カウンセリングと心理療法のちがいについて:医療機関で行われるカウンセリングを例にして解説

カウンセリングと心理療法のちがいについて:医療機関で行われるカウンセリングを例にして解説
 

カウンセリングを受けたい!って臨床心理士さんのいる医療機関に受診してみたけど、「うちではカウンセリングはやってないよ・・・」って言われてしまった。

 
 

ようやくカウンセリングを受けられることになったけど、何か思っていたカウンセリングと違ってがっかり・・・

 
 

残念なことに、医療機関(おもに精神科)を受診した方の中には、そういう体験をしたり、感想をもつ人は意外と多いみたいだね。

この事態を避けるためには『カウンセリング』と『心理療法』の違いや医療機関で行われるカウンセリングの特色について知っておく必要があるんだ。

 

 

カウンセリングを受けたいと思って医療機関を受診した人には受け入れがたいことかもしれませんが、ここで挙げた例は、医療機関(おもに精神科)では比較的よくあることなのです。

 

この記事を読んでわかること

  • 広義の『カウンセリング』と『心理療法』の違い
  • 医療機関で行われるカウンセリングについて

 

記事のまとめ
  • カウンセリング」と「心理療法」をわけて考えている機関は多く、医療機関で行われるのは医師の治療的意図に基づく「心理療法」の場合が多い。
  • そのため「カウンセリング」を受けたいというニーズがあっても、希望するようなカウンセリングが受けられないことがある。

 

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カウンセリングとは幅広い相談援助を意味する

病院で白衣を着ている人のイラスト

カウンセリング(counseling)の定義はさまざまで、それぞれの立場で異なっています。

ここでは『心理学辞典, 有斐閣, 1991』から引用しながら解説していきます。

 

まず、カウンセリングの項目に記載されている内容を見てみましょう。

その方法・目的は単純な忠告という極から長期の心理学的処置という他の極までひろがる。

相談の機能は、来談者が自分のありのままの姿を理解し、受容し、この自己覚知に照らし、自己の可能性の実現を目指す。この際必要ならば、彼らの態度、見方や行動を改めたり修正したりすることも行われる。(McGowan, J. F.ほか) [pp103]

この部分を読むと、カウンセリングは、クライエント(client)が抱える悩みや問題に対する単純なアドバイスを含む相談から 専門的な知識・技術を用いた相談援助まで、広い範囲での相談援助を指し示す用語であるとわかります。

クライエント(client):カウンセリングを受ける人

 

また、クライエントが自分自身を受け入れて自己実現を目指すことが目的であり、単に話を聞くのみではなく、必要であれば考え方や行動の修正を図ることも行われます。

 

教育的・開発な機能をもつカウンセリングと治療的な機能をもつ心理療法

次は、カウンセリングと心理療法に関する記載を見てみましょう。

広義にはパーソナリティの成長と統一に焦点が置かれる。この場合、治療とあわせて開発、予防もカウンセリングの役割とみなす。

狭義ではパーソナリティの再構成への援助に焦点がおかれる。すなわち治療がその役割となる。したがってこれは、心理療法あるいは精神療法と事実上同義になる。

 

カウンセリングでは教育、開発的機能を、心理療法では治療的機能が強調される。 

 

この記載を読むとわかるように、カウンセリングは、焦点を当てるポイントの違いによって

1. 治療的な心理療法

2. 教育的・開発的なカウンセリング

と大きく2つにわけて考えることができます。

 

本質的に大きな違いがあるというわけではないですが、この『心理療法』と『カウンセリング』の機能の違いが、

具体的なアドバイスが欲しいのに話を聞いてもらうだけになっている

とにかく話を聞いてほしいのに具体的な教示や訓練が多い

といった「思っていたカウンセリングと違う」という感想に繋がることが多い理由となります。

 

*先に記載したように、カウンセリングと心理療法の定義や違いには多くの見解があります。

 

以下にカウンセリングと心理療法についてわかりやすくまとめられている論文を紹介します。

 

興味のある方は是非ご一読ください。

日本カウンセリング学会資格検討委員会(2016). カウンセリング心理士の資格をめぐってー資格検討委員会報告ー, カウンセリング研究, 49, 108-122. 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cou/49/2/49_108/_pdf/-char/ja

 

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医療機関で行われるカウンセリングは心理療法をさすことが多い

医療機関、特に精神科で行われるカウンセリングは、精神科医の指示のもと治療的な意図をもっておこなわれる心理療法をさす場合が圧倒的に多いです。

 

そのため、医療機関ではクライエントに「カウンセリングを受けたい」というニーズがあっても、

治療的な意図(対象となる症状や問題行動)がはっきりとしていない場合や、他に適している治療方針があると医師が判断する場合はカウンセリングを受けられないことがあります。

 

さらに、カウンセリングを受けても「ただ話を聞いてほしいのに、あまり話を聞いてもらえない」という感想が生じてしまうことにも繋がります。

 

 

じゃあ、教育的・開発的なカウンセリングを受けるためには、医療機関を受診してはダメってこと?

