第5回公認心理師試験・午前問12は、高次脳機能障害における遂行機能障害の特徴を問う問題です。
正答は③「行動の計画を立てることができない」です。
ポイントは、遂行機能障害を単に「行動できない状態」と覚えるのではなく、目的を定め、計画し、実行し、途中で自分の行動を確認・修正しながらやり遂げる機能の障害として理解することです。
問12の正答は③「行動の計画を立てることができない」
選択肢は次の5つです。
- ① 話題が定まらない
- ② 自発的な行動に乏しい
- ③ 行動の計画を立てることができない
- ④ ささいなことに興奮し、怒鳴り声をあげる
- ⑤ 複数の作業に目配りをすることができない
この中で、遂行機能障害を最も直接的に表しているのは③ 行動の計画を立てることができないです。
遂行機能障害とは
遂行機能とは、目的に沿って行動するために、複数の認知機能をまとめて使う働きです。
具体的には、
- 何を目標にするかを決める
- 目標までの手順を考える
- 優先順位をつける
- 計画に沿って行動する
- 途中で自分の行動や結果をモニターする
- 必要に応じて方法を修正する
といった一連の過程に関係します。
国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害に関する解説でも、遂行機能障害は目的に適った行動計画の障害と目的に適った行動の実行障害に分けて説明されています。
③が正しい理由
「行動の計画を立てることができない」は、遂行機能障害の中核である「目的に適った行動計画の障害」をそのまま表しています。
例えば、目的は分かっていても、
- どこから始めればよいか決められない
- 必要な手順を並べられない
- 優先順位をつけられない
- 行き当たりばったりに行動してしまう
といった状態がみられます。
一つひとつ具体的に指示されれば行動できるのに、自分で全体の計画を組み立てて進めることが難しい、という形で表れることもあります。
①「話題が定まらない」が誤りの理由
話題が定まらないという状態だけでは、遂行機能障害を特異的に示すとはいえません。
注意がそれやすい、話の構成をまとめにくい、抑制が効きにくいなど、複数の認知・行動上の問題によって生じる可能性があります。
遂行機能障害でも会話の組み立てに影響することはありますが、本問の選択肢の中では③の「計画を立てられない」の方が、遂行機能障害の定義に直接対応しています。
②「自発的な行動に乏しい」はどう考えるか
この選択肢は少し注意が必要です。
自発的な活動が乏しい、意欲や発動性が低下する状態は、高次脳機能障害の行政的な整理では社会的行動障害の一つとして説明されています。
一方で、遂行機能障害についての詳細な解説では、明確なゴールを設定できないために行動を開始しにくくなり、その結果が動機づけの欠如や発動性の低下のように見えることがあるともされています。
したがって、②を「遂行機能障害とはまったく無関係」と考えるのは適切ではありません。
ただし、本問は最も適切なものを1つ選ぶ問題です。遂行機能障害の中核的・定義的な特徴を直接表している③が正答になります。
④「ささいなことに興奮し、怒鳴り声をあげる」が誤りの理由
些細なことで興奮したり、大声を出したりする状態は、高次脳機能障害では社会的行動障害の感情コントロールの障害として説明される代表的な特徴です。
感情反応が急激に強くなり、自分で抑えることが難しくなることがあります。
これは遂行機能障害の「行動計画を立てて実行する」という中核とは異なるため、④は正答ではありません。
⑤「複数の作業に目配りをすることができない」が誤りの理由
複数のことへ同時に注意を向けることが難しい状態は、主に注意障害の特徴として整理されます。
高次脳機能障害の注意障害では、二つのことを同時に行おうとすると混乱したり、注意すべき対象が複数になるとミスが増えたりすることがあります。
遂行機能にも注意機能は必要なので両者は実生活では重なり得ますが、⑤の表現が直接指しているのは、複数対象へ注意を配分する困難です。
したがって、本問では③の方が遂行機能障害を直接表しています。
5つの選択肢を整理する
| 選択肢 | 主に対応する理解 | 本問での判断 |
|---|---|---|
| ① 話題が定まらない | 注意・構成・抑制など複数要因が考えられる非特異的な状態 | × |
| ② 自発的な行動に乏しい | 意欲・発動性低下。社会的行動障害として整理されるが、遂行機能障害との重なりもある | △だが最適ではない |
| ③ 行動の計画を立てられない | 目的に適った行動計画の障害 | 〇 |
| ④ 興奮し、怒鳴る | 社会的行動障害・感情コントロールの障害 | × |
| ⑤ 複数の作業に目配りできない | 注意障害・注意配分の困難 | × |
試験対策:「できない行動」ではなく認知機能を見分ける
高次脳機能障害の問題では、表面的な行動だけでなく、その行動の背景にどの認知機能の障害があるのかを考えることが重要です。
- 新しいことを覚えにくい → 記憶障害
- 二つのことを同時にすると混乱する → 注意障害
- 計画を立て、順序立てて実行できない → 遂行機能障害
- 感情を抑えにくい、興奮する → 社会的行動障害
ただし、実際の高次脳機能障害では複数の症状が重なることがあります。試験では、各選択肢がどの障害の中核的な説明に最も近いかを見分けます。
遂行機能障害の評価
遂行機能の評価には、日常生活に近い課題を通して遂行機能をみるBADS〈遂行機能障害症候群の行動評価〉や、概念形成・認知的柔軟性などをみるWCST〈Wisconsin Card Sorting Test〉などが用いられます。
検査結果だけでなく、実際の生活場面で「計画を立てられるか」「途中で修正できるか」「一人で最後までやり遂げられるか」といった行動を確認することも重要です。
まとめ
- 第5回公認心理師試験・午前問12の正答は③「行動の計画を立てることができない」
- 遂行機能は、目標設定・計画・実行・モニタリング・修正などの目標志向的行動に関わる
- ③は「目的に適った行動計画の障害」を直接表す
- ②の自発性低下は社会的行動障害として整理される一方、遂行機能障害のゴール設定困難から発動性低下のように見える場合もある
- ④の興奮・怒鳴り声は社会的行動障害の感情コントロール障害に近い
- ⑤の複数作業への目配りの困難は注意障害の注意配分の問題に近い
- 実際には症状が重なるため、試験では最も中核的・定義的な説明を選ぶ


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