第3回公認心理師試験・午後問146は、うつ病のAについて、妻Bへの家族教育として不適切な説明を選ぶ事例問題です。
正答は④「今は落ち着いているので自殺の危険性は低いと思います」です。
Aには、不眠、食欲低下、仕事への集中困難、引きこもり、反応の鈍さ、強い絶望感を示す発言、飲酒量の増加などがみられています。こうした状況で、診察場面で一見落ち着いていることだけを根拠に自殺リスクが低いと判断することはできません。
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【問146】うつ病の家族への心理教育
問146 55歳の男性A、会社員。Aは、意欲や活気がなくなってきたことから妻Bと共に受診した。Aは7か月前に部長に昇進し張り切って仕事をしていたが、2か月前から次第に夜眠れなくなり、食欲も低下した。仕事に集中できず、部下に対して適切に指示ができなくなった。休日は部屋にこもり、問いかけに何も反応しないことが多くなり、飲酒量が増えた。診察時、問診に対する反応は鈍く、「もうだめです。先のことが見通せません。こんなはずじゃなかった」などと述べた。血液生化学検査に異常所見はみられなかった。診察後、医師から公認心理師Cに、Bに対して家族教育を行うよう指示があった。
CのBへの説明として、不適切なものを1つ選べ。
① 薬物療法が治療の1つになります。
② 入院治療が必要になる可能性があります。
③ できる限り休息をとらせるようにしてください。
④ 今は落ち着いているので自殺の危険性は低いと思います。
⑤ 気晴らしに何かをさせることは負担になることもあります。
正答:④
第3回公認心理師試験の午後問題冊子と正答は、公認心理師試験研修センターの公式資料で確認できます。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|公認心理師試験研修センター
④が不適切な理由:見た目の落ち着きだけで自殺リスクを低く評価しない
うつ病では自殺リスクへの配慮が重要です。
Aには、
- 不眠
- 食欲低下
- 仕事上の機能低下
- 休日の引きこもり
- 反応の鈍さ
- 「もうだめです」「先のことが見通せません」という絶望感を示す発言
- 飲酒量の増加
がみられています。
厚生労働省のゲートキーパー研修資料でも、自殺の危険性を考える際には、うつ病、アルコール問題、社会的支援、自殺の計画や既往など複数の要因を確認することが示されています。
「今は落ち着いて見える」ことは、自殺の危険性が低いことを保証しません。
必要な場面では、本人の自殺念慮、具体的な計画、過去の自殺企図、現在の支援状況などを直接かつ丁寧に確認し、主治医を含む医療チームで安全確保を検討します。
①「薬物療法が治療の1つ」は適切
①は適切です。
うつ病の治療には、薬物療法、精神療法・心理療法、休養などがあります。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」でも、うつ病の治療として薬物療法と精神療法が説明されています。
ただし、家族教育では「薬を飲めば必ず治る」と断定するのではなく、主治医の方針に沿って治療を継続し、効果や副作用について相談していくことが重要です。
②「入院治療が必要になる可能性」は適切
②も適切です。
うつ病では、症状が重い場合、十分な休養が外来環境では確保できない場合、自殺リスクなど安全上の懸念がある場合には、入院治療が検討されることがあります。
厚生労働省の情報でも、症状が重い、外来治療で十分な効果が得られない、十分な休養が必要、自殺などの危険がある場合には入院治療が必要になることがあると説明されています。
したがって、家族に対して「状態によっては入院治療が必要になる可能性がある」と説明することは適切です。
③「できる限り休息をとらせる」は適切
③も適切です。
うつ病の治療では、心身の休養を確保することが重要です。
Aは、仕事上の機能低下、不眠、食欲低下、強い倦怠感や意欲低下を示しています。こうした時期には、無理に仕事や家庭内の役割を続けさせるのではなく、治療に専念できる環境を整えることが大切です。
「本人を怠けさせないように動かす」のではなく、まず必要な休養を確保する
という理解が重要です。
⑤「気晴らしをさせることが負担になる場合がある」は適切
⑤も適切です。
家族は善意から、旅行、外出、運動、趣味などを勧めたくなることがあります。しかし、うつ状態が強い時期には、本人にとって「楽しんでこなければならない」「元気に振る舞わなければならない」という新たな負担になることがあります。
厚生労働省の家族向け情報でも、うつ病の人を無理に外出させたり、趣味などの気晴らしを強制したりしないことが示されています。
そのため、本人の状態を無視して気晴らしを強く勧めない、という家族教育は適切です。
家族教育で特に伝えたい4つのこと
本問から、うつ病の家族教育では次の点を整理できます。
- 治療には薬物療法など複数の方法がある
- 重症度や安全性によっては入院治療も選択肢になる
- 十分な休養を確保する
- 本人の状態を無視して気晴らしや活動を強制しない
さらに、自殺をほのめかす発言や強い絶望感があるときは、家族だけで抱え込まず、主治医や専門家へ速やかにつなぐことが大切です。
「落ち着いている」と「安全である」は同じではない
自殺リスクの評価では、表情やその場の落ち着きだけで判断するのではなく、本人の言葉、現在の自殺念慮、具体的な計画、過去の自傷・自殺企図、アルコール使用、孤立、支援資源などを総合して評価します。
Aのように「先のことが見通せない」「もうだめだ」と強い絶望感を示し、飲酒量も増えている場合には、少なくとも「今は落ち着いているからリスクは低い」と安心するのではなく、必要な安全評価を行うべきです。
自殺リスク評価の目的は、見た目から危険度を当てることではなく、必要な安全確保と支援につなげることです。
5つの選択肢を整理
| 選択肢 | ポイント | 判定 |
|---|---|---|
| ① 薬物療法 | うつ病治療の選択肢の1つ | 適切 |
| ② 入院治療の可能性 | 重症度・休養確保・安全性によって検討される | 適切 |
| ③ 休息をとらせる | うつ病では十分な休養が重要 | 適切 |
| ④ 落ち着いているから自殺リスクは低い | 見た目だけで自殺リスクを低く評価できない | 不適切・正答 |
| ⑤ 気晴らしが負担になることもある | 状態が悪い時期に活動を強制しない | 適切 |
試験対策ではここまで覚える
- うつ病では自殺リスクへの配慮が必要
- 見た目が落ち着いていることだけで「安全」と判断しない
- 絶望感、飲酒、自殺念慮・計画・企図歴、支援資源などを確認する
- 薬物療法はうつ病治療の選択肢の1つ
- 重症時や安全確保が必要な場合は入院治療が検討されることがある
- 十分な休養を確保し、無理な気晴らしを強制しない
問146の中心:「落ち着いて見えるから自殺リスクが低い」という判断は不適切。うつ病の家族教育では休養・治療・安全確保を具体的に伝える。
まとめ
第3回公認心理師試験・午後問146の正答は、④「今は落ち着いているので自殺の危険性は低いと思います」です。
Aには抑うつ症状、絶望感を示す発言、飲酒量の増加などがあり、その場で落ち着いて見えることだけから自殺リスクを低いと判断することはできません。
家族教育では、薬物療法、必要な休養、状態によっては入院が検討されること、気晴らしを無理にさせないことに加えて、自殺リスクを示すサインを軽視せず、必要時には主治医や専門家につなぐことが重要です。


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