公認理師資格試験 過去問解説 問18 自律訓練法について
- 2023.02.17
- 公認心理師(第5回)
- 心理療法, 第5回公認心理師試験
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第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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問18 自分自身で一定の手順に従い、段階的に練習を進めることによって、心身の機能を調整する方法として、最も適切なものを 1 つ選べ。
① 森田療法
② 自律訓練法
③ シェイピング
④ スモールステップ
⑤ セルフモニタリング
出典:第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
選択肢の解説
①森田療法
森田療法とは、森田正馬によって創案された心理療法です。
森田は、ヒポコンドリー性基調(神経質性格)を基盤として、精神交互作用(身心の不調に注意を集中することによってさらに主観的苦悩が増大する)が発展し、その結果として神経症となる、という。
出典:心理学辞典|有斐閣
森田正馬は青年時代に自身も神経衰弱の症状に苦しんだ経験から、このような精神療法を開発したといいます。
森田療法の治療目的は、上記の「精神交互作用(心身の不調に注意を向けることで、さらに主観的な苦痛が大きくなる)」を生み出している「とらわれ」から脱して、「生の欲望(自己実現)」に向かうことです。
治療は以下のような手順で進められます。
- 臥褥期:最初の約1週間。一切の活動が禁じられ、不安の直面化、活動意欲の活性化を図る。
- 軽作業期:4日〜1週間。起床して簡単な作業を開始するが、激しい運動は禁じられる。
- 重作業期:1〜2ヵ月。他の患者さんとの共同作業など。
- 生活訓練期:1週間〜1ヵ月。社会復帰を目的とした活動を行う。
森田療法にはさまざまな専門的な工夫がありますが、全体的には、「不安などの症状を抱えつつも、ありのままに受け止めて、日常生活をおこなっていく」ことを目指します。
森田療法では、自分で治療のスケジュールを組んで段階的に練習を進めていく心理療法ではないため、本問題の回答としては不適切といえます。
森田療法について詳細に知りたい方は以下の書籍がおすすめです。
②自律訓練法
自律訓練法 autogenic training は、Vogt, O フォクト の臨床的催眠研究を基盤として、 Schultz シュルツ によって体系化されたものです。
日本では1960年代に、神経症や心身症の治療として用いられるようになっています。
自律訓練法は練習を積み重ねることによって、心理的には身体感覚への特有の受動的注意集中を通して、心身の変化や外界の諸現象に対する受動的態度(「あるがままの態度」ともいえる)を作っていく。そのことにより自我の防衛が変化し、情動が解放されやすくなる。いわゆる一時的、部分的に退行した状態(治療的退行状態)へ移行して、自我の休息と機能回復が可能となる。
出典:心理学辞典|有斐閣
つまり、身体感覚への「受動的集中」によって、心身面での構えの変化と生理学的な変化をもたらす方法といえます。
自律訓練法には、筋緊張の弛緩を目的とした「標準練習」などのスケジュールが定められており、その手順に従って段階的に練習を進めていきます。
以上のことから、問題文「自分自身で一定の手順に従い、段階的に練習を進めることによって、心身の機能を調整する方法」の回答として、選択肢②「自律訓練法」は正しいものとなります。
③シェイピング ④スモールステップ
シェイピング shaping とは、
複雑で新しい行動を獲得させるために、標的行動をスモール・ステップにわけ、達成が容易なものから順に形成していく方法である。オペラント技法の一つであり、スキナーによって提唱されたプログラム学習の基礎をなす。
出典:心理学辞典|有斐閣
スモール・ステップ small stepは、
難しい内容を学習させる場合には、いきなり難しい内容に入らず、学習内容を小さな単位に分割し、易しい内容から出発して、少しずつ小刻みに難しくしていくべきであるとする考え方。
出典:心理学辞典|有斐閣
とあります。
つまり、学習する内容を細かく分割して簡単なものから習得を目指す考え方をスモールステップといい、実際に行動を獲得していく一連の過程をシェイピングということになります。
以上のことから、選択肢③④ともに、本問題の回答としては不適切となりますね。
⑤セルフモニタリング
セルフモニタリング self-monitoring は、
人が自分の自己呈示や表出行動、また非言語的な感情表出をモニター(観察や統制)する程度、あるいはモニターしうる程度
とSnyder スナイダー が定義しています。
セルフモニタリングは自分自身に目を向けて観察する程度を意味しており、今日の認知行動療法などの心理療法の基礎となっています。
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