朝、子どもから、
「学校に行きたくない」
と言われたとき。
保護者としては、「今日は休ませた方がいい?」「少しでも行かせた方がいい?」と、その場で答えを出さなければならないように感じるかもしれません。
休ませれば、「このまま行けなくなるのでは」と心配になる。行くことを勧めれば、「無理をさせて、もっとしんどくなるのでは」と心配になる。
最初に結論をお伝えすると、「休ませる」「行かせる」のどちらか一方が、すべての子ども・すべての朝に正しいとは言えません。
私が不登校・登校しぶりの支援でまず見るのは、次のようなことです。
- 安全に関わる心配がないか
- 本人にどのくらい余力が残っているか
- 今日予定していることは、今の状態に対して重すぎないか
- 本人はこの先どうなりたいのか
- 実際にやった後、どのくらい疲労や反動が残ったか
そして、「一日登校する/一日休む」だけが選択肢とも限りません。時間を短くする、一部だけ参加する、場所を変える、学校と相談する、今日は休息を選ぶなど、その日の状態に合わせて調整できることがあります。
なぜこのように考えるのか。この記事では、不登校・学校出席に関する研究や公的な方針と、心理職として実際の支援で大切にしている臨床的な視点を分けながら整理します。
- 研究から見ると、「学校に行けない」は一つの状態ではない
- まず優先したいのは、「登校できるか」より安全です
- 専門家としてまず見るのは、「行けるか」より本人の余力です
- 「できたか」だけでなく、やった後まで見る
- 「登校」を最初から最終ゴールにしない
- 目標は、できるだけ「後から確認できる行動」にする
- 「将来どうなりたいか分からない」なら、無理に答えを作らなくていい
- 別室登校や宿題免除は、「何のためか」を先に考える
- 「回避しているから、行かせる」と一律には考えない
- 「少しずつ学校へ戻る」支援には、研究上どこまで根拠がある?
- 「親の対応が悪かったから」と原因を一つにしなくていい
- 今朝、まず確認したい5つのこと
- 「休ませるか、行かせるか」から、「今日は何を調整するか」へ
- 一日の様子だけでは分からないときに|「つながる7日間」
- 主な参考文献・資料
- Yamashun|臨床心理士・公認心理師
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研究から見ると、「学校に行けない」は一つの状態ではない
海外では、学校への出席や欠席に関する問題を広く School Attendance Problems(SAPs:学校出席上の問題) として研究する枠組みがあります。
ここには、完全な欠席だけではなく、遅刻、早退、一部授業への不参加、通常の教室に入りにくい状態など、さまざまな状態が含まれます。
Kearneyらは2026年のレビューで、学校出席・欠席を測定するとき、単純な出席日数や欠席日数だけではなく、学習への参加、学校への関与、生活機能への影響なども含めて考える必要性を論じています。
つまり、「今日は登校できたから大丈夫」とも、「今日は欠席したから状態が悪くなった」とも、出席の有無だけでは判断しきれません。
また、Leducらのschool refusalに関するシステマティックレビューでは、15研究で67の要因が検討され、44の個人・社会・文脈的な要因がschool refusalのある子どもとそうでない子どもを区別していました。含まれた研究はすべて横断研究であり、「この要因が原因で学校へ行けなくなる」と因果関係まで決められるものではありません。
ここから分かるのは、「学校に行きたくない」という行動を、一つの原因だけで説明するのは難しいということです。
なお、海外研究で用いられるschool refusalやSAPsと、日本で行政上使われる「不登校」は完全に同じ概念ではありません。研究結果をそのまま日本のすべての不登校ケースへ当てはめるのではなく、状態を多面的に考えるための手がかりとして扱う必要があります。
関連:公認心理師試験の事例から考える、不登校で最初に確認したいこと
まず優先したいのは、「登校できるか」より安全です
「休ませるか、行かせるか」を考える前に、優先順位を変える必要がある場合があります。
- いじめや暴力が疑われる
- 虐待など安全上の問題がある
- 自傷や希死念慮がある
- 急激な心身の状態悪化がみられる
- 強い身体症状が続いている
- その他、本人の安全を確保する必要がある
このような状況では、「今日は何時間なら学校へ行けるか」を試すことより、安全の確認と必要な支援への接続を優先します。
段階的に負荷をかけてみる対象として考える場面ではありません。家庭だけで対応しようとせず、学校、心理職、医療・福祉など必要な支援先につないでください。
