第3回公認心理師試験・午後問113は、A. D. Baddeleyのワーキングメモリ・モデルについて問う問題です。
正答は①「感覚貯蔵」です。
この問題では、ワーキングメモリを単に「短い時間だけ覚えておく記憶」と捉えるのではなく、Baddeleyの多成分モデルを構成する要素を整理しておくことが重要です。
問113の正答は①「感覚貯蔵」
問題は、Baddeleyのワーキングメモリ・モデルのサブシステムとして誤っているものを1つ選ぶという内容です。
- ① 感覚貯蔵
- ② 音韻ループ
- ③ 中央実行系
- ④ エピソード・バッファ
- ⑤ 視空間スケッチパッド
正答は① 感覚貯蔵です。
Baddeleyのワーキングメモリ・モデルとは
ワーキングメモリは、情報を一時的に保持するだけでなく、保持しながら処理するための認知システムとして考えられています。
BaddeleyとHitchが1974年に提案したモデルでは、中心となる中央実行系と、その下で情報を扱う音韻ループ、視空間スケッチパッドという構成が示されました。
その後、Baddeleyは2000年にエピソード・バッファを新たな構成要素として提案しました。
試験対策では、次の4要素を押さえると整理しやすくなります。
| 構成要素 | 主な役割 |
|---|---|
| 中央実行系 | 注意の制御や各システムの調整を担う |
| 音韻ループ | 言語・音声に関する情報を一時的に保持・リハーサルする |
| 視空間スケッチパッド | 視覚・空間的な情報を一時的に保持・操作する |
| エピソード・バッファ | 異なる情報源からの情報を統合し、一時的なまとまりとして保持する |
① 感覚貯蔵が誤りの理由
感覚貯蔵は、Baddeleyのワーキングメモリ・モデルを構成する要素ではありません。
感覚情報をごく短時間保持する「感覚記憶」や「感覚貯蔵」という考え方は記憶研究で重要ですが、Baddeleyの多成分ワーキングメモリ・モデルの中央実行系、音韻ループ、視空間スケッチパッド、エピソード・バッファとは別の概念です。
したがって、①がこの問題の正答です。
② 音韻ループが正しい理由
音韻ループは、音声や言語に関する情報を一時的に保持するシステムです。
Baddeleyのモデルでは、発話可能な情報を短時間維持し、リハーサルによって保持を支える働きが想定されています。
たとえば、聞いた電話番号を声に出さず頭の中で繰り返しながら入力するときのような、言語・音韻情報の一時保持を理解する手がかりになります。
③ 中央実行系が正しい理由
中央実行系は、ワーキングメモリ全体の注意制御や各構成要素の調整に関わる中心的なシステムです。
Baddeleyは中央実行系を、限られた容量をもつ注意制御システムとして整理しています。
「大量の情報を保存する場所」というよりも、必要な情報へ注意を向けたり、課題に応じて処理を調整したりする役割として理解する方が適切です。
④ エピソード・バッファが正しい理由
エピソード・バッファは、Baddeleyが2000年に追加した構成要素です。
音韻ループや視空間スケッチパッドなどから得られる情報と、長期記憶からの情報を結び付け、複数の情報を統合した一時的な表象を保持する有限容量のシステムとして提案されました。
ここで試験対策上重要なのは、エピソード・バッファは1974年の最初のモデルから存在していたわけではないという点です。
1974年のモデルを学んだ資料だけを見るとエピソード・バッファが出てこないことがありますが、それは誤りではなく、モデルが後に改訂されたためです。
⑤ 視空間スケッチパッドが正しい理由
視空間スケッチパッドは、視覚的・空間的な情報を一時的に保持し、操作するシステムです。
形、位置、空間配置などを扱う際に関係する構成要素として理解できます。
②の音韻ループが主に言語・音声情報を扱うのに対し、⑤は視覚・空間情報を扱うという対比で覚えると整理しやすくなります。
試験対策:1974年と2000年を分けて覚える
この問題を理解するうえで、モデルの変遷を時系列で押さえておくと混乱しにくくなります。
- 1974年:BaddeleyとHitchが、中央実行系・音韻ループ・視空間スケッチパッドからなる多成分モデルを提案
- 2000年:Baddeleyがエピソード・バッファを第4の構成要素として提案
したがって、現在このモデルの主要構成要素を問われた場合は、中央実行系・音韻ループ・視空間スケッチパッド・エピソード・バッファの4つをまず思い出します。
この4つに含まれない感覚貯蔵が、本問では誤った選択肢です。
混同しやすいポイント
「短時間だけ情報を保持するものは全部ワーキングメモリ」というわけではありません。
感覚記憶、短期記憶、ワーキングメモリは関連する概念ですが、同じ用語ではありません。また、ワーキングメモリについてもBaddeleyの多成分モデル以外の理論があります。
公認心理師試験では、設問が「A. D. Baddeleyのワーキングメモリ・モデル」とモデルを指定しているため、そのモデルに含まれる構成要素を正確に選ぶことがポイントです。
まとめ
- 第3回公認心理師試験・午後問113の正答は①「感覚貯蔵」
- 中央実行系は注意制御・調整に関わる
- 音韻ループは主に言語・音韻情報を扱う
- 視空間スケッチパッドは主に視覚・空間情報を扱う
- エピソード・バッファは2000年に追加された構成要素
- 感覚貯蔵はBaddeleyの多成分ワーキングメモリ・モデルの構成要素ではない
参考資料
- 公認心理師試験研修センター|第3回公認心理師試験 合格発表・問題冊子・正答
- 公認心理師試験研修センター|第3回公認心理師試験 午後問題
- 公認心理師試験研修センター|第3回公認心理師試験 合格基準及び正答
- Baddeley A. The episodic buffer: a new component of working memory? Trends Cogn Sci. 2000.
- Baddeley AD. Is working memory still working? Am Psychol. 2001.
- Baddeley A. Working memory and language: an overview. J Commun Disord. 2003.


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