公認心理師資格試験 過去問解説 問19 健康・医療に関する心理学「過敏性腸症候群」

公認心理師資格試験 過去問解説 問19 健康・医療に関する心理学「過敏性腸症候群」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

公認心理師試験の勉強方法はこちら💁‍♀️

【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

 

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【問19】健康・医療に関する心理学「過敏性腸症候群」

問19 過敏性腸症候群<IBS>について、正しいものを1つ選べ。

① 過敏性腸炎は、発症と関連しない。

② 内臓痛覚閾値の低下が認められる。

③ 我が国の有病率は、約2%である。

④ プロバイオティクスは、有効ではない。

⑤ 下痢型IBSは女性に多く、便秘型IBSは男性に多い。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ②

 

② 内臓痛覚閾値の低下が認められる。

となります。

 

過敏性腸症候群

 

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)とは?

過敏性腸症候群とは、通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群です。腸の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることにより、引き起こされると考えられています。

出典:過敏性腸症候群|e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

過敏性腸症候群は慢性的な腹痛や腹部の不快感、便通の異常を症状とする代表的な消化器系の心身症とされています。

 

心身症に関する記事はこちらをどうぞ💁🏻

 

便通の状態によって大きく以下の分類があるようです。

  • 下痢型IBS(IBS with diarrhea:IBS-D)
  • 便秘型IBS(IBS with constipation:IBS-C)
  • 混合型IBS(mixed-IBS:IBS-M)
  • 分類不能型IBS(unsubtyped-IBS:IBS-U)

 

IBSの発病の原因は明らかになっていませんが、生理学的な要因のひとつとして内臓痛覚過敏があげられます。

内臓痛覚過敏とは、正常量の管腔内膨張に対する過敏性や正常量の腸内ガスの存在下での痛覚過敏を指し、脳腸相関における神経経路のリモデリングの結果として生じる可能性がある。一部の患者(おそらく7人に1人)は、IBS症状が急性胃腸炎のエピソード後に始まったと報告している(感染後IBSと呼ばれる)。IBS患者の一部では自律神経機能不全がみられる。しかしながら,多くの患者では明らかな異常が認められず,また明らかな異常が認められる患者でも,異常が症状と相関していないことがある。

出典:過敏性腸症候群(IBS) -01. 消化器疾患 -MSDマニュアル プロフェッショナル版

 

内臓痛覚過敏は、簡単にいうと腸内の些細な刺激に対して脳が過剰に反応してしまう状態をさします。

 

「痛み」や「不快感」もで感じるものなので、消化器系疾患に罹患した際の実際の痛みを記憶してしまったことをきっかけに、自律神経が異常に働くこととなり、些細な刺激に反応しやすくなるということがあるようです。

 

つまり、本来内臓の痛覚を感じるはずのレベルの刺激より小さな刺激であっても痛みを感じるようになってしまうということですね。

 

そのため、選択肢「②内臓痛覚閾値の低下が認められる」とは、「内臓の痛みを感じる水準が下がっている(=些細な刺激でも痛みを感じやすくなっている)」ということを意味するため、正しいといえます。

 

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残りの選択肢を見ていきましょう!

残りの選択肢を検討するために、機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群(IBS)を見ていきましょう❕

 

感染腸炎との関連

① 過敏性腸炎は、発症と関連しない。

 

ガイドラインを見ると、

感染性腸炎後の IBS 発症率は約 6〜7 倍増加し,IBS 全体に占める PI-IBS の割合は 5〜25% と推定される。

とあります。

 

PI-IBSとは、post-infectious IBSといい、「感染性腸炎後の過敏性腸症候群」を意味します。

 

つまり、感染性腸炎後は過敏性症候群の発症率は通常の6〜7倍に増加するということです。

 

ガイドライン上には複数のメタアナリシスによる結果が示されているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

以上より、選択肢「①感染性腸炎は、発症と関連しない」は適切とはいえず、選択肢は不適当といえます。

 

過敏性腸症候群の罹患率

③ 我が国の有病率は、約2%である。

ガイドラインを見ると、過敏性腸症候群の罹患率は海外を含めると約10%程度とあります。

 

日本では、年齢によっても差はありますが、概ね13〜14%程度となっています。

 

そのため、選択肢「③我が国の有病率は、約2%である」は不適当といえます。

 

⑤ 下痢型IBSは女性に多く、便秘型IBSは男性に多い。

過敏性腸症候群の性別による差についてですが、女性の方が男性よりも1.6倍程度罹患率が高いとされています。

 

分類に関してわかりやすい解説があったので引用します。

過敏性腸症候群の分類

  • 下痢型/便秘型/交替型(下痢と便秘が交替で現れる)に分類。
  • 患者数は、多い順に、交替型、便秘型、下痢型。
  • 下痢型は男性、便秘型は女性に多い。
  • 便秘型もつらいけれども、下痢型はもっとつらい。
    →医療機関の受診率は、便秘型は約1/3、下痢型は半数以上。

出典:「過敏性腸症候群(IBS)」について-日本臨床内科医会

 

これを見ると、「下痢型=男性に多い」「便秘型=女性に多い」ことがわかります。

 

そのため、選択肢「⑤下痢型IBSは女性に多く、便秘型IBSは男性に多い」は不適当で、「下痢型IBS=男性、便秘型IBS=女性に多い」が正しいといえます。

 

プロバイオティクスは有効か

④ プロバイオティクスは、有効ではない。

 

プロバイオティクスとは?

プロバイオティクスとは、腸内細菌のバランスを改善することによりヒトに有益な作 用をもたらす生菌、またはその微生物を含む薬品や食品自体のことを指す。プレバイオティクスは、上部消化管で分解、吸収されず、腸に共生する有益な細菌の選択的栄養源となりプロバイオティクスの働きを助け、腸内環境の改善を促進する作用を持つ物質のことで、オリゴ糖類や一部の食物繊維が代表的である。

出典:機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群(IBS)

 

簡単にいうと、「身体に良い効果のある細菌が含まれた薬品や食品」のことです。

 

過敏性腸症候群を対象としたプロバイオティクスを用いた介入試験は多数あり、結果にばらつきはありますが、システマティックレビューや無作為化比較試験など、質の高いエビデンスが示されているようです。

 

エビデンスに関して確認したい方はこちらをどうぞ💁🏻

 

プロバイオティクスは副作用の報告もほとんどなく、有効性が示されていることから、過敏性腸症候群に対する治療として推奨されています。

 

そのため、選択肢「④プロバイオティクスは、有効ではない」は不適当といえます。

 

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まとめ

第3回公認心理師資格試験の問19は、健康・医療に関する心理学「過敏性腸症候群」に関する問題でした。

 

過敏性腸症候群も心身症のひとつで、治療方法のなかに薬物療法以外に心理療法も重点が置かれます

 

過敏性腸症候群に対する認知行動療法はこちらの認知行動療法センターのサイトが参考になります。

また、「腸脳相関」という考え方も過敏性腸症候群の理解に重要です。

 

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