公認理師資格試験 過去問解説 問5 さまざまな妥当性
- 2023.01.05
- 公認心理師(第5回)
- 心理学統計, 第5回公認心理師試験
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第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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問5 心理学の実験において、独立変数と従属変数の因果関係の確かさの程度を表すものとして、最も適切なものを 1 つ選べ。
① 内的妥当性
② 収束的妥当性
③ 内容的妥当性
④ 基準関連妥当性
⑤ 生態学的妥当性
出典:第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
となります。
選択肢の解説
①内的妥当性
内的妥当性 internal validityとは何か?
内的妥当性とは、従属変数の変化の原因が独立変数の操作に帰せられる度合いをいう。従属変数の変化は独立変数以外の要因(実験統制外の要因)によってもたらされる可能性もあり、「そうしたことがない」と断言しうるほど内的妥当性が高いという。
出典:心理学辞典|有斐閣
内的妥当性 = 独立変数と従属変数の間の因果関係の程度
多くの場合、研究デザインなどで従属変数に影響を与える他の要因(交絡変数)などが十分に統制できているかどうかが評価され、最も内的妥当性が高いのが無作為化比較試験(RCT)とされています。
問題文の記述と合致していますので、今回の問題の正答となります。
②収束的妥当性
収束的妥当性 convergent validity は、測定したい概念が他の理論的な概念との関連性がどの程度あるかを評価する「構成概念妥当性 construct validity」のひとつで、「相関関係」を評価します。
測定したデータと他の近しい概念を測定したデータとの相関関係を評価して、相関関係が強ければ、収束的妥当性が高いということになります。
構成概念妥当性には、関係の浅い他の理論との相関関係を評価する弁別的妥当性discriminant validityもあります。
弁別的妥当性では、測定したデータと理論的に関係の弱い概念を測定したデータとの相関関係を評価して、相関関係が弱ければ弁別的妥当性が高いことになります。
よって、選択肢②は不適当となります。
③内容的妥当性
内容的妥当性 content validityとは
テストの妥当性を、データによってではなく、テスト項目の内容を専門家の目で判断することによって確認しようとする考え方、あるいは、それによって評価された妥当性の程度。
出典:心理学辞典|有斐閣
内容的妥当性では、テストを構成している項目が測定対象となっている概念を反映しているかどうかを専門者間で確認するということになります。
よって、選択肢③は不適当となります。
④基準関連妥当性
基準関連妥当性 criterion related validityとは
テストの得点と、そのテストが測定しようとしている特性をテストよりもより忠実に反映していると考えられる尺度、すなわち外的基準との相関によって評価されたテストの妥当性。
出典:心理学辞典|有斐閣
基準関連妥当性のポイントは「外的基準との相関関係」で、一般的には測定したい概念と関係する別の尺度との相関関係をみていくことになります。
基準関連妥当性では、測定するタイミングの時間軸によって以下の種類があります。
- 併存的妥当性:測定するテストと同じ時点での関係性を評価
- 予測的妥当性:測定するテストより後で外的基準を実施し、テストが将来の他の概念を予測可能かどうかを評価
よって、選択肢④は不適当となります。
⑤生態学的妥当性
生態学的妥当性 ecological validityとは
有機体は環境的事象(遠刺激)を代表する感覚的な近刺激によって環境との関係を保っているが、その近刺激が環境的事象に到達するための手がかりとしてどの程度役に立つかを示す概念。
出典:心理学辞典|有斐閣
生態学的妥当性は、これまでの「意図した概念を測定しているか」といった妥当性とは異なる概念で、「実験結果を一般化できる程度」を意味しています。
これは内的妥当性と関連の近い外的妥当性のひとつとされています。
実験や検査が日常場面で活かせるかどうかを評価している重要なキーワードですね。
問題の回答としては不適切になります。
まとめ
- 内的妥当性:独立変数と従属変数の間の因果関係の程度
- 生態学的妥当性(←外的妥当性):実験結果を一般化できる程度
- 構成概念妥当性:他の理論的な概念との関連性がどの程度あるかを評価
- 収束的妥当性:測定したデータと近しい概念を測定したデータとの相関関係
- 弁別的妥当性:測定したデータと理論的に関係の弱い概念を測定したデータとの相関関係
- 内容的妥当性:構成している項目が測定対象を反映しているかどうかを専門者間で確認
- 基準関連妥当性:外的基準との相関関係
- 併存的妥当性:測定するテストと同じ時点での関係性を評価
- 予測的妥当性:測定するテストより後で外的基準を実施し評価
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