公認心理師資格試験 過去問解説 問12 心理尺度「信頼性」について

公認心理師資格試験 過去問解説 問12 心理尺度「信頼性」について

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

公認心理師試験の勉強方法はこちら💁‍♀️

【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

 

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【問12】心理検査「尺度の信頼性」

問12 質問紙法を用いたパーソナリティ検査について、正しいものを1つ選べ。

① 検査得点の一貫性のことを妥当性という。

② α係数は、検査項目の数が多いほど、低い値をとる。

③ 再検査法では、2時点の検査得点間の相関係数を用い、検査の安定性をみる。

④ 検査が測定しようとしているものを正しく測定できている程度のことを信頼性という。

⑤ 検査得点の分散に占める真の得点の分散の割合が高いほど、検査結果の解釈が妥当になる。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

問12は質問紙法の心理検査による信頼性と妥当性を問う問題です。

 

正答は ③

 

③ 再検査法では、2時点の検査得点間の相関係数を用い、検査の安定性をみる。

 

となります。

 

この問題は、信頼性に関する知識があれば回答可能ですので、「信頼性」についてまとめていきます。

 

信頼性(reliability)

 

信頼性とは、尺度の“精度”をあらわす用語で以下のように定義されます。

同一の個人に対して同一の条件のもとで同一のテストを繰り返し実施したとき、一貫して同一の得点が得られる程度をテスト得点の信頼性(信頼度)とよぶ。

出典:心理学時点|有斐閣

 

つまり、信頼性とは「ある人に対して、同じ条件下で同じ検査を行ったときに、同じ結果が得られる程度」=「検査得点の一貫性を意味します。

 

信頼性が高いと、尺度の示す結果(得点)が安定します。

 

一方で、信頼性が低ければ尺度を使用するたびに異なる結果がでてしまうことになり、尺度の得点が検査を実施した個人の特性を正確に捉えることができているかが分からなくなってしまいます。

 

これに対して、尺度の“正当性”をあらわすのが妥当性(validity)です。

 

妥当性は「その検査が、作成者(測定者)が測定しようとしているもの、意図したものを本当に測っているか、的を射ているか」を表す。換言すれば「検査が測りたい対象を的確に測れているか、その検査が目的に合っているかどうか」といえる。

出典:心理臨床大事典|培風館

 

妥当性とは、尺度が測定したい概念を実際に測定できているかを意味しており、最近では“テストの得点の解釈とそれに基づく推論の正当性(の程度)”とされています。

 

妥当性が低ければ尺度の得点がそもそも測定したい特性をうまく反映できていないことになります。

 

この記事では妥当性に関する詳しい説明は割愛しますが、信頼性と妥当性は同様に重要な概念であって、お互いに独立している概念といえます。

 

では、信頼性に話を戻しましょう。

 

信頼性には3つの概念と、それぞれに対応する信頼性係数(coefficient of reliability)という信頼性の高さを表す数値が存在します。

 

信頼性係数

信頼性係数は、信頼性の高さを表す数値です。

 

信頼性係数(p)は、検査の得点、つまり観測された得点(X)真値(T)測定誤差(E)にわけた計算式で表現されます。

 

測定誤差とは、検査結果に影響を与えると考えられる様々な要因の影響をあわせた結果=誤差をあらわします。

 

測定誤差の分散が小さいほど信頼性係数が高くなるという関係性があります。

 

また、信頼性係数は、0 ≦ p ≦ 1 の範囲に入ります。

 

ここからは代表的な信頼性の概念と信頼性係数の求め方について解説していきます。

 

分散に関する解説はこちらをどうぞ💁🏻

 

再現性(安定性)

検査結果の再現性が高く、同一の検査対象であるなら何度測定を繰り返しても同じような測定値が得られるほど、安定しており信頼性が高いとする概念である。

出典:心理臨床大事典|培風館

 

この再現性(reproducibility:stability)は上で説明した信頼性と同じ意味ですね。

 

再現性によって尺度の信頼性を確認するための方法としては、再検査法(test-retest method)が挙げられます。

 

1週間、1か月など一定の期間をおいて同一の内容で再検査を行い、その二つの得点間の相関係数を信頼性係数とする。

出典:心理臨床大事典|培風館

 

再検査法では、時間をあけて同じ検査を2回実施して、その2つの得点間の相関係数を算出することで、信頼性を推定するというわけですね。

 

再検査法による信頼性係数の基準としては、尺度後世の論文で概ね.70以上が報告されることが多いようなので、信頼性係数のひとつの目安となるかもしれません。

 

等価性

検査が測ろうとしている構成概念と同じ、あるいは似通った概念を測る他の検査と一定の関係が認められれば、信頼性が高いとする考え方の概念である。

出典:心理臨床大事典|培風館

 

