公認理師資格試験 過去問解説 問138 事例問題 認知行動療法の導入
- 2023.07.03
- 公認心理師(第3回)
- 事例問題, 気分障害, 第3回公認心理師試験
第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!
【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!
問138
37歳の男性 A、会社員。A は、大学卒業後、製造業に就職し、約10年従事したエンジニア部門から1年前に管理部門に異動となった。 元来、完璧主義で、慣れない仕事への戸惑いを抱えながら仕事を始めた。しかし、8か月前から次第に仕事がたまるようになり、倦怠感が強まり、欠勤も増えた。その後、6か月前に抑うつ気分と気力の低下を主訴に精神科を受診し、うつ病と診断された。そして、抗うつ薬による薬物療法の開始と同時に休職となった。しかし、主治医による外来治療を6か月間受けたが、抑うつ症状が遷延している。院内の公認心理師に、主治医からAの心理的支援が依頼された。
このときのAへの対応として、最も優先されるべきものを1つ選べ。
① 散歩を勧める。
② HAM-Dを行う。
③ うつ病の心理教育を行う
④ 認知行動療法の導入を提案する。
⑤ 発症要因と症状持続要因の評価を行う。
出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
選択肢の解説
事例の概要
事例問題では、はじめにざっくりと事例の概要を整理することが正解に導くための鍵となります。
本事例を整理すると以下のようになります。
- 37歳 男性 会社員
- 完璧主義的な性格傾向があり、8か月前から仕事がたまってきたことを契機に、倦怠感が強くなり、欠勤が増えた。
- うつ病との診断で休職し、6か月間医師による外来治療(薬物療法)を受けたが、抑うつ症状が遷延している状態が続いている。
ポイントは、6か月間医師による外来治療(薬物療法)を受けたが、抑うつ症状が遷延している状態が続いているという部分になりますね。
選択肢の解説
先ほどポイントとして挙げたように、本事例では6か月間医師による外来治療(薬物療法)を受けたが、あまり奏功していない状況となります。
この場合、以下の可能性を考えることが妥当となります。
- 薬物療法以外の心理療法(認知行動療法など)の適応
- 環境調整の必要の検討
認知行動療法は、うつ病患者さんに適応されると、薬物療法と同等程度の効果があるとされており、特に薬物療法と並行して行われると効果的ということがわかっています。
認知行動療法では、患者さんの「自動思考」「認知の偏り」「考えに付随する行動」を扱うことで、気分の変化を狙う治療方法となります。
事例のAさんは、もともと完璧主義的な性格傾向があるため、認知行動療法によって、考え方が変わることにより、遷延した抑うつ症状の改善を図ることができる可能性があります。
一方で、Aさんは部署異動後よりうつ病が発症していると考えられるため、根本的な原因はAさんの考え方よりも職場の環境に存在する可能性も否定できません。
つまり、症状が持続している要因がAさんの考え方や性格と関係ない部分にある可能性を考慮する必要があります。
このように環境の何かしらの要因が強い場合には、認知行動療法よりも環境の調整が優先されることとなります。
すなわち、現時点で最も優先されるのは、アセスメントとなります。
アセスメントを行うことによって、Aさんにとって必要なのが、環境調整なのか、認知行動療法なのか、それ以外の方法なのかを評価する必要があります。
よって、選択肢⑤「発症要因と症状持続要因の評価を行う」が本問題の正当となります。
やみくもに認知行動療法を適応させるのではなく、導入前には充分なアセスメントが必要であることを確認できる問題といえますね。
ちなみに、同じアセスメントと関連する選択肢として、選択肢②「HAM-Dを行う」がありますが、症状評価は治療前後に行うことで現在の症状と効果の具合が測定できる有力なツールではありますが、最優先事項とはいえないため、不適切となります。
HAM-Dに関しては以下の記事を参考にしてください!
-
前の記事
公認理師資格試験 過去問解説 問137 事例問題 GAD-7 2023.03.11
-
次の記事
公認理師資格試験 過去問解説 問139 事例問題 障害者の虐待 2023.07.05
コメントを書く