公認心理師資格試験 過去問解説 問153 事例問題 「ASDをもつ生徒への対応」

公認心理師試験

第3回公認心理師試験・午後問153は、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉の診断を受け、通級指導を利用している中学生への学校支援を問う事例問題です。

正答は①と④です。

この問題の中心は、本人の行動だけを「問題行動」として矯正するのではなく、本人の特性や困りごとを理解し、学校内外で支援を組み立てることです。

また、事例にASDの診断があるからといって、現在みられるすべての行動をASDだけで説明できるとは限りません。学校では、本人の状態・環境・対人関係・睡眠などを含めて実態を把握しながら支援を考える必要があります。

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【問153】ASDのある生徒への学校支援

問153 14歳の男子A、中学2年生。Aについて担任教師Bがスクールカウンセラーである公認心理師Cに相談した。Bによれば、Aは小学校から自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉の診断を受けているとの引継ぎがあり、通級指導も受けている。最近、授業中にAが同じ質問をしつこく何度も繰り返すことや、寝ているAを起こそうとしたクラスメイトに殴りかかることが数回あり、BはこのままではAがいじめの標的になるのではないか、と危惧している。

Cの対応として適切なものを2つ選べ。

① 保護者の了解を得て主治医と連携する。
② 周囲とのトラブルや孤立経験を通して、Aに正しい行動を考えさせる。
③ Aから不快な言動を受けた子どもに、発達障害の特徴を伝え、我慢するように指導する。
④ Aの指導に関わる教師たちに、Aの行動は障害特性によるものであることを説明し、理解を促す。
⑤ 衝動的で乱暴な行動は過去のいじめのフラッシュバックと考え、過去のことは忘れるようにAに助言する。

正答:①・④

第3回公認心理師試験の午後問題冊子と正答は、公認心理師試験研修センターの公式資料で確認できます。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|公認心理師試験研修センター

①が適切な理由:保護者の了解を得て主治医と連携する

AにはASDの診断歴があり、すでに通級指導も利用しています。さらに最近、授業中の反復的な質問や、クラスメイトへの攻撃的な行動がみられています。

こうした変化がある場合、学校だけで状況を決めつけず、保護者と相談しながら、必要に応じて主治医など医療機関と連携することは重要です。

文部科学省も、発達障害のある児童生徒への通級指導や学校支援では、家庭・通常の学級・通級担当者・医療や福祉などの関係機関が連携し、本人の実態を多面的に把握することを重視しています。

学校内の観察だけで完結させず、保護者の了解を得て必要な専門機関と連携する

という①は適切です。

④が適切な理由:教師間で本人の特性と支援方法を共有する

Aの行動に関わる教師が、Aを単に「しつこい」「乱暴」「わざと困らせている」と理解すると、叱責や繰り返しの注意だけが増え、本人の困りごとや環境要因が見えにくくなる可能性があります。

文部科学省の通級指導に関する資料では、通常の学級の担任と通級担当者が連携し、児童生徒の障害による学習上・生活上の困難を把握し、具体的な支援策や指導方法を共有することが重視されています。

したがって、Aの指導に関わる教師たちが、ASDの特性とAの実態を踏まえて行動を理解し、対応をそろえるよう促す④は適切です。

ただし、ここで重要なのは、

「Aのすべての行動はASDだから仕方がない」と決めつけることではありません。

同じ質問を繰り返す背景には、不安、見通しの持ちにくさ、理解の確認、授業環境など複数の要因があり得ます。殴りかかった行動についても、睡眠状態、刺激への反応、対人場面、直前の出来事などを含めて検討する必要があります。