等価性によって尺度の信頼性を確認するための方法としては、平行検査法(parallel test method)が挙げられます。

 

測定したい検査と、項目数、質問内容の難易度、測定しようとする構成概念、分布、平均値、分散などがほぼ等しい検査を作成、または使用して、その二つの検査間の相関係数を信頼性係数とする。

出典:心理臨床大事典|培風館

 

つまり、真値と測定誤差が等しい別の検査を2つ用意して、その2つの得点の相関係数を算出することで信頼性係数を求める方法です。

 

平行検査法では、「ほぼ等しい検査を作成・使用することが難しい」「同じ時点で検査を実施する必要がある(再現性の問題が混在してくる)」といった点で実施が難しいことが多いです。

 

内的整合性

検査の尺度内部で回答のばらつきがないことを意味する。尺度内の各項目が構成概念を同じように測ることができて、ばらつきがなく整合的である、あるいは一貫していることを信頼性が高いとする考え方の概念である。

出典:心理臨床大事典|培風館

 

内的整合性によって尺度の信頼性を確認するための方法としては、折半法(split half method)が挙げられます。

 

この方法では一つの尺度を偶数項目群、奇数項目群のように折半し、二つの尺度とみなして、その相関係数を信頼性係数とする。

出典:心理臨床大事典|培風館

 

折半法は、同じ人物に対して2回検査を実施することが難しい場合や、真値や測定誤差の等しい検査を2つ用意することが難しい場合に行われる方法で、1つの検査を2つにわけて、それぞれの得点の相関係数を算出することで信頼性係数を求める方法です。

 

2つにわけたそれぞれの尺度間の平均値や分散が等しいことが望ましいとされており、わけ方として考えられるパターンをいく通りも算出します。

 

現実的な観点からも信頼性係数を求めるのに用いられることが多い方法といえます。

 

クロンバックのα係数

クロンバックのα係数は、内的整合性によって信頼性を推定する代表的な方法です。

 

先ほどの折半法による信頼性の推定では、尺度のわけ方によって数値が変動してしまうというデメリットがあります。

 

そのデメリットをカバーするために「考えられるパターンをいく通りも算出して、その平均値を信頼性係数とする」ことが多いのですが、このように算出された信頼性係数のことをクロンバックのα係数といいます。

 

クロンバックのα係数は、尺度の項目数が多くなるほど数値が高くなり、項目数が少ないほど数値が低くなるという特徴があります。

 

選択肢の解説

① 検査得点の一貫性のことを妥当性という。

検査得点の「一貫性」は妥当性ではなく信頼性をあらわす用語なので不適当ですね。

 

② α係数は、検査項目の数が多いほど、低い値をとる。

クロンバックのα係数は、計算式の都合上、検査の項目数が多いほど数値が高くなります。そのため、この選択肢は不適当となります。

 

③ 再検査法では、2時点の検査得点間の相関係数を用い、検査の安定性をみる。

再検査法は、時間をあけて同じ検査を2回実施して、その2つの得点間の相関係数を算出することで信頼性、つまり検査の一貫性を求める方法ですので、この選択肢は正しく正答といえます。

 

④ 検査が測定しようとしているものを正しく測定できている程度のことを信頼性という。

これは妥当性に関する説明ですね。そのため、選択肢は不適当となります。

 

⑤ 検査得点の分散に占める真の得点の分散の割合が高いほど、検査結果の解釈が妥当になる。

 

信頼性係数について確認してみましょう。

 

この式を見ると、検査得点の分散に占める真の得点の分散の割合が高いと、信頼性が高くなるという関係性がわかります。

 

ここで問題となってくるのが、「信頼性が高い」と検査の安定性が高いことはいえますが、「検査結果の解釈が妥当になる」とはいえないことですね。

 

“テストの得点の解釈とそれに基づく推論の正当性(の程度)”を示すのはむしろ妥当性なので、この選択肢は不適当といえます。

 

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まとめ

第3回公認心理師資格試験の問12は心理尺度の「信頼性」に関する知識が問われる問題でした。

 

信頼性とは、「ある人に対して、同じ条件下で同じ検査を行ったときに、同じ結果が得られる程度」=「検査得点の一貫性を示す用語です。

 

信頼性に関しては、以下の概要図を押さえておく必要があります。

 

【参考文献】

岡田謙介(2015). 心理学と心理測定における信頼性について—Cronbachのα係数とは何なのか,何でないのか—. 教育心理学年報, 54, 71-83.

髙本・服部(2015). 国内の心理尺度作成論文における信頼性係数の利用動向, 心理学評論, 58(2), 220-235.