公認理師資格試験 過去問解説 問125 自我同一性地位について

公認理師資格試験 過去問解説 問125 自我同一性地位について

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問125 J. E. Marcia が提起した自我同一性地位について、正しいものを1つ選べ。

① 同一性達成型とは、人生上の危機を経験し、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒している地位である。

② 早期完了型とは、人生上の危機を発達早期に経験し、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒している地位である。

③ モラトリアム型とは、人生上の危機を経験しておらず、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒していない地位である。

④ 同一性拡散型とは、人生上の危機を経験していないが、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒しようと努力している地位である。

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ①同一性達成型とは、人生上の危機を経験し、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒している地位である

自我同一性地位

自我同一性地位 identity status とは、

マーシア Marcia, J. E.(1966)は、自我同一性の達成という課題への対応のしかたとして、危機(選択への迷い)とコミットという二つの基準から、四つの様態を呈示した。これは、①同一性達成、②モラトリアム、③早期完了、④同一性拡散である。

出典:臨床心理学大事典|培風館

とあります。

そもそも自我同一性 identity は、エリクソンによる概念で「自分とはいったい何者なのか。何のために生きるのか」といったことであり、このような問いについて悩みながら、社会における自分の役割・位置づけを確立していくことが青年期の主な課題とされます。

Marcia(マーシャとも)は、この自我同一性の達成状況について、自我同一性面接という半構造化面接によって、4つの自我同一性地位を見出しました。

分類の際には、

  • 危機を経験したかどうか
  • 人生の重要な領域に積極的に傾倒しているかどうか

という観点が重要視されます。

本問題では、4つの自我同一性地位がそのままそれぞれの選択肢となっているので、詳細は選択肢の部分で解説することにします。

選択肢の解説

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①同一性達成型とは、人生上の危機を経験し、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒している地位である

同一性達成型とは、簡単に述べると、「色々と悩んだ末、自分自身の解決に達して、その解決に従って行動する」段階といえます。

誠実さ、環境への適応、安定した対人関係が特徴とされます。

危機の経験危機を経験している
重要な領域への積極的な傾倒傾倒している

よって、選択肢①「同一性達成型とは、人生上の危機を経験し、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒している地位である」は正しい記述といえます。

②早期完了型とは、人生上の危機を発達早期に経験し、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒している地位である

早期完了型とは、簡単に述べると、「自分の目標と親の目標の間にズレがなく、さまざまな経験が幼児期からの信念の強化にしか過ぎない」段階といえます。

ちなみに、日本ではアメリカと異なりこの早期完了型が多いといわれています。一見、同一性達成型のように見えますが、柔軟性の乏しさが特徴とされます。

危機の経験危機を経験していない
重要な領域への積極的な傾倒傾倒している

よって、選択肢②「早期完了型とは、人生上の危機を発達早期に経験し、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒している地位である」は「人生上の危機を発達早期に経験」の部分が誤りとなります。

③ モラトリアム型とは、人生上の危機を経験しておらず、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒していない地位である

モラトリアム型は、簡単に述べると、「いくつかの選択肢で悩み、努力はしているが、アイデンティティの確立を延期している」段階です。

危機の経験危機を経験している最中
重要な領域への積極的な傾倒傾倒しようとしている

よって、選択肢③「モラトリアム型とは、人生上の危機を経験しておらず、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒していない地位である」は、「人生上の危機を経験しておらず」と「積極的に傾倒していない」が不適切となります。

④同一性拡散型とは、人生上の危機を経験していないが、職業などの人生の重要な領域に積極的に傾倒しようと努力している地位である

同一性拡散型とは、簡単に述べると、「危機の有無にかかわらず、積極的な傾倒がない」段階です。

自分自身について責任を持った主体的な選択ができていない状態で、自己嫌悪無気力が特徴的です。

危機の経験危機の有無にかかわらない
重要な領域への積極的な傾倒傾倒していない

まとめ

自我同一性地位危機の経験要な領域への積極的な傾倒特徴
同一性達成型危機を経験している積極的に傾倒している誠実さ、環境への適応、安定した人間関係
早期完了型危機を経験していない積極的に傾倒している柔軟性の乏しさ(融通が効かない)
モラトリアム型危機を経験している最中積極的に傾倒しようとしている
同一性拡散型危機の有無にかかわらない傾倒していない自己嫌悪、無気力、焦燥