専門家としてまず見るのは、「行けるか」より本人の余力です
ここからは研究結果そのものではなく、私が心理職として支援場面で見ていることです。
保護者から「今日は休ませた方がいいでしょうか?」と相談されたとき、本人が「行ける」と言っているか、「行きたくない」と言っているかだけでは判断しません。
特に見たいのが、本人の疲労や余力の変化です。
- 表情が普段と比べてどうか
- 以前より睡眠時間が増えていないか
- 日中も寝ている、横になっている時間が増えていないか
- 学校以外の活動まで難しくなっていないか
- 普段できていたことにも疲労の影響が広がっていないか
ここで重要なのは、「長く寝ているから休ませる」「表情が暗いから登校させない」という判定表にしないことです。
単独のサインではなく、その子の普段の状態からどのくらい変化しているかを見ます。本人が「今日はかなりしんどい」と感じていることも大切な情報ですし、周囲から観察できる変化も大切な情報です。
「できたか」だけでなく、やった後まで見る
たとえば、ある日2時間だけ授業に参加できたとします。
そこで、「2時間行けた。次は3時間にしよう」と自動的に考えるのは少し早いかもしれません。
私が支援場面で整理するときには、やる前 → やっている最中 → 帰宅後 → 翌日までを見ます。
Aさん
2時間授業に参加した。帰宅後もある程度いつもどおり過ごすことができ、本人も「これくらいなら、またできそう」と話していた。
Bさん
同じく2時間授業に参加した。しかし帰宅後はほとんど動けず、その後から翌日にかけて寝ている時間が大きく増えた。
表面的には、どちらも「2時間登校できた」です。しかし、本人にかかっていた負荷まで含めると、同じ経験とは言い切れません。
臨床では、現在の余力 × やったことの負荷 × その後の反動という形で整理することがあります。
これは研究で確立された尺度ではなく、次の負荷を考えるために私が支援場面で使っている見方です。
「登校」を最初から最終ゴールにしない
文部科学省は、不登校児童生徒への支援について、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、本人が自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立することを目指すという考え方を示しています。
同時に、不登校の時期が休養などの意味を持つ場合がある一方、学業の遅れや進路選択上の不利益にも留意する必要があるとしています。
これは、「学校へ行かなくてもよい」という意味でも、「学校へ戻してはいけない」という意味でもありません。
私が支援で大切にしているのは、登校という行動より一段上にあるゴールを、本人とできるだけ共有することです。
たとえば、「高校へ進学したい」「興味のあることを学べるようになりたい」「将来の選択肢をできるだけ残しておきたい」という方向が本人にあるかもしれません。
どんな自分・生活になりたいか
↓
そのために何が必要か
↓
今、どんな行動を目標にするか
たとえば、
高校へ進学したい
↓
学習との接点を保ちたい
↓
当面は1日2時間、授業に参加する
という目標になることがあります。この場合、登校は十分に目標になり得ます。
目標は、できるだけ「後から確認できる行動」にする
目標を考えるときには、できるだけ、本人・保護者・学校・支援者が後から確認できる形にします。
- 1日○時間授業に参加する
- 週○回、課題に取り組む
- ○時までに起きる日を週○日にする
もちろん、本人の主観を軽視するわけではありません。
本人の主観は、今の状態を理解するための情報。観察できる行動は、目標の進み方を共有するための情報。
私はこのように役割を分けて考えています。
「将来どうなりたいか分からない」なら、無理に答えを作らなくていい
すべての子どもが「○○高校へ進学したい」「将来は○○になりたい」と明確なビジョンを持っているわけではありません。
「分からない」「別にどうでもいい」ということもあります。
そのときに、急いで夢や目標を作らせる必要はないと考えています。
具体的なゴールがまだ見えない場合には、学習、日常生活、趣味や余暇活動など、複数の領域で今できそうなことを試してみます。
実際に試す中で、「これは意外と楽しい」「これは今は違う」「これなら続けたい」という情報が増えてきます。
将来の選択肢を残すという意味から、可能な範囲で学習との接点を維持することを検討する場合もあります。ただし、それを本人の「本当の目標」と最初から決めつけるわけではありません。
分からないなら、試す中で考えていく。
別室登校や宿題免除は、「何のためか」を先に考える
保護者や学校は、本人の負担を減らそうとして、「とりあえず別室登校にしてみよう」「宿題は免除して、まず登校を優先しよう」と提案することがあります。
