公認理師資格試験 過去問解説 問106 薬物動態について
- 2022.09.08
- 公認心理師(第3回)
- 保健医療領域, 第3回公認心理師試験
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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問106 向精神薬の薬物動態について、適切なものを1つ選べ。
① 胆汁中に排泄される。
② 主に腎臓で代謝される。
③ 代謝により活性を失う。
④ 薬物の最高血中濃度は、効果発現の指標になる。
⑤ 初回通過効果は、経静脈的投与の際に影響が大きい。
出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
となります。
薬物動態とは、
薬物動態は,ときに生体が薬物に対して行うことと説明され,薬物が生体に入り,生体を通過し,生体から出る動き,つまり薬物の吸収, 生物学的利用能, 分布, 代謝,および 排泄の経時変化のことを指す。
出典:薬物動態の概要|MSDマニュアル プロフェッショナル版
とあります。
つまり、薬物が体のなかに入ってから出ていくまでの過程についてといえますね。
「吸収」「分布」「代謝」「排泄」という4つのプロセスに分けられます。
選択肢の解説
①胆汁中に排泄される
排泄とは、代謝の結果生じた不要物等を体外に排出させる現象をいいます。
向精神薬は代謝された後に、多くは尿や胆汁から排泄されます。
そのため、選択肢①は正答となります。
②主に腎臓で代謝される
代謝というのは「効果の発現が終わった薬物を体外に排出しやすい状態に変化させること」を指します。
向精神薬の多くは腎臓ではなく、肝臓で代謝され、不活性化されます。
活性とは「薬としての効果が期待される状態」で、不活性化とは「薬の効果の発現が終わった状態」と捉えることができます。
つまり、向精神薬の多くは、薬の効果発現を終えると肝臓で体外に排出しやすい状態に変化することになります。
よって、選択肢②は不適当と考えることができます。
③代謝により活性を失う
選択肢②の解説にも記載しましたが、代謝とは「効果の発言が終わった薬物」を「化学的に変化」させることです。
薬物によって、代謝の結果生じる物質(=代謝物)が活性を失うこともあれば、化学構造が変化して薬理作用(活性)が生じることもあります。このことを代謝活性化といいます。
そのため、本質的には選択肢③は部分的な正答になるのですが、間違いというわけではないため、本問題の正答の1つとされています。
④薬物の最高血中濃度は、効果発現の指標になる
最高血中濃度とは、薬物が投与された後、血液中において薬物の濃度が最も高い状態のことを意味します。
最高血中濃度に達した時点から、投与された薬物の濃度は徐々に減少していきます。
この最高血中濃度は、たとえ同一用量の薬剤を服用しても、個人の薬物体内動態の個人差により等しくなるわけではなく、同じ血中濃度を示したとしても、個人の感受性の違いにより効果発現には違いがでてきます。
そのため、効果発現の指標にはならず、選択肢④は不適切となります。
⑤初回通過効果は、経静脈的投与の際に影響が大きい
初回通過効果とは、薬物が投与された部分から全身に循環する血液に流れていく過程で起こる代謝のことを指します。
わかりやすく説明すると、薬剤が全身に巡る前に肝臓含めた他の臓器を通ることで代謝されて不活性化(薬の作用が失われる)されてしまうことを初回通過効果というわけです。
この初回通過効果は主に経口摂取時に気をつける必要があります。
経静脈的投与では、血液に直接薬剤を入れることになるため、初回通過効果は受けないことになります。
まとめ
第3回公認心理師資格試験 問106は「薬物動態」に関してでした。
薬物動態とは、薬物が生体内で吸収・分布・代謝・排泄と経時的な変化をしていくことを指します。
向精神薬については以下の内容を押さえておきましょう。
- 向精神薬の多くは肝臓で代謝され胆汁に排泄される
- 代謝された薬物は通常不活性化するが、活性を示すこともある
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