公認理師資格試験 過去問解説 問153 事例問題 「ASDをもつ生徒への対応」
- 2023.08.07
- 公認心理師(第3回)
- スクールカウンセラー, 事例問題, 発達障害, 第3回公認心理師試験
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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問153
14歳の男子A、中学2年生。Aについて担任教師Bがスクールカウンセラーである公認心理師Cに相談した。Bによれば、Aは小学校から自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉の診断を受けているとの引継ぎがあり、通級指導も受けている。最近、授業中にAが同じ質問をしつこく何度も繰り返すことや、寝ているAを起こそうとしたクラスメイトに殴りかかることが数回あり、BはこのままではAがいじめの標的になるのではないか、と危惧している。
Cの対応として適切なものを2つ選べ。
① 保護者の了解を得て主治医と連携する。
② 周囲とのトラブルや孤立経験を通して、Aに正しい行動を考えさせる。
③ Aから不快な言動を受けた子どもに、発達障害の特徴を伝え、我慢するように指導する。
④ Aの指導に関わる教師たちに、Aの行動は障害特性によるものであることを説明し、理解を促す。
⑤ 衝動的で乱暴な行動は過去のいじめのフラッシュバックと考え、過去のことは忘れるようにAに助言する。
出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
選択肢の解説
まずは事例の概要をまとめてみましょう。
- 14歳 中学2年生 男子 診断名:自閉スペクトラム症(ASD)
- 小学校からASDの診断を受け、通級指導を受けている
- 授業時、同じ質問を何度も繰り返す、Aを起こそうとしたクラスメイトに殴りかかることがある
①保護者の了解を得て主治医と連携する
Aは小学校時から医療機関に継続受診しており、ASDという診断を受けて何らかの加療が続いていることが考えられます。
公認心理師としては、Aに学校生活上の問題行動がある以上、まずは保護者の了解を得てAの主治医からこれまでの治療や対応方法について指示を仰ぐことは適切な対応と考えられます。
そのため、選択肢①「保護者の了解を得て主治医と連携する」は適切な選択肢といえますね。
②周囲とのトラブルや孤立経験を通して、Aに正しい行動を考えさせる
こちらの選択肢は昔ながらの考え方が反映されている印象を受けますね。
周囲とのトラブルや孤立経験を経たとしても、自閉スペクトラム症(ASD)のあるAは文脈を把握することが難しいため、そのトラブルや孤立の理由を基に自分の行動の内省を促すことは難しいと考えられます。
むしろ、理不尽な仕打ちを受けたと被害的に捉えてしまったり、漠然と自責的に捉えることで、二次障害に発展していく可能性が高いでしょう。
よって、選択肢②「周囲とのトラブルや孤立経験を通して、Aに正しい行動を考えさせる」は不適切といえます。
③Aから不快な言動を受けた子どもに、発達障害の特徴を伝え、我慢するように指導する
こちらの選択肢に関しては、好ましくない部分が2点あります。
- 保護者やAの同意なく、Aの情報を周囲に伝えることに繋がること
- 周囲の生徒たちに我慢を強いること
Aについて言及しないとしても、現状の文脈で発達障害の特徴を伝えることは、周囲の生徒に対してAと発達障害の関連性を示唆することに繋がります。
そのため個人情報の観点から保護者やAの同意なく、情報を伝えることは不適切な対応といえます。
また、周囲の生徒に我慢を強いることに関しても、周囲の生徒たちの精神的健康に悪影響を及ぼすことが考えられます。
このような方法を選択する場合は、①A・保護者の同意を得たうえで、②周囲の生徒とAがお互いルールなどの合意形成を経て行動を変えていくことに繋がるように支援していく必要があります。
よって、選択肢③「Aから不快な言動を受けた子どもに、発達障害の特徴を伝え、我慢するように指導する」は不適切といえますね。
④Aの指導に関わる教師たちに、Aの行動は障害特性によるものであることを説明し、理解を促す
今回の事例のAには現在学校生活上で「繰り返し何度も同じ質問をする」「寝ているときに起こされると殴りかかろうとする」といった行動がみられています。
なかでも「繰り返し何度も同じ質問をする」といった部分は、不安からくる場合と常同行動のひとつである場合に分かれますが、ASDの特性に由来する行動と考えられます。
この際に教師が不適切な対応(たとえば、強く叱責するなど)をすることで、Aの二次障害に繋がる可能性がありますので、事前に関係する教師たちに特性を説明しておくことは有用です。
よって、選択肢④「Aの指導に関わる教師たちに、Aの行動は障害特性によるものであることを説明し、理解を促す」は適切な対応といえますね。
⑤衝動的で乱暴な行動は過去のいじめのフラッシュバックと考え、過去のことは忘れるようにAに助言する
今回の事例の問題文からは「過去のいじめ体験」の情報は得られていません。
仮に、「過去のいじめ体験のフラッシュバック」があった場合、それはAの意思と関係ないところで侵入的に生じてくる症状であるため、過去のことを忘れるように助言しても効果は得られないことが予想されます。
また、いじめ体験までいかなくとも、ASDには「タイムスリップ現象」と呼ばれるようなPTSDのフラッシュバックに似た(PTSDの出来事基準は満たさない)侵入的な体験が起こりやすいですが、こちらに関しても一朝一夕でコントロールできるようにはならないため、助言は効果的とはいえませんね。
よって、選択肢⑤「衝動的で乱暴な行動は過去のいじめのフラッシュバックと考え、過去のことは忘れるようにAに助言する」も不適切といえます。
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