障害特性を理解の手がかりにしつつ、本人と環境の相互作用を具体的にアセスメントする

という姿勢が大切です。

②が不適切な理由:孤立やトラブルを「学習機会」にしない

②は、周囲とのトラブルや孤立経験を通して、A自身に「正しい行動」を考えさせるとしています。

しかし、本人が対人トラブルや孤立を経験することを、行動を修正するための方法として利用するのは適切ではありません。

特にBは、Aがいじめの標的になることを心配しています。必要なのは、孤立を経験させることではなく、トラブルが起きる条件を整理し、本人が理解しやすい方法で行動の選択肢を増やし、周囲の環境も調整することです。

③が不適切な理由:周囲の子どもに「我慢」を求めない

③は、Aから不快な言動を受けた子どもに発達障害の特徴を説明し、我慢するよう指導するとしています。

発達障害への理解を促すこと自体は重要ですが、それは被害や不快な体験を受けた側に我慢を強いることとは別です。

また、本人の障害に関する情報をどこまで周囲へ共有するかは、プライバシーにも関わります。

学校としては、Aへの具体的な支援と、周囲の児童生徒の安全・安心の両方を確保する必要があります。

「発達障害だから周囲が我慢すべき」とする対応は不適切です。

⑤が不適切な理由:根拠なくフラッシュバックと決めつけない

⑤は、Aの衝動的で乱暴な行動を「過去のいじめのフラッシュバック」と決めつけています。

しかし、設問にはAが過去にいじめを受けたという情報も、現在の行動がフラッシュバックによるものだと判断できる情報もありません。

したがって、限られた情報から原因を一つに決めつけることは適切ではありません。

さらに、「過去のことは忘れるように」と助言することも、本人の体験や感情を十分に確認せずに処理を求める対応になります。

まず必要なのは、現在の行動がどのような状況で起きているのかを具体的に把握することです。

5つの選択肢を整理

選択肢 ポイント 判定
① 保護者了解の上で主治医と連携 家庭・学校・医療の連携で実態把握と支援を行う 適切・正答
② 孤立経験から正しい行動を学ばせる 孤立やトラブルを支援方法として利用しない 不適切
③ 周囲の子に我慢させる 発達障害理解と、被害を我慢させることは別 不適切
④ 教師に障害特性を説明し理解を促す 教師間で本人理解と具体的支援を共有する 適切・正答
⑤ フラッシュバックと決めつけ忘れるよう助言 根拠のない原因推定と一方的助言 不適切

「障害特性の理解」と「機能的なアセスメント」を両立する

本問④は公式正答ですが、試験対策として「ASDの人の行動はすべて障害特性」と覚えるのは適切ではありません。

学校現場では、

  • いつ・どこで行動が起きるか
  • その直前に何があったか
  • 本人は何に困っているか
  • 周囲はどう反応しているか
  • 睡眠や体調に変化はないか
  • どのような環境調整や伝え方ならうまくいくか

を具体的に把握し、支援方法を検討します。

つまり、診断名を理由に行動を決めつけるのではなく、障害特性を理解の一つの手がかりとして、本人と環境の相互作用を捉えることが重要です。

試験対策ではここまで覚える

  • 発達障害のある児童生徒は、学校・家庭・医療等が連携して支援する
  • 主治医との連携では保護者の了解など適切な手続きを踏む
  • 教師間で本人の特性・困難・具体的支援方法を共有する
  • 本人を孤立させて行動を学ばせようとしない
  • 周囲の児童生徒に一方的な我慢を求めない
  • 限られた情報から行動の原因を一つに決めつけない

問153の中心:本人の特性を理解し、家庭・学校・医療で連携しながら、本人と環境の両方へ支援を組み立てる

まとめ

第3回公認心理師試験・午後問153の正答は、①と④です。

①は、保護者の了解を得て主治医と連携し、学校だけで支援を完結させない対応です。

④は、Aの指導に関わる教師にASDの特性への理解を促し、対応を共有するものです。

ただし、現在の行動をすべてASDだけで説明するのではなく、A本人の困りごと、行動が起きる状況、周囲の反応、睡眠や環境などを具体的に把握して支援することが重要です。

参考資料

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