別室登校や短時間登校、宿題の調整自体が悪いわけではありません。必要な環境調整になることもあります。
私が注意したいのは、「何のためにその調整をするのか」が本人と共有されないまま、方法だけが決まっていくことです。
たとえば、
高校進学の選択肢を残したい
↓
学習との接点は保ちたい
↓
今は教室で一日過ごす負荷が大きい
↓
当面は別室で必要な学習を続ける
という流れなら、別室登校には明確な役割があります。
一方、「学校へ行けていないから、とりあえず別室へ」だけになると、別室へ行くこと自体が目標になり、いつ、何を手がかりに支援方法を見直すのかが分かりにくくなる場合があります。
「回避しているから、行かせる」と一律には考えない
心理学では、つらい状況を避けた結果、一時的に苦痛が下がることで、その回避が続きやすくなることがあります。
しかし実際の支援では、「避けている」という行動だけでは対応を決めません。
何から離れているのか。離れることで何が変わっているのかを見ます。
- いじめなど安全上の問題から離れている
- 強い刺激から離れている
- 対人場面や評価場面の負荷が大きい
- 一日に求められることが、現在の余力を超えている
そのため私は、「回避だから減らす」とは一律に考えません。
ただし反対に、負荷を下げ続ければ必ずよいとも考えません。
現在行っている調整が本人の目指す方向につながっているかを確認しながら、下げる、維持する、上げる、別の方法へ変える、誰かに相談する、を検討します。
「少しずつ学校へ戻る」支援には、研究上どこまで根拠がある?
2025年に発表されたSchool Attendance Problemsを対象とする認知行動的介入のシステマティックレビュー・メタ解析では、4件のRCTと11件のopen trial、合計932人が検討されています。
対照群との比較では、学校出席について中程度の効果量(g = 0.44)が報告されました。
一方で、不安や抑うつについては対照群との有意な差が確認されず、研究間のばらつき、バイアスの可能性、測定方法の不統一なども限界として指摘されています。
ここで注意したいのは、この研究が、「少しずつ登校させること」だけの効果を検証したものではないということです。
したがって研究から言えるのは、学校出席上の問題を対象とした認知行動的介入には、学校出席を改善する可能性を示す研究があるというところまでです。
そこから「学校に行きたくない子には、とにかく少しずつ登校させればよい」と一般化することはできません。
「親の対応が悪かったから」と原因を一つにしなくていい
保護者から、「休ませたのがいけなかったのでしょうか」「もっと早く厳しく行かせるべきだったのでしょうか」と聞かれることがあります。
保護者側の要因とschool refusalとの関連を調べたシステマティックレビューでは、保護者の心理状態、家族機能などとの関連が報告されています。
しかし、含まれたのは8研究で、そのうち7研究が横断研究でした。
したがって、親側の要因がschool refusalを生じさせたのか、子どもの状態が家族へ影響したのか、あるいは相互に影響しているのかを、この研究から決めることはできません。
「休ませたから不登校になった」「甘やかしたから学校へ行けなくなった」と単純に結論づけることには慎重であるべきです。
今朝、まず確認したい5つのこと
1.安全に関わる心配はないか
いじめ、暴力、虐待、自傷、希死念慮、急激な心身の悪化などが疑われる場合は、登校の負荷調整より安全確認と適切な支援への接続を優先します。
2.本人の余力は、普段と比べてどうか
表情、睡眠、日中の活動、疲労の残り方などを、普段との変化として見ます。
3.今日予定していることは、今の余力に合っているか
「一日全部行く」以外にも、時間を短くする、一部だけ参加する、場所を変える、学校と相談する、今日は休息を選ぶ、といった方法があります。
4.その行動は、本人が目指す方向につながっているか
進学、学習、友人関係、生活、趣味など、本人が大切にしたいことから考えます。まだ本人にも分からないなら、無理に答えを出す必要はありません。
5.「行けたか」だけでなく、やった後まで見る
全部できなかった、途中でやめた、予定より短くした、今日は実行しなかった。そうした結果も含めて、何をやったか、その後どうだったかを見ることで、次の負荷を考える材料になります。
「休ませるか、行かせるか」から、「今日は何を調整するか」へ
不登校・登校しぶりでは、一度の朝だけで「この対応が正解だった」と判断できないことがあります。
大切なのは、登校できたかどうかだけで、その日の支援を評価しないこと。
