公認心理師資格試験 過去問解説 問46 障害者(児)の心理学「合理的配慮」
- 2021.06.12
- 資格試験
- 発達障害, 第3回公認心理師試験
第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問46】合理的配慮
問46 合理的配慮について、適切なものを1つ選べ。
① 公平性の観点から、入学試験は合理的配慮の適用外である。
② 合理的配慮の対象は、障害者手帳を持っている人に限られる。
③ 合理的配慮によって取り除かれるべき社会的障壁には、障害者に対する偏見も含まれる。
④ 発達障害児がクールダウンするために部屋を確保することは、合理的配慮には含まれない。
③ 合理的配慮によって取り除かれるべき社会的障壁には、障害者に対する偏見も含まれる
となります。
合理的配慮
合理的配慮 reasonable accommodation は、『障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)』によって、不当な差別的取り扱いを防いで「共生社会」を実現を目的として求められているものです。
具体的には、
障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応することを求めています。
出典:リーフレット 「合理的配慮」を知っていますか?|内閣府
となっています。
身体障害・知的障害・精神障害・発達障害・高次脳機能障害などによって、日常生活で制限を受けている人が対象となり、障害者手帳の有無は関係ありません。
具体的な配慮の種類はそれぞれの特性や状況によって異なるため、個別性が高いものとなります。
また、「事業所」「教育現場」などさまざまな場所での合理的配慮が求められています。
特に「雇用」の文脈では、平成28年の『障害者の雇用の促進等に関する法律』の改正によって、すべての事業主に対して合理的配慮の提供が義務づけられています。
キーワード・合理的配慮 = 「雇用」の文脈では、すべての事業主に提供する義務がある。
・手帳の有無と関係なく、障害のある人がその特性による不利益を取り除くために、「何らかの対応を必要としている意思」が伝えられた際に、負担が重すぎない範囲で対応する必要がある。
選択肢の解説
① 公平性の観点から、入学試験は合理的配慮の適用外である。
記事執筆時点(2021年6月)では、国立大学法人では合理的配慮の提供が法的義務とされており、民間の学校法人では努力義務とされており、入学試験に関しても合理的配慮が適用されます。
省庁が出している合理的配慮の具体例を示す資料にも入学試験における配慮に関して記載があります。
入学試験や検定試験において、本人・保護者の希望、障害の状況等を踏まえ、別室での受験、試験時間の延長、点字や拡大文字、音声読み上げ機能の使用等を許可すること
具体的な配慮に関しては以下の論文が参考になりますので、是非読んでみてください。
都築繁幸(2018). 障害学生の大学入試の合理的配慮に関する考察, 障害者教育・福祉学研究, 4, 19-27.
そのため、選択肢①「公平性の観点から、入学試験は合理的配慮の適用外である」は回答として不適切といえます。
② 合理的配慮の対象は、障害者手帳を持っている人に限られる。
合理的配慮の対象は、身体障害・知的障害・精神障害・発達障害・高次脳機能障害などによって、日常生活で制限を受けている人となります。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針にも、
法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない。
と明記されているように、障害者手帳の有無は問われていません。
そのため、選択肢②「合理的配慮の対象は、障害者手帳を持っている人に限られる」は回答として不適切といえます。
③ 合理的配慮によって取り除かれるべき社会的障壁には、障害者に対する偏見も含まれる。
こちらの選択肢については、内閣府が明示している障害を理由とする差別の解消に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>に以下のような記載がされています。
※ 社会的障壁:障害のある方にとって、日常生活や社会生活を送る上で障壁となるような、社会における事物(通行、利用しにくい施設、設備など)、制度(利用しにくい制度など)、慣行(障害のある方の存在を意識していない慣習、文化など)、観念(障害のある方への偏見など)その他一切のもの
つまり 「社会的障壁」=個別の問題のみ というわけではなく、体制そのものや慣習・文化、偏見なども含まれることがわかります。
そのため、選択肢③「合理的配慮によって取り除かれるべき社会的障壁には、障害者に対する偏見も含まれる」は回答として適切といえます。
④ 発達障害児がクールダウンするために部屋を確保することは、合理的配慮には含まれない。
文部科学省による小学校・中学校を対象とした合理的配慮の例を見てみましょう。
9.LD、ADHD、自閉症等の発達障害
個別指導のためのコンピュータ、デジタル教材、小部屋等の確保
クールダウンするための小部屋等の確保
口頭による指導だけでなく、板書、メモ等による情報掲示
このように「クールダウンするための部屋を確保すること」は、発達障害児への合理的な配慮の代表的な例のひとつとして挙げられていますね。
そのため、選択肢④「発達障害児がクールダウンするために部屋を確保することは、合理的配慮には含まれない」は回答として不適切といえます。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問46は、合理的配慮に関する問題でした❗️
合理的配慮の重要なポイントとして、
- 合理的配慮の提供は、障害者差別解消法で規定されている義務(努力義務を含むこと)であること
- 当事者が社会的障壁を取り外すために「何らかの対応を必要としている意思」を表明すること
- 事業者は負担が重すぎず、かつ、本質を損なわないように合理的配慮を提供すること
が挙げられます。
適切な合理的配慮を提供するためには、具体的な事例の蓄積が必要であるため、以下のサイトも参考にしてみると良いでしょう。
公認心理師資格試験 過去問解説 問15 ケース・アドボカシー(権利擁護)
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