公認心理師資格試験 過去問解説 問10 学習及び言語「潜在学習」

公認心理師資格試験 過去問解説 問10 学習及び言語「潜在学習」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

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【問10】学習及び言語 「潜在学習」

問10 E. C. Tolmanは、ラットの迷路学習訓練において、訓練期間の途中から餌報酬を導入する実験を行っている。この実験により明らかになったこととして、最も適切なものを1つ選べ。

① 回避学習

② 観察学習

③ 初期学習

④ 潜在学習

⑤ 逃避学習

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

問10は学習心理学領域に関する問題で、基礎心理学のひとつです。

 

人物名とキーワードが一致していれば簡単に回答が可能な問題ですね。

 

正答は ④

 

④ 潜在学習

 

となります。

 

E. C. Tolman(トールマン)によるラットの迷路学習訓練

 

アメリカの心理学者であるトールマン(Tolman)ホンジック(Honzik)によって、1930年に行われた迷路学習の実験について、イラストで説明します。

 

トールマンらは、ラットを3つの群(グループ)にわけて、迷路学習の実験を行いました。

 

このイラストにも描いたように、ゴールに餌が置かれた群はオペラント条件づけで説明されるように、餌が強化子となって、迷路学習の成績が良くなります。

 

反対に餌が置かれていない第2群と最初の第3群は、第1群と比べて成績が悪い状態でした。ここまでは従来の学習の実験と変わりはありません。

 

この時代の学習についての考え方は、刺激ー反応の二者関係が主流でした。そのため、従来の考え方であれば、第3群は強化子である餌が置かれた瞬間から学習が開始されるため、第1群と概ね同じような時間経過を経て成績の向上の仕方を見せるのが普通でした。

 

ところが、予想に反して途中から餌が追加された第3群の成績があっという間に第1群と同等の成績になりました

 

この実験から、トールマンらは、当時主流であった刺激ー反応の学二者関係によって学習が成立するという流れに反して、直接的・外的な強化子がない状態であっても行動に現れない範囲で学習が進んでいる可能性を考えました。

 

このような学習過程のことを潜在学習といいます。

 

この行動に現れない潜在的な学習について、「認知地図」、「期待」や「確信」などと称されました。

 

残りの選択肢を見ていきましょう

①回避学習(途中省略)

⑤逃避学習

逃避学習と回避学習

ここでは近しい概念である「⑤逃避学習」と「①回避学習」について一度に解説していきます。

 

逃避学習(escape learning)とは、

経験により、嫌悪刺激が呈示されてから逃避反応がなされるまでの反応潜時が短縮されていく学習過程

出典:心理学辞典|有斐閣

とされています。

 

つまり逃避学習とは、目の前にある嫌な刺激から逃げるような反応』が繰り返される体験によって『逃げる反応が出現するまでの時間が早くなっていくことをいいます。

 

一方で、回避学習(avoidance learning)は、

経験により回避反応を形成していくこと。オペラント条件づけの一種

出典:心理学辞典|有斐閣

 

つまり、嫌悪刺激(不快なものやこと)が生じるような状況を事前に回避するような学習過程を回避学習といいます。

 

逃避学習や回避学習は、一度学習されると長期に渡って反応が持続すると考えられています。

 

逃避学習と回避学習の違い

 

回避学習と逃避学習の2つの間の違いは、

  • 嫌悪刺激が呈示されてから反応をする = 逃避
  • 嫌悪刺激が呈示される前の警告刺激呈示中に反応をする = 回避

となります。

 

 

既に目の前にある嫌な刺激から逃げる = 逃避

嫌な刺激が生じる可能性がある状況を避ける = 回避

 

と考えるとわかりやすいでしょう。

 

観察学習

観察学習(observational learning)とは、

自ら直接に経験したり、外部から強化を受けなくとも、他者(モデル)の行動を観察するだけで、その行動型を習得する学習

出典:心理学辞典|有斐閣

とされ、バンデューラ(Bandura, A)によって提唱されました。

 

バンデューラは、人間の模倣行動は必ずしも外的な強化を必要とせず、直接経験することも試行錯誤をする必要もなく学習が成立するという、観察学習の考え方を示した。

出典:心理学辞典|有斐閣

 

一般的な学習は、自分が直接経験して外部から何かしたの強化を受けた結果として生じるとされていますが、この観察学習では「自分の経験以外のものから」学習することが可能であるとわかっています。

 

モデルを観察することで何かの反応を学習するため、モデリングとも呼ばれています。

 

ボボ人形実験

ボボ人形実験とは、バンデューラによって行われた「幼児の攻撃行動の観察学習」に関する実験です。

 

この実験では、「ボボ人形と名付けられた風船を大人が粗暴に扱っている」映像を幼児に対して観せたところ、映像を観ていない幼児と比べて、その後のボボ人形に対する攻撃行動が増加したという結果が得られました。

 

幼児が直接大人の粗暴行為を目撃したり、体験したわけではないのですが、映像を観ることで観察学習が成立して幼児の粗暴行為があらわれる確率が増えたと結論づけられています。

 

初期学習

初期学習とは、初期経験によって得られる学習のことを意味します。

 

初期経験(early experience)

個体発生の初期(哺乳類の場合、おもに受精から離乳開始前までをさす)において、個体がもつさまざまな経験のうち、個体の後の発達に大きな影響を与え、比較行動学者ローレンツの報告した臨界期(もしくは敏感期)における刻印づけのように、場合によっては修正不可能もしくは困難な効果をもたらすもの。

出典:心理学辞典|有斐閣

 

【初期経験としておさえておくべき知識】

  • 刻印づけ(imprinting:インプリンティング)
  • 臨界期(critical period)

 

初期学習では、一度学習が成立すると比較的永続的な行動変化が生じることが多いです。

 

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まとめ

第3回公認心理師資格試験の問10は学習及び言語「潜在学習」に関する知識が問われる問題でした。
今回の記事でのキーワードは以下のものになります。

  • 潜在学習
  • 逃避学習、回避学習
  • 観察学習
  • 初期学習