【神経発達症】感覚過敏と鈍麻の概要について解説!おすすめ書籍も紹介します!
- 2021.02.04
- 臨床心理士 / 公認心理師
- 発達障害
自分以外の感覚を感じたことがないから過敏なのかどうかわからない
これは感覚過敏性のある方がよくおっしゃることです。
場合によっては、周囲に聞こえない音が気になるということで幻聴と勘違いしてしまったり、足音が近づいてくるように聞こえてしまい不安を感じたり。理由がないのに、人が多いところで疲れやすかったり。
感覚過敏性や鈍麻は目に見えず、当事者本人や周囲の人がどちらも気づかないことが多い特性です。
そのため、周囲や自分自身が適切な理解を持てていないと、二次的な障害につながってしまうこともあり得ます。
今回の記事では、そのような感覚過敏性の概要に関してまとめました!!
感覚過敏性と鈍麻の概要
感覚過敏性ってなに?
自閉スペクトラム症含めた発達障害特性として、「非定型な感覚の特徴」があるということは、昔から報告されていることです。
DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)では、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:以下ASD)のB基準である反復的・持続的な行動様式の項目にも含まれるなど、近年注目が集まってきている特性といえます。
特性といっても必ずしも永続的というわけでもなく、年齢やストレスの影響によって強くなったり弱くなったりということがあります。
特に、必要以上に刺激を受け取ってしまうという感覚過敏は、集団行動や社会への適応をうまくいかなくさせる要因につながることが多いです。
感覚過敏には個人差が大きく、いわゆる五感
・聴覚
・視覚
・触覚
・嗅覚
・味覚(口腔内感覚)
に加えて、
・前庭覚(平衡感覚)
・固有受容覚(身体を動かす感覚)
などの敏感さや鈍感さが存在しています。
今回の記事では感覚過敏-鈍麻の具体例は割愛しますが、以下の記事で感覚過敏-鈍麻が基盤にある二次的な問題に関して解説していますので、ぜひご一読ください!!
冒頭でも触れましたが、感覚過敏ー鈍麻の特性は、周囲の理解が得られにくいだけでなく、当事者本人も気づかないことが多いものです。
できるだけ早い段階で気づいて必要な配慮をしていくことが重要となります。
こちらは自閉スペクトラム症当事者であるテンプルグランディン教授の著書となります!当事者の方の感覚を知る書籍としておすすめです。
感覚過敏性は感覚に対する選択的注意の苦手さが影響している
感覚過敏=感覚がひとより優れているってこと?
感覚過敏に関しては個人差があるため、もちろん、ひとより感覚が優れている場合もあります。
しかし、一般的なケースでは、ひとより感覚が優れているというよりも、
①必要以上に感覚情報を処理してしまう、あるいは、必要な感覚情報を処理できない
②高い精度で感覚情報を処理してしまう(小さい変化に反応してしまう)
ことが知られてきています。
生理学的な部分を省いて大まかに理解するのであれば、「感覚過敏=通常より細かい感覚情報にまで反応してしまい、処理する感覚情報に対して選択的な注意を向けることができない状態」となるでしょう。
選択的注意に関してはこちら!
「不注意」とはなにか:臨床場面でも役立つ注意機能の分類と特徴
感覚過敏や鈍麻がある=自閉スペクトラム症というわけではない
感覚過敏があったら自閉スペクトラム症(ASD)なの?
感覚過敏性=自閉スペクトラム症と考えるのは些か早計かもしれませんが、自閉スペクトラム症当事者の方に多いのも事実です。
非定型的な感覚の特徴の問題がASD において認められる頻度は、調査の対象の年齢や診断などによっても異なるが、標準化された感覚の特徴に関する尺度を用いて評価された場合、69~95%と推定される
一方で、ADHDやそのほかの発達障害でも約30%程度この感覚過敏性を有していることがあるとされています。
また、ASDの常同的な行動パターンの強さに聴覚・触覚の過敏性や鈍麻の重症度が関連していることを示す研究も散見されるなど、自閉スペクトラム症特性のコントロールにも重要なことが示されています。
感覚過敏性と鈍麻のアセスメント
感覚過敏性や鈍麻に関するアセスメントのツールについて紹介します。
・感覚プロファイル
・JSI-R(Japannesesensoryinventory-revised)
感覚プロファイル
感覚プロファイル日本語版(Sensory Profile:通称SP-J)は、Winnie Dunnが開発した複数領域にまたがる感覚刺激への反応傾向を評価する質問紙の検査となります。
感覚プロファイルの概要は以下の通りです。
- 評価対象者のことをよく知っている保護者や観察者(支援者)などが質問票に回答し、検査者がスコアを集計します。
- 質問票は、聴覚、視覚、触覚、口腔感覚など、幅広い感覚に関する125項目で構成されています。
- 象限、セクション、因子という3種の尺度で感覚を測ることができます。
- スコアリングのシステムには、神経科学、感覚統合および作業遂行の原則が組み込まれており、理論的枠組みに沿った判断が可能です。
- 短縮版は38項目で構成され、短縮版独自のセクションで感覚を測ります。スクリーニングや研究目的での使用に適しています。
感覚プロファイルで測定する感覚刺激への反応は、低登録・感覚探求・感覚過敏・感覚回避にわけられます。
( 1 )低登録:気づき(登録)が低い。つまり、 刺激に対し気づきにくい。神経学的閾値が高い状態である。または反応に遅延が見られる。観察される行動は比較的受動的な場合が多い。
( 2 )感覚探求:自己を安定させるため、特定の感覚を必要とする状態。多くの場合は,感覚を求める行動が見られる。これは、高い神経学的閾値を満たす刺激を求める能動的な行動としてあらわれる。
( 3 )感覚過敏:神経学的閾値が低いため、必要以上の刺激が入力され、苦痛を伴う。
( 4 )感覚回避:過敏と同様に神経学的閾値は低く、嫌いな刺激を避けるような能動的行動がみられる。
日本感覚統合インベントリー
日本感覚統合インベントリー(Japanese Sensory Inventory Revised:JSI-R)は、感覚過敏や鈍麻が背景にあると起きやすい行動をチェックするリストです。
・対象:4歳から6歳(保護者が回答)
・項目数:147項目
以下のサイトでダウンロードすることが可能です。
感覚過敏と鈍麻への対応
感覚過敏と鈍麻への効果的な対応方法は標準化されたものは現状では存在していませんが、
・環境調整
・感覚統合療法:児童期
・認知行動療法的なアプローチ:曝露と系統的脱感作法を組み合わせて順化をねらう方法
が代表的となります。
また、医療機関に受診した場合は、刺激に対する反応性を和らげるためにお薬や漢方が処方されることもあります。
感覚統合療法は、日本感覚統合学会のホームページを見ると、
子どもの学習、行動、情緒あるいは社会的発達を脳における感覚間の統合という視点で分析し、治療的介入を行います。
とされています。
感覚統合とは、「さまざまな感覚を正しく整理して脳で処理していく」ことを意味しており、感覚統合療法では治療的な介入を通して感覚の適切な感じ、脳の発達を促していくことが目的といえるでしょう。
詳しくは日本感覚統合学会のサイトを見てみてください。
感覚統合療法とは少し違うかもしれませんが、複数の感覚間の関連性と即日できる介入方法などがわかりやすく記載されている書籍です。
おすすめなのでぜひ読んでみてください!
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