第5回公認心理師試験・午前問52は、多職種チームで行う精神科デイケアにおいて、公認心理師が主に担う業務を問う問題です。正答は① 心理教育を行う、⑤ ストレスに関して個別相談を希望する利用者に面接するです。ポイントは、精神科デイケアが多職種で運営されることを前提に、公認心理師の専門性が最も直接生かされる業務を選ぶことです。
実際の問題文
問52 多職種チームによる精神科デイケアにおいて、公認心理師が主に行う業務として、適切なものを2つ選べ。
① 心理教育を行う。
② 作業プログラムを企画する。
③ 利用者にピアカウンセリングを行う。
④ 利用者の公的補助導入について助言する。
⑤ ストレスに関して個別相談を希望する利用者に面接する。
問題文の読み解き
この問題で最も重要なのは「多職種チーム」と「公認心理師が主に行う業務」という二つの条件です。精神科デイケアでは、医師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士、心理職などが、それぞれの専門性を生かしながら支援します。実際には業務が完全に分離されるわけではなく、プログラムを共同で企画したり、情報を共有したりすることがあります。
そのため、試験では「公認心理師以外は絶対に行わない業務」を探すのではなく、公認心理師の専門性である心理アセスメント、心理支援、心理教育、面接などに最も直接対応する選択肢を選びます。
正答は① 心理教育と⑤ 個別面接
厚生労働省の公認心理師の活動実態に関する資料では、保健医療領域で精神科デイケア、精神科外来、精神科入院などに公認心理師が関与し、面接を通じたアセスメント、集団プログラムや個別の心理支援、多職種へのコンサルテーションなどを行っていることが示されています。
①の心理教育は、心理学的知識を本人や家族へ分かりやすく伝え、病気やストレスへの理解、自己管理、再発予防などを支える活動です。⑤の個別面接は、利用者のストレスや困りごとを整理し、心理的支援につなげる公認心理師の中心的業務に含まれます。
精神科デイケアとは
精神科デイケアは、精神障害のある人の社会生活機能の回復などを目的として、外来で一定時間のプログラムを提供する治療・リハビリテーションの場です。生活リズムの安定、対人関係、作業活動、心理教育、再発予防、社会参加、就労準備など、施設や対象者によってさまざまなプログラムが組まれます。
重要なのは、デイケアを一つの職種だけで完結させないことです。複数の専門職が観察・面接・活動場面から得た情報を共有し、本人の目標に合わせて支援計画を調整します。
多職種連携で公認心理師に期待される専門性
心理アセスメント
公認心理師は、面接、観察、心理検査などから本人の心理状態、認知特性、対人関係、ストレス要因、強みなどを整理します。デイケアでの行動観察や他職種からの情報も合わせ、支援方針へつなげます。
心理支援・個別面接
本人がストレス、不安、対人関係、再発への心配などを相談したい場合、心理面接は公認心理師の専門性が直接生きる領域です。単に話を聞くだけでなく、困りごとの整理、対処法の検討、必要な支援への接続などを行います。
心理教育
心理教育では、ストレス反応、病気との付き合い方、再発サイン、対処法、コミュニケーションなどを、本人が理解しやすい形で共有します。集団でも個別でも行われ、多職種と共同で実施することもあります。
チームへのコンサルテーション
公認心理師は、自分が直接面接した内容だけでなく、心理学的理解をチームへ還元する役割も持ちます。行動の背景を心理面から整理したり、スタッフの関わり方を検討したりすることで、チーム支援の質を高めます。
選択肢ごとの検討
① 心理教育を行う
正答です。心理教育は、公認心理師が専門性を発揮しやすい代表的な業務です。ストレス、病気、対処行動などに関する心理学的知識を本人が活用できる形で伝え、自己理解やセルフマネジメントを支えます。
② 作業プログラムを企画する
不正解です。精神科デイケアでは作業活動が行われることがあり、公認心理師が企画に関わる場合もあります。しかし、作業そのものを治療手段として構成・評価する専門性は作業療法士と特に関連します。「公認心理師が主に行う業務」として①・⑤より優先される選択肢ではありません。
ここで重要なのは「公認心理師は作業プログラムに関与してはいけない」という意味ではないことです。多職種チームでは共同企画もあり得ますが、試験では中心的専門性を問うています。
③ 利用者にピアカウンセリングを行う
不正解です。ピアサポートやピアカウンセリングは、同様の経験や当事者性を持つ人同士の支え合いを基盤とします。公認心理師が専門職として利用者へ心理面接をすることと、ピアとして支援することは区別されます。
心理職がピア活動の導入や環境調整を支援することはあり得ますが、自身が「ピア」として行うことを公認心理師の主業務とはしません。
④ 利用者の公的補助導入について助言する