 

 

必ずしもそうだというわけではないんだ。医療機関でのカウンセリングすべてが心理療法というわけではないよ。

 

 

もちろん、各機関や医師・担当カウンセラーの判断によっては、クライエントのパーソナリティの成長を目的とした教育的・開発的な機能をもつカウンセリングが行われる場合もあります。

 

ですが、一般的には、心理療法が行われることが多いのです。

 

ポイント

医療機関でのカウンセリングは、治療的な意図をもつ心理療法である場合が多い 

治療的な意図(対象となる症状や問題行動)がはっきりとしない場合や他に適している治療方針がある場合はカウンセリングが受けられないことがある

心理療法(psychotherapy)とは?

続いては心理療法に関して解説します。こちらも『心理学辞典, 有斐閣, 1991』の精神療法(≒心理療法)の項目から引用します。

「相談」やカウンセリングなどを除外し、あくまでセラピーつまり治療である。

 

治療のめざすところは、治療者との治療契約に基づく対人関係を介して患者の認知、行動、感情、身体感覚に変化を起こさせ、症状や問題行動を消去もしくは軽減することである。 

 

つまり、心理療法とは、カウンセラーとクライエントの相互作用を通して、症状や問題行動をなくす、あるいは軽減させることを目的として専門知識や技術を用いておこなわれる治療的機能が強調されたカウンセリングであるといえます。  

 

代表的な心理療法

心理療法には多くの種類があり、症状ごとに推奨される心理療法があります。

現在では心理療法に関する研究が進んできており、その治療効果が科学的に証明されている心理療法もあります。

  • 精神分析療法

  • 認知行動療法

  • 行動活性化療法

  • 対人関係療法

  • 家族療法

  • 集団精神療法

ここでは代表的な心理療法を抜粋してあげましたが、他にも種類はたくさんあります。

 

心理療法のエビデンスに関して興味のある方は、アメリカ心理学会(American Psychological Association:APA)やイギリス国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence:NICE)を検索してみてください。

 

心理療法のエビデンスに関しての記事はこちら💁🏻

心理学におけるエビデンスに基づく実践について(EBPP):EBM、EBP

 

「心理療法」は医療機関しかできない、、というわけではない

医療機関で行われるカウンセリングは心理療法が多いとまとめてきましたが、心理療法が医療機関でしか受けられないというわけではありません。

 

臨床心理士の有資格者の方の中には、個人でカウンセリングルームを立ち上げている方も沢山おられますし、最近ではオンラインによるカウンセリングも盛んになってきています。

 

ご自身の必要とするカウンセリングについて知ったうえで、各機関に問い合わせたりホームページを確認して、希望するカウンセリングが受けることができる適切な機関へと相談することがおすすめです。

 

「心理療法」は臨床心理士/公認心理師しかできない、、というわけでもない

日本臨床心理士資格認定協会の掲げる臨床心理士に求められる専門行為として、

一定の水準で臨床心理学的にかかわる面接援助技法を適用して、その的確な対応・処置能力を持っていること

があげられています。

 

これは臨床心理士が教育的・開発的なカウンセリングから治療的な心理療法まで広く専門的に学び訓練を受けていることを示しています。

 

しかし、在籍する大学院、個々人の活動領域や興味・関心によって、学び習得していくカウンセリングや心理療法に違いがうまれているのが現状です。

 

また、現状の法制度では、カウンセリング業務を独占する資格はないため、臨床心理士/公認心理師でなくとも、心理療法を学び取得する機会は十分にあります。

 

ポイント

臨床心理士の有資格者がすべての心理療法を実施できるというわけではない

臨床心理士の資格がないから心理療法ができないというわけではない

 

これから臨床心理士指定大学院進学を目指す方は、

①自分の学びたい技法を指導してくれる指導教員がいる大学院を探す

②書籍を読んだり研修に参加して自分でもカウンセリングや心理療法を身につける機会をつくる

 

カウンセリングを受けてみたいという方は、

資格のみを見るのではなく、カウンセラーの所属する学会・経歴や実施可能な心理療法の情報にも目を向けてみる

といいかもしれません。

 

とはいえ、臨床心理士資格をもっているカウンセラーは、専門的な教育を受け厳格な審査を経た上で資格を取得していること有資格者として継続した研修を受講する機会が多いこと有資格者でないと受けられない専門の研修があることから、専門性は高いといえます。

 

カウンセラーの資格に関してはこちら💁🏻。

まとめ

この記事では、『カウンセリング』と『心理療法』の違いについて、医療機関で行なわれるカウンセリングを例にあげて説明してきました。

 

  •  カウンセリングには、大きくわけて①治療的な心理療法と②教育・開発的なカウンセリングの2つがあります。
  • 医療機関(精神科)でのカウンセリングは、心理療法を意味することが多く、精神科医の判断によって治療的な意図をもって行なわれます。
  • 統一の見解があるわけではないので、「カウンセリング」という言葉の意味するところは、各機関によって異なる可能性がありますが、医療機関では『カウンセリング』=『心理療法』を指すことが多く、「カウンセリングを受けたい」というニーズがあっても希望するカウンセリングを受けることができないことがあります。