知行動療法との関係

SITは認知行動療法の一つであり、認知面だけでなく行動面・身体面の技法も組み合わせます。認知行動療法について整理したい場合は、第3回問138の解説も参考になります。

また、誤答選択肢①の自律訓練法について比較したい場合には、第5回問18の解説も役立ちます。ただし、本問の中心概念はSITなので、内部リンクも中心概念の理解を妨げない範囲で使うのが適切です。

試験での見分け方

人物名と技法をセットで整理すると効率的です。Meichenbaumなら自己教示訓練・ストレス免疫訓練、Schultzなら自律訓練法、Jacobsonなら漸進的筋弛緩法、Banduraならモデリングという対応を押さえます。

ただし、複数の技法が一つの治療パッケージの中で併用される点には注意が必要です。「SITの中でリラクセーションを使うことがある」ことと、「リラクセーション法そのものがSITである」ことは別です。試験では提唱者と中心概念を区別して選択します。

実践での注意

SITを実践で用いる場合、クライエントのストレス反応や認知を評価せずに、自己教示だけを押しつけるのは適切ではありません。どの場面で、どのような意味づけをし、どの反応が対処を難しくしているかを共有したうえで、その人に合ったスキルを選びます。

また、強いトラウマ反応、自傷他害リスク、重度の抑うつや精神病症状などがある場合は、一般的なストレスマネジメントだけで対応せず、適切な医療・専門支援へつなぐ必要があります。

SITで用いられる技能は「組み合わせ」で理解する

ストレス免疫訓練では、すべての人に同じ技法を同じ順番で行うわけではありません。問題となっているストレス反応を評価し、その人に必要な技能を選びます。自己教示、問題解決、認知的再評価、注意のコントロール、リラクセーションなどを組み合わせ、実際の場面で使える形へ練習します。

この点は試験で重要です。④の漸進的筋弛緩法のようなリラクセーション技法がSITの一部として利用されることはあっても、「SIT=筋弛緩法」ではありません。SITは複数の技能を統合し、ストレス場面への準備と適用まで含む枠組みです。

自己教示はどのように行動を支えるのか

自己教示の役割は、行動の前・最中・後に自分へ与える言語的な手がかりを整えることです。行動前には「何が起きそうか」「何をすればよいか」を準備し、行動中には注意を課題へ戻し、行動後には結果を評価して次の対処へつなげます。

例えば、人前で話す場面で「失敗したら終わりだ」と考えるだけでは不安が高まりやすくなります。そこで「まず最初の一文に集中する」「緊張しても話すことはできる」「呼吸を整えて次の項目へ進む」といった、具体的で実行可能な自己教示を用います。目的は不安をゼロにすることではなく、不安があっても必要な対処行動を選べるようにすることです。

適用段階では小さな成功と修正を重ねる

技能を学んでも、実生活で使えなければ十分ではありません。そこでSITでは、実際のストレス状況への適用が重要になります。最初から最難関の場面へ挑むのではなく、対処可能な状況で試し、どの技能が使えたか、どこで難しくなったかを確認します。

うまくいかなかったときには「訓練が失敗した」と結論づけるのではなく、概念化や技能獲得の段階へ戻って修正します。この循環的な進め方を理解すると、SITが単なる知識教授ではなく、実践的なコーピング訓練であることが分かります。

まとめ

第6回午前問23の正答は⑤ ストレス免疫訓練です。MeichenbaumのSITは、自己教示訓練を含む認知行動的コーピング技法を組み合わせ、概念化、技能獲得・リハーサル、適用・フォロースルーという流れで対処能力を高めます。人物名だけでなく、各技法が何を目的とするかまで整理すると、類似選択肢を安定して見分けられます。

参考文献・資料

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