不正解です。公的制度、福祉サービス、経済的支援、社会復帰に関する相談は、精神保健福祉士が専門性を発揮する領域です。厚生労働省も精神保健福祉士を、精神障害者の社会復帰や地域相談支援に関する相談・助言等を行う専門職として位置づけています。
もちろん公認心理師も制度情報を知り、必要な人を適切な職種へつなぐ必要があります。しかし、制度導入への助言を「主に行う業務」として選ぶ問題ではありません。
⑤ ストレスに関して個別相談を希望する利用者に面接する
正答です。心理面接は公認心理師の中心的な専門業務です。ストレスの内容、きっかけ、認知、感情、身体反応、対処行動などを整理し、必要に応じて心理教育や具体的な対処法の検討につなげます。
「主に行う」と「独占業務」を混同しない
この問題は業務独占を問うものではありません。精神科デイケアでは、看護師が心理教育に参加したり、精神保健福祉士が面接を行ったり、公認心理師が作業プログラムの企画会議に参加したりすることがあります。
試験で問われるのは、多職種の中で「公認心理師の心理学的専門性に最も直接対応するもの」です。したがって、「誰でも行う可能性があるから不正解」と考えるのではなく、中心的役割との適合度を比較します。
多職種連携で重要な役割理解
多職種連携では、自分の専門性を理解するだけでなく、他職種が何を得意とするかを理解することが重要です。公認心理師がすべてを抱え込むと、制度調整、身体管理、作業評価などで他職種の専門性を生かせません。
既存記事の第3回午前問35「多職種連携」では、専門職連携の基本的な考え方を整理しています。本問と合わせて、役割分担と情報共有の観点を確認すると理解しやすくなります。
精神科デイケアでの面接の位置づけ
デイケアでは、個別面接だけでなく、集団活動や日常的な交流場面から多くの情報が得られます。心理職は面接室だけで本人を理解するのではなく、集団での参加の仕方、疲労、対人距離、課題への取り組み方なども支援チームの情報として扱います。
個別面接で得られた情報をどこまでチームで共有するかは、本人への説明と同意、守秘、支援上の必要性を踏まえて検討します。
試験での見分け方
多職種問題では、「心理」「作業」「制度・社会資源」「医療・身体」「当事者性」といったキーワードを職種の専門性と対応づけます。心理教育や心理面接は公認心理師、作業活動は作業療法士、制度・社会復帰相談は精神保健福祉士、ピアサポートは当事者性を持つピア、という軸を持つと整理しやすくなります。
ただし、実務では境界が重なります。試験では代表的な役割分担を選び、実務ではチームとして柔軟に連携する、という二層で理解することが重要です。
役割分担は固定表ではなくチームで調整する
実際の精神科デイケアでは、心理教育を看護師や医師と共同で実施したり、公認心理師が作業活動の企画に参加したりすることがあります。したがって、国家試験の選択肢をそのまま「職種ごとの禁止事項」として覚えるのは適切ではありません。
試験では中心的な専門性を識別し、実務では本人のニーズ、施設体制、各職種の経験を踏まえて役割を調整します。重要なのは、自分の専門性を過大評価せず、必要に応じて他職種へ相談・紹介し、支援目標を共有することです。
精神科デイケアでの心理教育の具体例
心理教育では、ストレスと症状の関係、睡眠や生活リズム、再発のサイン、感情のセルフモニタリング、対人関係の対処、援助要請などを扱うことがあります。重要なのは、知識を一方的に説明するだけでなく、利用者が自分の生活に当てはめて理解できるよう支援することです。必要に応じてワークシートやグループディスカッションを用いることもあります。
また、心理教育で得た知識を個別面接へつなげることもできます。例えば「ストレス反応は理解できたが、自分の場合どのサインが危険か分からない」という利用者には、面接で具体的な生活場面を整理し、本人に合う対処や相談先を検討します。
公認心理師が多職種チームで持つべき姿勢
公認心理師は心理面の専門家ですが、本人の生活上の問題すべてを心理的要因へ還元しないことが重要です。経済的困難、住居、就労、身体疾患、服薬、副作用、家族関係などは、他職種の専門的支援が必要になることがあります。心理面接でこうした問題が見つかった場合には、適切な職種へつなぎます。
また、多職種連携では「心理職だけが本人の本音を知っている」という姿勢を避け、本人の同意と守秘に配慮しながら、支援に必要な情報をチームで共有します。役割分担は支援の分断ではなく、複数の専門性を組み合わせるための仕組みとして理解します。
まとめ
第5回午前問52の正答は①と⑤です。精神科デイケアは多職種で支援する場であり、公認心理師は心理教育、心理面接、心理アセスメント、心理支援などで専門性を発揮します。②作業プログラム、③ピアカウンセリング、④公的補助導入の助言は、それぞれ他の専門職・役割とより強く結びつくため、本問の「主に行う業務」としては選びません。


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