公認心理師資格試験 過去問解説 問57 男女雇用機会均等法 セクシュアルハラスメント
- 2021.06.26
- 資格試験
- 産業・組織, 第3回公認心理師試験
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【問57】男女雇用機会均等法
問57 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律〈男女雇用機会均等法〉に規定されているセクシュアル・ハラスメントについて、正しいものを2つ選べ。
① 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制すること。
② 異性に対して行われるものであって、同性に対するものは含まないこと。
③ 職場において行われる性的な言動により、労働者の就業環境が害されること。
④ 業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと。
⑤ 職場での性的な言動に対して、労働者が拒否的な態度をとったことにより、当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること。
③ 職場において行われる性的な言動により、労働者の就業環境が害されること
⑤ 職場での性的な言動に対して、労働者が拒否的な態度をとったことにより、当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること
となります。
男女雇用機会均等法
1986年から施行されている法律で、正式名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」となります。
第一条 目的
この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。
法律の目的としては、「雇用での男女の均等な機会と待遇の確保」「女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保」となっています。
厚生労働省のホームページにある男女雇用機会均等法のポイントには以下の要点がまとめられています。
性別を理由とする差別の禁止
雇用管理の各ステージにおける性別を理由とする差別の禁止 第5条・第6条
間接差別の禁止 第7条
女性労働者に係る措置に関する特例 第8条
婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等 第9条
セクシュアルハラスメント及び妊娠・出産等に関するハラスメント対策
セクシュアルハラスメント対策 11条
妊娠・出産等に関するハラスメント対策 11条の2
母性健康管理措置 12条・13条
また実際の細かい規定がされている「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(令和2年6月1日)」も確認しておきましょう❗️
選択肢の解説
① 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制すること
こちらの選択肢は職場のパワーハラスメントに関する項目になります。
今回の問題のテーマである男女雇用機会均等法は、パワーハラスメントよりも、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産に関するハラスメントに主眼が置かれていること、問題文にもセクシュアルハラスメントについてと記載があることから、この時点で問題の解答として最も適切とは言い難いといえます。
ここではパワーハラスメントに関して簡単に確認していきましょう。
パワーハラスメントの定義
パワーハラスメントに関する定義は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働総合施策推進法)」の第30条の2第1項に規定されています。
第三十条の二
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律|e-GOV法令検索
この労働総合施策推進法の改正により、令和2年6月1日より、パワーハラスメントに関する措置が義務化されました。
*中小企業は令和4年(2022年)3月31日まで努力義務となっています。
厚生労働省の公開している資料ではパワーハラスメントの定義で以下の3点を挙げています。
- 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に行われること)
- 業務の適正な範囲を超えて行われること
- 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
この3つの要素のうち「業務の適正な範囲を超えて行われること」のなかに、具体例がいくつか挙げられています。
○ 業務の目的を大きく逸脱した行為
○ 業務を遂行するための手段として不適当な行為
○ 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為
詳しくは、パワーハラスメントの定義について|平成30年10月17日 雇用環境・均等局をご確認いただければ良いのですが、
「業務上必要性のない行為=不要なこと」、「能力を超えた過大な要求=遂行不可能なこと」などを指示することも、パワーハラスメントの定義に含まれることがわかります。
よって、選択肢①「業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制すること」は、パワーハラスメントに関する記述となるため、問題の解答としては不適切となります。
② 異性に対して行われるものであって、同性に対するものは含まないこと
セクシュアルハラスメントは異性に対するもののみでなく、同性に対するものも当然含まれます。
ちなみに、セクシュアルハラスメントは職場環境でのハラスメントの報告の中でも毎年約30-40%と最も多い割合を示しています。
選択肢②「異性に対して行われるものであって、同性に対するものは含まないこと」は、問題の解答としては不適切となります。
③ 職場において行われる性的な言動により、労働者の就業環境が害されること
男女雇用機会均等法に規定されているセクシュアルハラスメントの定義を確認してみましょう。
職場におけるセクシュアルハラスメントは、「職場」において行われる、「労働者」の意に反する 「性的な言動」に対する労働者の対応により労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されることです。
出典:セクシュアルハラスメント|厚生労働省
「性的な言動」とは、性的な内容の発言および性的な行動を指します。
- 性的な内容の発言:性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を流布すること、性的な冗談やからかい、食事やデートの誘い、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなど。
- 性的な行動:性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、わいせつ図画を配布・掲示すること、強制わいせつ行為、強盗など。
出典:職場におけるセクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関する関するハラスメント対策は事業主の義務です!!|厚生労働省
ここまで確認すると、選択肢③はそのままセクシュアルハラスメントの定義に該当しますね。
そのため、選択肢③「職場において行われる性的な言動により、労働者の就業環境が害されること」という記述は正しいといえます。
④ 業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
こちらの選択肢は、選択肢①と同様にパワーハラスメントについての記載となっています。
パワーハラスメントには以下の6類型があるので覚えておきましょう。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過少な要求
- 個の侵害
「能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと」は、この6類型のなかでも過少な要求に該当しますね。
よって、選択肢④「能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと」はパワーハラスメントに関する記述となるため、問題の解答としては不適切といえます。
⑤ 職場での性的な言動に対して、労働者が拒否的な態度をとったことにより、当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること
職場におけるセクシュアルハラスメントには、性的な言動に対する労働者の対応により労働者が労働条件について不利益を受ける「対価型」と、性的な言動により労働者の就業環境が害される「環境型」があります。
上の記載にあるように、セクシュアルハラスメントには「対価型」と「環境型」にわけられます。
- 対価型:性的な言動に対するリアクションによって、労働者が解雇・降格・減給などの不利益を受けること
- 環境型:性的な言動によって労働者の就業環境が悪くなり、本来のパフォーマンスが発揮できないこと
選択肢⑤の記述は、この「対価型」のセクシュアルハラスメントに該当しますね。
よって選択肢⑤は問題の解答として適切な記述といえます。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問57は、男女雇用機会均等法のなかからハラスメントに関する問題の抜粋でした❗️
男女雇用機会均等法のポイント
性別を理由とする差別の禁止
雇用管理の各ステージにおける性別を理由とする差別の禁止 第5条・第6条
間接差別の禁止 第7条
女性労働者に係る措置に関する特例 第8条
婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等 第9条
セクシュアルハラスメント及び妊娠・出産等に関するハラスメント対策
セクシュアルハラスメント対策 11条
妊娠・出産等に関するハラスメント対策 11条の2
母性健康管理措置 12条・13条
今回の問題に関連するその他の法案は以下の通りです❗️
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