第6回公認心理師試験・午前問51は、教職員のバーンアウトを予防するための方策・環境整備について、不適切な選択肢を判断する問題です。
正答は ② 業務処理が速い教職員のペースに従わせる です。
この問題のポイントは、バーンアウト予防を、
「本人がもっと頑張ればよい」
ではなく、
「個人のセルフケア+組織の業務調整+援助要請しやすい環境」
の組み合わせで考えることです。

問題
教職員のバーンアウトを予防するために教職員自身や学校が行うべき有効な方策や環境整備として、不適切なものを1つ選べ。
- 教職員の援助要請を促進する。
- 業務処理が速い教職員のペースに従わせる。
- 業務時間・量が過重負担にならないようにする。
- 休息や気分転換などストレス発散のセルフケアを行いやすくする。
正答は ② です。
正答②|「速い人」を基準にしない
同じ学校で働いていても、
- 担当業務
- 経験年数
- 学級状況
- 家庭状況
- 体調
- 得意不得意
- 支援資源
は異なります。
そのため、
「仕事が速い人はこの時間でできているから、全員同じペースでやるべき」
という運用は、バーンアウト予防にはなりません。
むしろ、
- 過剰な比較
- 焦り
- 自責感
- 長時間労働
- 援助要請の抑制
- 心理的安全性の低下
につながる可能性があります。
必要なのは、個人差を無視して一律の速度を求めることではなく、業務量と利用可能な資源を調整することです。
バーンアウトとは
バーンアウト〈burnout〉は、対人援助職などで長期間のストレスが続いた際に生じる心理的な消耗状態として研究されてきました。
Maslachらの議論では、代表的に、
- 情緒的消耗感
- 脱人格化・シニシズム
- 個人的達成感の低下
などが扱われます。
学校教職員は、
- 児童生徒への指導
- 保護者対応
- 校務分掌
- 行事
- 部活動
- 事務作業
- 同僚・管理職との関係
など複数の負荷が重なりやすい職種です。
文部科学省も、教職員のメンタルヘルスを重要課題として継続的に扱っています。
バーンアウト予防は「個人責任」ではない
ストレス対策というと、
「本人がストレス発散をすればよい」
と考えられがちです。
しかし、業務量が過剰なままでは、セルフケアだけで解決することはできません。
バーンアウト予防では、
個人へのアプローチ
- 睡眠
- 休息
- 気分転換
- コーピング
- 相談・援助要請
- 早期の医療相談
組織へのアプローチ
- 業務量の調整
- 長時間労働の是正
- 役割分担
- 相談体制
- 管理職によるラインケア
- 支え合える職場風土
の両方が必要です。
① 援助要請を促進する|適切
教職員が困難を一人で抱え込まず、
- 同僚
- 管理職
- 産業医
- 保健師
- 外部相談窓口
- 医療機関
などに相談できることは重要です。
援助要請が難しい職場では、不調が深刻化するまで周囲に伝わらないことがあります。
現在の文部科学省の教職員メンタルヘルス対策でも、相談窓口の活用や相談しやすい職場環境づくりが重視されています。
したがって①は適切です。
③ 業務時間・量を過重負担にしない|適切
バーンアウト予防では、仕事の「やり方」だけでなく、仕事の量そのものを見直す必要があります。
文部科学省の教職員メンタルヘルス対策に関する資料でも、
- 業務量の増加
- 業務の質の困難化
- 残業時間
- 職場環境
- 人間関係
などが重要な背景として扱われています。
業務量が本人の処理能力や利用可能時間を大幅に超えている場合、
「効率化してください」
だけでは解決できません。
業務の削減、分担、優先順位付け、応援体制の確保などが必要です。
④ セルフケアを行いやすくする|適切
休息や気分転換は、ストレスから回復するために重要です。
たとえば、
- 休憩を確保する
- 年休を取得する
- 睡眠を確保する
- 趣味や運動の時間を持つ
- オンとオフを切り替える
などがあります。
Ig Knowledgeでは、ストレス対処の基本についてコーピングの解説でも詳しく整理しています。
ただし、
セルフケアだけを本人へ求め、組織側の過重負担を放置する
のは不十分です。
「比較」がバーンアウトを強めることがある
学校では、
「A先生はできている」
「若い先生ならもっと速くできる」
「ベテランならこれくらい当然」
といった比較が生じることがあります。
しかし、こうした比較は、
- 業務内容の違い
- 経験
- 支援の有無
- 学級の難しさ
- 心身の状態
を無視しやすくなります。
業務速度を個人評価の唯一の基準にすると、
相談すること=能力不足
という雰囲気が生まれ、援助要請を抑えてしまう可能性があります。
②が不適切なのはこのためです。
教職員のメンタルヘルスでは職場環境を見る
文部科学省は、教職員の精神疾患による病気休職の背景として、
- 児童生徒への指導
- 上司・同僚等との人間関係
- 校務分掌や事務的業務
などを挙げています。
この点からも、
個人のストレス耐性だけではなく、仕事の設計と職場環境を評価する
ことが重要です。
Ig Knowledgeの第3回問28|バーンアウトと職場要因や、第3回問34|感情労働も関連知識として役立ちます。
学校全体で行う一次予防
バーンアウトが深刻化してから個別対応するだけでなく、
不調が起きにくい職場をつくる
という一次予防が重要です。
具体的には、
- 業務の偏りを把握する
- 定時退勤しやすくする
- 相談先を明確化する
- 管理職が定期的に状況を確認する
- 若手が孤立しないよう支援する
- 特定の教職員に難しい案件が集中しないようにする
などが考えられます。
試験での見分け方
バーンアウト予防の選択肢では、
負担を下げるか、支援資源を増やすか
という視点で考えると判断しやすくなります。
- 援助要請を促す → 支援資源を増やす
- 業務量を調整する → 負担を下げる
- 休息・セルフケア → 回復資源を確保する
- 速い人のペースに合わせる → 負担を増やす可能性がある
したがって②が不適切です。
まとめ
第6回公認心理師試験・午前問51の正答は ② 業務処理が速い教職員のペースに従わせる です。
バーンアウト予防では、
個人を速い人へ合わせるのではなく、本人の負担と職場環境を調整する
ことが重要です。
試験では、
個人のセルフケア+援助要請+組織的な業務負担の軽減
という3つの視点を押さえておきましょう。
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第6回公認心理師試験 午前問題・正答
- 文部科学省|教職員のメンタルヘルス対策について
- 文部科学省|教職員のメンタルヘルス対策について〈最終まとめ〉

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