本人の余力を見る。何が重いのかを見る。何ならまだできるのかを見る。本人がどこへ向かいたいのかを考える。現在の状態に合わせて負荷を調整する。そして、やった後の結果を次の判断材料にする。
今日決めた方法が完璧でなくても、今日分かったことを、次の選択に使うことはできます。
一日の様子だけでは分からないときに|「つながる7日間」
※ここからは、Ig Knowledgeの有料noteのご案内です。この記事で紹介した5つの視点は、このまま無料で使えます。
実際には一日の朝だけを見ても、「何が重いのか分からない」「昨日はできたのに、今日は難しい」「本人自身も、何がつらいのか説明できない」ということがあります。
そういうときは、一度の判断より、何日かの違いを比べることで見えてくることがあります。
Ig Knowledgeでは、生活のどこが重くなっているか、何がまだ保たれているか、どんな条件なら少し動きやすいか、本人にとってどのくらい難しいか、実際にやった後どうだったかを7日間かけて整理する実践ガイド、「休ませるか、行かせるかで迷ったときに|不登校・登校しぶりの『つながる7日間』」を用意しています。
「できた/できなかった」だけでなく、何をやったかを見ること。目標の難易度を上げるだけでなく、下げる・維持することも調整として扱うこと。家庭だけで結論を出すのではなく、整理した情報を学校や心理職などの支援者と共有できる形にすること。
一日では判断しにくいので、何日か整理してみたい。そう感じたときに使ってください。
「つながる7日間」は、不登校の改善や登校再開を保証するものではありません。また、個別の診断・治療を提供するものではありません。安全上の心配や専門的な評価が必要な場合は、教材だけで対応せず、学校・心理職・医療・福祉など必要な支援先へ相談してください。
主な参考文献・資料
- Kearney CA, Benoit L, Gonzálvez C, Heyne D, et al. (2026). School attendance and absenteeism: Towards next-generation common measurement. Review of Education, 14, e70146. DOI: 10.1002/rev3.70146.
- Leduc K, Tougas A-M, Robert V, Boulanger C. (2024). School Refusal in Youth: A Systematic Review of Ecological Factors. Child Psychiatry & Human Development, 55, 1044–1062. DOI: 10.1007/s10578-022-01469-7.
- Jakobsen S, Tølbøll KB, Thastum M, Lomholt JJ. (2025). Cognitive Behavioral Interventions for School Attendance Problems: A Systematic Review and Meta-analysis. Child Psychiatry & Human Development. DOI: 10.1007/s10578-025-01847-x.
- Pérez-Marco M, Gonzálvez C, Fuster A, Vicent M. (2025). A systematic review of intervention programs for school attendance problems. Children and Youth Services Review, 169, 108091. DOI: 10.1016/j.childyouth.2024.108091.
- Chockalingam M, Skinner K, Melvin G, Yap MBH. (2023). Modifiable Parent Factors Associated with Child and Adolescent School Refusal: A Systematic Review. Child Psychiatry & Human Development, 54(5), 1459–1475. DOI: 10.1007/s10578-022-01358-z.
- 文部科学省(2019)「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」。
- 文部科学省(2025)「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」。


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