公認心理師資格試験 過去問解説 問73 事例問題:自閉スペクトラム症の評価
- 2021.07.27
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 心理検査, 発達障害, 第3回公認心理師試験

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【問73】事例問題:自閉スペクトラム症の評価
問73 25 歳の男性 A、会社員。A は、上司 B と共に社内の相談室に来室した。入社2年目であるが、仕事をなかなか覚えられず、計画的に進めることも苦手で、B から繰り返し助言されているという。B によれば、同僚にタイミング悪く話しかけたり、他の人にとって当たり前の決まり事に気がつかなかったりすることもあり、職場の中でも煙たがられているという。会社以外での対人関係で困ることはない。この1か月は早朝覚醒に悩まされ、起床時の気分も優れなかったため、会社を何日か休んだ。BDI-IIの得点は 42 点、AQ-J の得点は 35 点であり、Y-BOCS の症状評価リストは1項目が該当した。
A に関する見立てとして、最も適切なものを1つ選べ。① 軽度抑うつ状態
② 強迫症/強迫性障害
③ 社交不安症/社交不安障害
④ 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害ASD
④ 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害ASD
となります。
ここで事例Aをまとめてみましょう❗️
25歳 男性 会社員(就職2年目)
会社内での不適応が目立ち、社会的文脈が読みづらい様子で、会社内での対人交流にも齟齬が生まれている。
この1ヶ月、早朝覚醒と気分の優れなさを自覚している。
BDIⅡ 42点
AQ-J 35点
Y-BOCS 1項目該当
選択肢の解説
今回の問題では、心理検査の得点が3つ示されているため、それぞれの検査の概要と簡単な解釈が要求されますね。
① 軽度抑うつ状態
BDIⅡ:Beck Depression Inventory-Ⅱ(ベックうつ病評価尺度)は、Beckら(1996)によって開発されたうつ病の症状を評価するための質問紙による心理検査です。
うつ病のスクリーニングや重症度の評価によく用いられる検査といえます。
BDIⅡは21項目から構成されており、「今日も含めて2週間」の症状に対して0〜3点で各項目が評価されます。
*最大得点は63点 適用年齢は13歳〜80歳
項目内容は以下の通りです。
- 悲しさ
- 悲観
- 過去の失敗
- 喜びの喪失
- 罪悪感
- 被罰感
- 自己嫌悪
- 自己批判
- 自殺念慮
- 落涙
- 激越
- 興味喪失
- 決断力低下
- 無価値感
- 活力喪失
- 睡眠習慣の変化
- 易刺激性
- 食欲の変化
- 集中困難
- 疲労感
- 性欲減退
また、BDIⅡには、得点別重症度が決められています。
0-13 極軽症
14-19 軽症
20-28 中等症
29-63 重症
以上のことから、Aの得点 BDIⅡ42点は重症度評価では『重症』に位置しますね❗️
そのため、選択肢①「軽度抑うつ状態」は不適切な記述といえますね。
② 強迫症/強迫性障害
Y-BOCS:Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale(イェール・ブラウン強迫観念・行為評価尺度)は、強迫観念や強迫行為を評価するための心理検査です。
さまざまなカテゴリーの強迫観念・強迫行為のチェックリストから当てはまる症状にチェックを入れていきます。
その後、チェックリストの症状の中から最も酷い症状に対して、専門家による重症度の評価が実施されるという検査です。
以下の5項目を「強迫観念」「強迫行為」にわけて、合計10項目を0-4点で評価します。*最大40点
- 症状に費やす時間
- 症状に関連する苦痛の程度
- 機能障害
- 抵抗性(症状に対して抗うことが可能か)
- コントロールの程度
重症度の分類は以下のようになっています。
0-7 無症状
8-15 軽度
16-23 中等度
24-31 重度
32-40 最重度
16点の中等度から、臨床的に意味のある症状とされます。
以上のことから、Aの結果にあるY-BOCSが1項目該当するというのは、チェックリストの該当項目が1つと考えられ、重症度の評価は不明ですね。
よって、現状では強迫症状の程度は確認できないため、選択肢②「強迫症/強迫性障害」は不適切といえます。
③ 社交不安症/社交不安障害
社交不安の症状を評価する心理検査の代表的なものとしてL-SAS:Liebowitz Social Anxiety Scale(リーボウィッツ社交不安尺度)があります。
が、今回の事例ではL-SASによる評価はされていませんね。
また、事例の記載からも、社交不安を窺わせるような文言はみられていません。
よって、選択肢③「社交不安症/社交不安障害」は不適切な記載といえます。
④ 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害ASD
AQ-J:Autism Spectrum Quotient(自閉症スペクトラム指数)は、Baron-Cohenら(2001)によって開発された自閉症傾向の程度を評価するための自己記入式の質問紙尺度です。
自閉スペクトラム症の臨床的なスクリーニングから、健常者の自閉スペクトラム傾向の測定まで幅広く用いられる心理検査です。
日本語版は若林・東條(2004)で信頼性と妥当性が確認されており、カットオフ値は33点以上とされています。
33点以上の人の割合が統制群では3%弱であったのに対してAS/HFA群 では約90%であったことから、障害レベルと考えられる自閉症傾向のAQ尺度上の目安は33点以上であると考えられた 。
AS/HFA群:高機能自閉スペクトラム症群
出典:若林・東條(2004). 自閉症スペクトラム指数(AQ)日本語版の標準化-高機能臨床群と健常成人による検討-, 心理学研究, 75(1), 78-84.
総得点に加えて、それぞれの下位項目が設定されています。
- 社会的スキル カットオフ:6点
- 注意の切り替え カットオフ:7点
- 細部への注意 カットオフ:なし
- コミュニケーション カットオフ:6点
- 想像力 カットオフ:6点
AのAQ-Jの得点を見てみると、AQ-J =35 点とカットオフ値を上回っているため、自閉スペクトラム症の可能性が高いと考えられますね。
勿論、心理検査のみで自閉スペクトラム症と判断はできませんが、“同僚にタイミング悪く話しかけたり、他の人にとって当たり前の決まり事に気がつかなかったりすることもあり、職場の中でも煙たがられているという”という問題文の記載からも、Aが社会的文脈を読み取ることに困難さが生じていることがわかります。
以上のことから、選択肢④「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害ASD」という選択肢が解答として適当となります。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問73は、事例問題:自閉スペクトラム症の評価に関する問題でした❗️
自閉スペクトラム症(ASD)に対する知識というよりは、心理検査の結果の知識が問われる問題でしたね💡
本問題で問われた心理検査と評価している症状、重症度の評価は以下の通りです。
心理検査 | 測定する症状 | 重症度 |
---|---|---|
BDIⅡ(ベックうつ病評価尺度) | 抑うつ症状 | 0-13 極軽症
14-19 軽症 20-28 中等症 29-63 重症 |
Y-BOCS(イェール・ブラウン強迫観念・行為評価尺度) | 強迫症状(強迫観念・強迫行為) | 0-7 無症状
8-15 軽度 16-23 中等度 24-31 重度 32-40 最重度 |
AQ-J(自閉症スペクトラム指数) | 自閉スペクトラム傾向 | カットオフ 33点 |
また、自閉スペクトラム症の評価では、自己記入式のみでなく、発達歴の評価が重要となります❗️
自閉症診断面接改訂版(ADI-R)に関しては、以下の記事を参考にしてください💁🏻
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