公認心理師資格試験 過去問解説 第4回 午前 問74|学校における自殺後の緊急支援

公認心理師過去問第4回74 公認心理師試験

第4回公認心理師試験・午前問74は、学校で児童生徒の自殺が起きた後に行う緊急支援(ポストベンション)について、スクールカウンセラーに求められる役割を見分ける問題です。正答は④です。

この問題のポイントは、「心のケア」と「背景調査」を混同しないことです。自殺後には、児童生徒・保護者・教職員への心理的支援と、学校や設置者による事実確認・背景調査の両方が必要になることがあります。しかし、外部から緊急派遣されたスクールカウンセラーが担う中心的役割は、危機下にある学校コミュニティの心理的安定を支え、影響を受けた人を把握し、必要な支援につなぐことです。

問題の要旨

学校で生徒の自殺が発生し、緊急支援のためにスクールカウンセラーが派遣された場面を想定します。個別支援、保護者対応、教職員への心理教育などの対応と、事案の背景を調べるための聴き取りを比較し、緊急支援として最も不適切なものを判断する問題です。

正答

④

決め手は、緊急派遣されたスクールカウンセラーの役割を、心理的ケア・危機対応と、学校・教育委員会等が組織的に行う背景調査に分けて考えることです。

自殺後の緊急支援で最優先されること

文部科学省の「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」では、初期の目標として、遺族への配慮、心のケア、学校の日常活動の回復、自殺の連鎖防止などが示されています。危機の直後は、情報が十分に整理されていない段階でも、学校は目の前の安全確保と支援を開始しなければなりません。

このときスクールカウンセラーには、心理職として、強い影響を受けている児童生徒を見つけること、個別に話を聴くこと、保護者や教職員にストレス反応について説明すること、学校内の支援体制を整えることなどが期待されます。

① 個別支援は重要な役割

身近な人の突然の死、とくに自殺は、児童生徒に強い衝撃を与える可能性があります。悲しみだけでなく、眠れない、集中できない、身体症状が出る、強い不安を感じる、罪悪感を抱く、感情が麻痺したようになるなど、反応はさまざまです。

重要なのは、反応を一律に病理化しないことです。衝撃的な出来事の後には幅広い反応が起こり得るため、まず状態を把握し、必要に応じて継続的な支援や医療につなぎます。文部科学省の手引きでも、ケア会議を設け、配慮が必要な児童生徒を把握しながら支援を進めることが示されています。

② 保護者への心理教育も緊急支援に含まれる

子どもが学校でどのような反応を示しているかだけでなく、家庭での睡眠、食欲、落ち着き、強い自責感、死へのこだわりなどを把握するには、保護者との連携が重要です。保護者自身も強い不安を抱えている可能性があります。

文部科学省の手引きでは、保護者会などでスクールカウンセラーが心のケアに関する心理教育を行うことが例示されています。保護者が「どのような反応が起こり得るのか」「どのような状態なら追加支援が必要なのか」を理解できることは、子どもの安全を支えるうえでも意味があります。

③ 教職員自身のケアも忘れない

教職員は児童生徒を支える側ですが、同時に、自分自身も大きな衝撃を受けている可能性があります。担任、部活動顧問、管理職など、亡くなった生徒との関係によって反応の強さも異なります。

手引きでは教職員の健康管理にも触れられており、教職員同士で支え合うことや、必要に応じて医療につなぐことが示されています。スクールカウンセラーが教職員に、強いストレス反応が起こり得ることや、無理に普段どおりに振る舞う必要はないことを説明するのも、学校危機支援の一部です。

④が不適切となる理由:緊急心理支援と背景調査は役割が異なる

この問題で注意したいのは、「自殺後に児童生徒へ事実確認をしてはいけない」という意味ではないことです。そこまで広く解釈すると、現在の制度整理とも整合しません。

学校では、自殺が起きた後、何が起きたのかを把握し、必要に応じて背景調査を行うことがあります。現在の文部科学省の背景調査指針でも、児童生徒への聴き取り等が必要になる場合を想定し、その方法や対象、遺族への説明、児童生徒への心理的負担、心のケアとの連携などを考慮することが求められています。

したがって試験での区別は、聴き取りそのものの可否ではなく、「誰が、何の目的で、どの段階に、どの体制で行うか」です。緊急派遣されたスクールカウンセラーが心のケアの文脈で、いじめの有無などを確定するための調査主体として動くのは、心理支援の役割と背景調査の役割を混同しやすくなります。

背景調査では心理的安全への配慮が必要

自殺の背景を明らかにする必要がある場合でも、聴き取りを急げばよいわけではありません。誰に、いつ、どのように聞くのか、児童生徒が受ける心理的負担をどう減らすのか、聴き取り後のフォローをどうするのかを組織的に考える必要があります。

これは、調査とケアが「どちらか一方」なのではなく、目的を分けたうえで両方を適切に設計するということです。試験では「調査するか・しないか」だけで覚えると誤りやすいため、役割分担まで押さえておくと安定します。

選択肢を解くときの視点

この種の問題では、「スクールカウンセラーだから何でも心理職が行う」と考えないことが重要です。危機支援では、管理職、担任、養護教諭、教育相談担当者、スクールカウンセラー、教育委員会などが役割を分担します。心理職は心理的反応の把握と支援に強みを持ちますが、事実関係の確定や組織としての調査責任まで単独で担うわけではありません。

逆に、調査担当者が心理的ケアを軽視してよいわけでもありません。調査対象となる児童生徒が強いショックを受けている場合、質問の仕方や時期によって負担が増える可能性があります。そのため、ケア担当と調査担当が情報を共有しつつ、目的を混同しない体制が必要です。試験では、「支援の役割」と「調査の役割」を分けたうえで連携するという視点を持つと、選択肢を整理しやすくなります。

試験での見分け方

  • 心のケア:児童生徒・保護者・教職員の反応を把握し、心理教育、個別支援、相談体制の整備、必要な支援先への接続を行う。
  • 学校危機対応:ケア会議、情報共有、学校活動の回復、連鎖防止などを組織的に進める。
  • 背景調査:自殺に至る経過や関連要因を、学校・設置者等が所定の体制で検討する。
  • 注意:背景調査の必要性を否定するのではなく、緊急心理支援の役割と混同しない。

関連知識:ポストベンション

自殺予防は、発生前の予防だけでなく、発生後の支援も重要です。自殺後の支援は一般にポストベンションと呼ばれ、遺された人へのケア、組織の安定化、情報共有、連鎖の防止などを含みます。

職場における自殺後支援については、第5回午前問47の解説も関連します。学校と職場では支援対象や組織構造が異なりますが、「影響を受けた人への支援」「組織的対応」「二次的な危機の予防」という視点は共通しています。

まとめ

第4回午前問74では、学校で生徒の自殺が起きた後の緊急支援について、スクールカウンセラーの役割を判断します。正答は④です。

覚えるべきポイントは、緊急支援の中心は心のケアであり、背景調査とは目的と役割が異なるということです。一方で、「自殺後の聴き取りはすべて不適切」と単純化しないことも重要です。現在の指針では、必要な背景調査を組織的に行いつつ、児童生徒の心理的安全とケアを確保することが求められています。

参考資料

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