公認理師資格試験 過去問解説 問142 事例問題 器質的疾患の疑い

公認理師資格試験 過去問解説 問142 事例問題 器質的疾患の疑い

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

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問142 

55 歳の男性 A、会社員。A の妻 B が、心理相談室を開設している公認心理師 C に相談した。A は、元来真面目な性格で、これまで常識的に行動していたが、2、3か月前から身だしなみに気を遣わなくなり、部下や同僚の持ち物を勝手に持ち去り、苦情を受けても素知らぬ顔をするなどの行動が目立つようになった。先日、A はデパートで必要とは思われない商品を次々とポケットに入れ、支払いをせずに店を出 て、窃盗の容疑により逮捕された。現在は在宅のまま取調べを受けてい る。B は、逮捕されたことを全く意に介していない様子の A について、どのように理解し、対応したらよいかを C に尋ねた。

C の B への対応として、最も優先度が高いものを1つ選べ。

① A の抑圧されていた衝動に対する理解を求める。

② A の器質的疾患を疑い、医療機関の受診を勧める。

③ A に内省的構えを持たせるため、カウンセリングを受けるよう勧める。

④ A に再犯リスクアセスメントを実施した後、対応策を考えたいと提案する。

⑤ A の会社や家庭におけるストレスを明らかにし、それを低減させるよう助言する。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ② D. Matza の漂流理論

選択肢の解説

aerial photography of a boat on a waterway in the middle of forest
Photo by Kelly on Pexels.com

事例の概要

事例問題では、はじめにざっくりと事例の概要を整理することが正解に導くための鍵となります。

本事例を整理すると以下のようになります。

  • 55歳 男性 会社員
  • 生来的に真面目な性格で常識的に行動していた
  • 2-3か月前頃から「身だしなみに気を遣わなくなる」「部下や同僚の持ち物を勝手に持ち去る」「苦情を受けても素知らぬ顔をする」などの行動が目立つようになった
  • 窃盗により逮捕されたがされたが意に介していない様子だった

この事例で頭に入れておくべきなのは、2-3か月前から急に人格が変わったような振る舞いが目立つようになったこととなります。

特に、これまでは常識的な振る舞いをしていたAが反社会的な行動をするようになり、社会性も欠損しているように見えることもポイントのひとつといえます。

すなわち、Aには以前にはなかった「社会性(コミュニケーション)の障害」「衝動制御の問題(脱抑制)」「人格の変化」がみられるようになったということがいえます。

公認心理師の役割として、適切な医療機関へのリファーが挙げられます。

もちろん、選択肢にあるような「抑圧されていた衝動」や「会社や家庭におけるストレスの存在」もAの変化の可能性として否定できるものではありません。

加えて、今後のことを考えるのであれば「再犯リスクアセスメント」や「内省的構え」を検討することも重要になってきます。

しかし、最優先されるのは、ここでは高次脳機能障害の存在の精査となります。

Aのように急激に社会性や人格が変化するようなケースでは、第一に脳梗塞などにより前頭葉の障害(=高次脳機能障害)を疑う必要があります。

よって、選択肢②「A の器質的疾患を疑い、医療機関の受診を勧める」が本事例における最優先事項となりますね。