第3回公認心理師資格試験 過去問解説 問4 自殺のポストベンション
- 2021.02.23
- 資格試験
- 第3回公認心理師試験, 自殺予防

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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問4】自殺のポストベンションについて
ある医療機関で入院患者が自殺し、3日後に同じ病棟の患者が続けて自殺した。この病棟における自殺のポストベンションについて、最も適当なものを1つ選べ。
① 第一発見者のケアを優先する。
② 患者の担当以外の病棟スタッフは対象とならない。
③ 自殺の原因を特定し、病棟の問題を解決することが目的である。
④ 入院患者と医療スタッフが当該自殺に関する素直な感情を表現する機会を設ける。
⑤ 守秘義務のため、亡くなった患者と親しかった他の患者には自殺について伝えない。
問4は「自殺のポストベンション」についての問題になります。
問3に引き続き「自殺関連」の知識が問われる問題となっています。
入院患者と医療スタッフが当該自殺に関する素直な感情を表現する機会を設ける。
となります。
ポストベンションとは?
ポストベンション(postvention:事後対応)とは、Caplan, Jの「予防の分類」における三次予防を意味します。
【予防の分類】
- 一次予防:そもそも問題が発生する前に行われる予防的介入
- 二次予防:問題の早期発見と早期介入(危機介入)
- 三次予防:問題が生じた後に悪化を防ぐための介入
ポストベンションとは、不幸にして自殺が生じてしまった場合に、 遺された人々に及ぼす心理的影響を可能な限り少なくするための対策を意味しています。
職場における自殺の予防と対応|厚生労働省では、「職場でのポストベンションの原則」として以下の項目を挙げています。
- 関係者の反応が把握できる人数で集まる
- 自殺について事実を中立的な立場で伝える
- 素直な感情を表現する機会を与える
- 知人の自殺を経験した時に起こり得る反応や症状を説明する
- 個別に専門家による相談を希望する人には、その機会を与える
- 自殺にとくに影響を受ける可能性のある人に対して積極的に働きかける
今回の問題が想定するのは、「医療機関で既に群発自殺が起きている」ケースとなります。
群発自殺:1つの自殺をきっかけに、第2、第3の自殺が次々と起こる現象
上で紹介した「職場でのポストベンションの原則」は、そのまま「医療機関での入院患者・医療スタッフ」に当てはめて考えることが可能です。
では選択肢を見ていきましょう。
「④ 入院患者と医療スタッフが当該自殺に関する素直な感情を表現する機会を設ける。」は、「職場でのポストベンションの原則」のなかの“素直な感情を表現する機会を与える”に該当します。
自殺が起きたとき、その関係者の方は複雑でさまざまな感情を抱きます。直後には大きな問題が生じなくても、時間が経過してから問題が出現してくることも少なくはありません。
そのため、同じ関係者が複数人集まって、複雑な感情をそのまま表現して共有できる場を設けることが重要となってきます。
残りの選択肢を見ていきましょう
① 第一発見者のケアを優先する。
「職場でのポストベンションの原則」では、“自殺にとくに影響を受ける可能性のある人に対して積極的に働きかける”という項目が含まれています。
つまり、ポストベンションでは、この「とくに影響を受ける可能性のある人(≒ハイリスクの人)」に対しては、受身的ではなく能動的にケアを提供することが求められます。
- 故人と強い絆があった人
- 精神疾患にかかっている人
- これまでに自殺を図ったことがある人
- 第一発見者、搬送者
- 故人と境遇が似ている人
- 自殺が起きたことに責任を感じている人
- 葬儀でとくに打ちひしがれていた人
- 知人の自殺が生じた後、態度が変化した人
- さまざまな問題を抱えている人
- サポートが十分に得られない人
選択肢にある「第一発見者」はこの「とくに影響を受ける可能性のある人」に含まれており、ハイリスクな状況にあると考えられます。
ただし、こちらの「とくに影響を受ける可能性のある人」のなかには優先順位は決められておらず、等しく能動的なケアが提供されることが求められています。
また、自殺に関して最も動揺を受けるのは遺族の方でもあります。
したがって、選択肢①の「第一発見者のケアを優先する。」は、全面的に間違っているわけではありませんが、他にも優先的にケアが提供されるべき人がいる点で『最も適当』とは言い難く、問題の回答としては不正解となるでしょう。
② 患者の担当以外の病棟スタッフは対象とならない。
ポストベンションは、 “遺された人々に及ぼす心理的影響を可能な限り少なくするための対策”であり、広く対象に含まれます。
今回の問題のように、病棟内で自殺が生じたケースですと、
1 遺族
2 他の患者
3 医療・看護スタッフ
4 担当の医師・看護師
などの人々がポストベンション の対象となります。
そのため、選択肢②の「患者の担当以外の病棟スタッフは対象とならない。」は不適当となります。
③ 自殺の原因を特定し、病棟の問題を解決することが目的である。
ポストベンションは、「予防」の観点では三次予防に該当し、その目的は“遺された人々に及ぼす心理的影響を可能な限り少なくする”ことといえます。

上記の資料のまとめのように、自殺の原因を特定して問題解決を図ることも、自殺の再発防止や二次的な問題の発生を防ぐためにもちろん重要なことですが、問題解決と改善は長期的なスパンで行われていくもので、最も重要な目的は既に生じた自殺に対する関係者の心理的ケアを行うこととなります。
そのため、選択肢③「自殺の原因を特定し、病棟の問題を解決すること」は『最も適当』とは言い難く、問題の回答としては不適当となります。
⑤ 守秘義務のため、亡くなった患者と親しかった他の患者には自殺について伝えない。
こちらは【問題3】にも類似する選択肢がありましたが、ご遺族の方の許可を得た上で、どの方にも齟齬がないように「正確な情報」を伝えることが原則となります。
問題3の解説はこちら💁🏻
自殺が生じたという事実を必死になって隠そうとしたところであっという間に噂や憶測でほぼ全員に知れ渡ってしまいます。たしかに衝撃的ではありますが、自殺が起きたという事実を淡々と伝えて、それに動揺している人がいるならば、個別・具体的に働きかけていくことが賢明です。
このように、伝え方や伝える方法には配慮が必要ではありますが、情報を完全に統制することは不可能に近いため、ご遺族の許可を得ること(守秘義務も含めて)、ご遺族の意向に沿う形でなるべく事実を伝えることが、群発自殺のリスクを防ぐことにつながります。
そのため、選択肢⑤「亡くなった患者と親しかった他の患者には自殺について伝えない。」は不適当といえます。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問4は「自殺のポストベンション」に関する知識が問われる問題でした。
- 自殺のポストベンション
- ご遺族の許可を得た上で正確な情報を伝えること
- 自殺という体験によって起こり得る反応を説明すること
- 感情を他の関係者と共有すること
- ハイリスクとされる人に積極的なケアを提供すること
- 問題点が明らかになれば長期的な視点で解決を図ること
がキーワードとなります。
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