公認心理師資格試験 過去問解説 問24 学習及び言語「自己調整学習」
- 2021.04.18
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 学習及び言語, 第3回公認心理師試験
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問24】学習及び言語「自己調整学習」
問24 学習者が自分の目標を決め、その目標を達成するために自ら計画を立て、実行段階で思考、感情及び行為をコントロールし、実行後に振り返り、自らの学習行動を評価するプロセスとして、正しいものを1つ選べ。
① 観察学習
② 自己調整学習
③ 認知的従弟制
④ 古典的条件づけ
⑤ 有意味受容学習
② 自己調整学習
となります。
自己調整学習
人間は、ある知識や技能を獲得するために、自ら目標を設定し、それを達成するために努力することができる。例えば、海外で生活するために、「英語で日常会話を行うことができるようになる」といった目標を立て、そのために参考書を買って勉強したり、英会話教室に通ったりといった行動をとる。その過程で、目標に対して自分がどの程度のレベルにいるのかを自己評価し、目標にあまり近付けていないことがわかったら、勉強のやり方を変えるなどの調整を行うであろう。このように、学習目標を設定し、その達成に向けて自らの行動を能動的に変化させていくプロセスは、「自己調整学習(self-regulated learning)」と呼ばれる 1)(Schunk, 2001)
出典:福富隆志(2016). 自己調整学習研究の展望ー制御焦点理論の応用可能性についてー,哲学(136), 125-160
*1)Schunk, D. H.(2001). Social cognitive theory and self-regulated learning. In B. J. Zimmerman & D. H. Schunk(Eds.), Self-regulated learning and academic achievement: Theoretical perspectives(2nd Ed). New Jersey: Lawrence Erlbaum Associates.(伊藤崇達(訳)(2006).社会的認知理論と自己調整学習 塚野州一(編訳)自己調整学習の理論(pp. 119–147) 北大路書房)
自己調整学習は、「学習する人が自ら進んで、目標達成のために学習過程を修正させながら取り組んでいく学習」といえます。
自分自身の行動を振り返り評価するセルフモニタリングの力や見通しをもって目標を立てる力などが必要な学習方法で、「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(See)」という要素が基礎にあるとされています。
また、自分が重要だと考える課題に試行錯誤して取り組むといった「主体性」と同時に、社会的に「重要」と捉えることができる課題に動機づけたり、メタ的な評価を取り入れて修正をしていくという点で「社会性」も備えている学習方法と考えられています。
自らの好奇心からだけではなく、社会的に重要であると思われる事象(例えば環境問題)について、自ら重要と認知し、動機づけてゆくというプロセスを含んでいる。その意味で、自己調整学習は、内発的動機づけに比べると、「社会性」を有していると言える。
出典:神藤貴昭(2017).「自己調整学習」論の可能性-動機づけと個人差にかかわる課題に焦点を当てて-, 立命館教職教育研究, 4, 23-32.
自己調節学習は注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などとも関連が深そうで、今後の研究動向が気になるところですね。
残りの選択肢を見ていきましょう
観察学習
① 観察学習
観察学習(observational learning)とは、バンデューラ(Bandura, A)によって提唱された「自分の直接的な経験や試行錯誤した経験以外でも、他者の行動を観察することによって、その行動を学習することが可能」という考え方です。
認知的従弟制
③ 認知的従弟制
認知的従弟制(Cognitive Apprenticeship)とは、学校教育が広まる以前から行われていた職人(熟達者)が弟子(初心者)に対して行っていた指導方法をさします。
従来の学校教育よりは直接的で、熟練者自身が複雑な課題を処理する際に使用している過程を教える方法のことをいいます。
「認知的従弟制」は、討論・役割交替等の渦中にガイド・コーチングされた経験を通して、文中に埋め込まれた知識を例示化するとともに、学習者の内的過程を外化するようにメタ認知的に働きかけ熟練者の問題解決過程を体得していく学習形態である。
出典:重久浩至(1992). 「認知的従弟制」論の現代的意義-認識にからだをとりもどすための一視覚として-, 東京大学教育学部紀要, 32, 23-31.
つまり、「活動への参加を通して、熟達者から指導を受けながら、答えではなく、問題解決の方法自体を学習していく」という学習方法と解釈することができます。
認知的徒弟制理論は、6段階の学習支援方法で構成されており、学習者の成績や学習状況に応じて、学習支援を切り替える理論である。
出典:宮内他(2017). 認知的徒弟制理論に基づく教育支援ロボットの印象調査, Human-Agent Interaction Symposium2017.
宮内(2017)によれば、以下の6段階の学習支援方法があるとされています。
- Modeling:問題の解き方を教える
- Coaching:教えた問題の解き方を実践できるようなアドバイスを行う
- Scaffolding and Fading:自分の力のみで問題を解くように促し、必要であればヒントを出す
- Articulation:問題を解くまでの思考プロセスを説明できるようにしてもらう
- Reflection:他の解き方を教え、問題を解くまでの思考プロセスを再検討してもらう
- Exploration:新しい学習内容に挑戦するように促す
古典的条件づけ
④古典的条件づけ
レスポンデント条件づけ、パヴロフ型条件づけの術語も同義、条件刺激の呈示後に無条件刺激を対呈示することにより、条件反応を形成するもの。
出典:心理学辞典|有斐閣
古典的条件づけは、ロシアの生理学者であるパヴロフ(Ivan Pavlov)が唾液分泌に関する研究が代表例として挙げられることが多いです。
古典的条件づけに関しては、以下のスライドを見てください。
有意味受容学習
⑤有意味受容学習
有意味受容学習(meaningful reception learning)は、以下のように定義されています。
オーズベル(Ausubel, D. P.)が示した学習で、発見的に学習させるのではなく、条件づけや機械的な学習とも異なり、意味を有する教材を用い、学習されるべきすべての内容を明確に最終形態として呈示し、学習者は各自の認知構造に関連づけながら受容してゆく、学習に最適な教授法であるとする。
出典:心理学辞典|有斐閣
要するに、「暗記のような機械的な学習ではなく、自分の既に持っている知識と新しい知識を結びつけながら、概念や意味を含めた内容を学習する」という方法です。
有意味受容学習を成立させるには、最初に概念的な枠組みや見通しを呈示しておく必要があり、その枠組みや見通しのことを先行オーガナイザーといいます。
学習した内容をただ単に作業としてではなく、本当の意味で理解できることを目指す教授方法ともいえますね。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問24は、学習及び言語の領域から「自己調整学習」に関する問題でした。
キーワードは以下の通りです。
キーワード・自己調整学習
・観察学習
・認知的従弟制
・古典的条件づけ
・有意味受容学習
自己調整学習は学習方法として最近注目を集めてきており、「動機づけ」「メタ認知」などその内容を見る限りでは、ADHDやASDといった発達の偏りのある児童・生徒とも関連が深くなりそうな学習方法といえるでしょう。
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