公認心理師資格試験 過去問解説 第6回 午前 問53|人間性アプローチとMaslow・Rogers

第6回公認心理師試験 午前問53 人間性アプローチとMaslow・Rogersの解説図 公認心理師試験

第6回公認心理師試験・午前問53は、心理学における人間性アプローチ〈humanistic approach〉と関係の深い人物を問う問題です。

正答は ① A. H. Maslow と ③ C. R. Rogers の2つです。

人間性心理学は、精神分析や行動主義とは異なる視点から、

  • 人間の成長可能性
  • 自己実現
  • 主観的体験
  • 自由・選択
  • 自己概念
  • 人間の肯定的側面

などを重視しました。

MaslowとRogersは、その代表的な人物です。

第6回公認心理師試験 午前問53 人間性アプローチとMaslow・Rogersの解説図

問題

人間性アプローチに関係が深い人物として、正しいものを2つ選べ。

  1. A. H. Maslow
  2. A. T. Beck
  3. C. R. Rogers
  4. H. Kohut
  5. J. Wolpe

正答は ①と③ です。

正答①|A. H. Maslow

Abraham H. Maslowは、人間性心理学を代表する心理学者の一人です。

Maslowは、心理学が精神病理や欠陥だけを研究するのではなく、

健康な人間がどのように成長し、自分の可能性を実現していくのか

を研究することを重視しました。

欲求階層説

Maslowで最も有名なのが、欲求の階層的なモデルです。

一般的には、

  1. 生理的欲求
  2. 安全の欲求
  3. 所属と愛の欲求
  4. 承認・尊重の欲求
  5. 自己実現の欲求

という順序で説明されます。

ただし、実際の人間の欲求は単純な階段状に固定されているわけではありません。

試験では、

Maslow → 欲求階層・自己実現 → 人間性心理学

と結びつけておくことが重要です。

自己実現とは

自己実現〈self-actualization〉は、

自分が持つ可能性を十分に発揮し、自分らしい生き方を実現していく方向性

と考えると理解しやすくなります。

人間性心理学では、人間を単に「刺激に反応する存在」や「無意識に支配される存在」としてではなく、

成長する可能性を持つ主体

として捉えます。

正答③|C. R. Rogers

Carl R. Rogersも、人間性心理学を代表する人物です。

Rogersは、

  • クライエント中心療法
  • 来談者中心療法
  • パーソン・センタード・アプローチ

などで知られています。

Rogersは、治療者がクライエントを操作して変えるのではなく、適切な心理的関係が形成されれば、クライエント自身が持つ成長の方向性が発揮されると考えました。

Rogersの中核条件

Rogersの心理療法では、治療関係における次の態度が特に有名です。

  • 自己一致・純粋性
  • 無条件の肯定的関心
  • 共感的理解

これらは、クライエントが自分の体験をより自由に探索し、自己理解を深めるための重要な条件とされます。

Ig Knowledgeでは第4回問9|C. R. Rogersのパーソナリティ理論で、Rogersの自己概念について詳しく扱っています。

また、第6回問41|共感性と同情の違いも、Rogersの共感的理解を整理するうえで関連します。

人間性心理学は「第三の勢力」

20世紀の心理学では、

  • 精神分析
  • 行動主義

が大きな影響力を持っていました。

人間性心理学は、これらとは異なる立場として登場し、しばしば心理学の第三の勢力と呼ばれます。

精神分析が無意識の葛藤、行動主義が観察可能な行動や学習を重視したのに対して、人間性心理学は、

主体的な体験・自由・成長・自己実現

を重視しました。

② A. T. Beck|正答ではない理由

Aaron T. Beckは、認知療法の創始者として知られています。

Beckは、抑うつなどの心理的問題において、

  • 自動思考
  • 認知の歪み
  • 認知スキーマ

などを重視しました。

これは認知療法・認知行動療法の系譜であり、人間性心理学の代表者ではありません。

認知を扱う心理療法については認知再構成法も関連します。

④ H. Kohut|正答ではない理由

Heinz Kohutは、精神分析の流れから発展した自己心理学〈self psychology〉で知られています。

  • 自己対象
  • 鏡映
  • 理想化
  • 自己の凝集性

などの概念と関連します。

「自己」を重視するためRogersと混同しやすいですが、理論的背景は精神分析です。

したがって、人間性アプローチの代表者としては選びません。

⑤ J. Wolpe|正答ではない理由

Joseph Wolpeは、行動療法の発展に大きく貢献した人物です。

とくに、

系統的脱感作法

で知られています。

不安反応に対して、リラクセーションと不安刺激への段階的接近を組み合わせる方法です。

Wolpeは人間性心理学ではなく、行動療法の系譜です。

人物と心理療法の対応を整理する

この問題は、人名を理論体系と対応させると解きやすくなります。

  • Maslow → 人間性心理学・自己実現
  • Rogers → 人間性心理学・クライエント中心療法
  • Beck → 認知療法
  • Kohut → 自己心理学
  • Wolpe → 行動療法・系統的脱感作法

この対応は、公認心理師試験で非常によく出題されます。

RogersとMaslowの共通点・違い

共通点

両者とも、人間を、

  • 成長する可能性を持つ
  • 主体的に選択する
  • より統合された方向へ向かう

存在として重視しました。

Maslow

主に、

  • 動機づけ
  • 欲求
  • 自己実現
  • 健康な人格

を研究しました。

Rogers

主に、

  • 心理療法
  • 自己概念
  • 治療関係
  • クライエントの主観的体験

を重視しました。

現代の心理支援への影響

現在の心理療法は、特定の一学派だけで説明できないほど多様化しています。

それでも、

  • クライエントの主体性を尊重する
  • 共感的に理解する
  • 本人の価値観を尊重する
  • 成長可能性を重視する

という人間性心理学の考え方は、さまざまな心理支援に影響を与えています。

試験での見分け方

「人間性アプローチ」と出たら、まず次の2人を思い出します。

Maslow

Rogers

そして選択肢に、

  • Beck → 認知
  • Wolpe → 行動
  • Kohut → 精神分析・自己心理学

が並んでいれば、分類して判断します。

まとめ

第6回公認心理師試験・午前問53の正答は、

① A. H. Maslow

③ C. R. Rogers

です。

人間性アプローチは、人間の主観的体験、成長可能性、自己実現などを重視します。

試験では、

Maslow=自己実現

Rogers=クライエント中心療法・自己概念・共感的理解

という組み合わせを確実に押さえておきましょう。

参考資料

  • 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第6回公認心理師試験 午前問題・正答
  • American Psychological Association|Dictionary of Psychology: humanistic perspective

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