【先延ばし】『完璧主義』な人は先延ばしが多いのか少ないのか!?
実際はどうなのでしょうか?
この記事はこんな疑問に対して答える記事となっています。
こんな人におすすめ
完璧主義で先延ばしが多い人を支援している方
この記事のまとめ
評価を気にしているうえでの過剰な努力をする完璧主義的な性格の人は「先延ばし」が増えてしまう
完全主義(完璧主義)とは何か
心理学界隈では完璧主義は完全主義と呼ばれ、研究が進められてきています。
完全主義(perfectionism)とは、
完全さを追求し、自分の行動を過度に批判的に評価することを伴って、非常に高いパフォーマンスの基準を設定することを特徴とする多次元的な性格傾向
とされています。
つまり完全主義とは、「常に自分の行動に対して批判的に評価して理想的な高い目標をかかげる性格」であり、「種類がいくつかある」ことがわかります。
完全主義は「高い水準のパフォーマンスを発揮できたり、継続的な努力を続けることができる」というポジティブな面が強調される一方で、「さまざまな精神疾患との関連性が高い」などネガティブな面も指摘されてきました。
完全主義の分類に関しては諸説ありますが、ここでは、以下の2つをとりあげます。
完全主義的努力(perfectionistic strivings)
完全主義的懸念(perfectionistic concerns)
自分の目標のために努力を惜しまない完全主義的努力
完全主義的努力とは、自分自身に完全性を求めて高い達成基準を自分に課し努力をするタイプのことを指します。
簡単に説明すると、良くも悪くも人の評価に左右されずに、自分の中での目標を高く設定しつつ、自分基準の成功体験を積むために努力を惜しまないタイプといえます。
完全主義的努力=ストイックな人
- 目標を途中で変更することができる
- 自分が達成できる程度の高い目標を設定する
- 課題を達成することに高い動機づけをもち、正確にやり遂げることを重視する
- バランスの取れた考え方をしている
この完全主義的努力はポジティブな感情との関連性が示されています。
人の評価や間違いを避けるために努力する完全主義的懸念
完全主義的懸念とは、間違いを避けることや社会的に決められた完全性を気にして失敗とみなす基準を高く設定してしまうタイプのことを指します。
簡単に説明すると、他人の評価や社会のルールにこだわるあまり自分の些細なミスさえも許すことができないタイプといえます。
完全主義的懸念=評価を気にする人
- 一度決めた目標にこだわる
- 現実的でないくらい高い目標を設定する
- 高い目標を設定していることを「あたりまえ」と考える
- 間違いや失敗を恐れる
- ミスを避けることに価値を置き、間違いや失敗がなかったを重視する
- 白か黒かの二者択一的な考え方をしている
完全主義的懸念は、回避的な対処やネガティブな感情と関連があるといわれています。
Stoeber and Otto (2006)による完全主義の分類
完全主義は、完全主義的努力と完全主義的懸念によって、以下の種類にわけられます。
非完全主義者:完全主義的努力が低い
完全主義者:完全主義的懸念に関係なく、完全主義的努力が高い
不健全完全主義者:完全主義的懸念が高く、完全主義的努力も高い
出典:Stoeber, J., & Otto, K.(2006). Positive Conceptions of Perfectionism: Approaches, Evidence, Challenges
完全主義者は、とにかく、周りの評価を気にせずストイックに取り組む人といえます。
人の評価はどうでもよくて自分が課題を終えることが目標となるため、要領よく課題に取り組むことにを重視します。
反対に、不健全完全主義者は、ストイックに努力をしますがその全てが評価を得るためといえます。どこまで努力したとしても、満足感を得られることがないためミスがなくなるように本質からそれるような細かい部分にまで取り組み続けます。
その結果、不完全主義者は、情報量が多くなってしまい、かえって物事の本質からそれてしまったり、疲れが溜まることでパフォーマンスが落ちてしまうということが起きます。
「
不健全完全主義者は「先延ばし」が多くなる!
これまで「完全主義」に関して簡単に説明してきましたが、そろそろ本題に移りましょう!
「完全主義」と「先延ばし」にはどのような関係性があるのだろうか?
「先延ばし」についてはこちら💁🏻
【先延ばし】先延ばしは自己調節の失敗。最も影響するのは『衝動性』の問題だった!
完全主義的努力が高い人は「先延ばし」は少ない傾向にあるが、完全主義的懸念が高いと「先延ばし」が増える。
結果を「先延ばし」の有力な理論であるTemporal Motivation Theoryや完全主義の分類に当てはめると、
完全主義的努力のみ高い「完全主義者」は、「報酬・結果の期待(価値)」と「得られるという自信(自己効力感)」が保たれているため「先延ばし」が少ない
と考えられます。
反対に、
どちらも高い「不健全完全主義者」は、自分のミスや失敗を恐れたり、「得られるという自信(自己効力感)」が低く期待と現実の結果の差を感じやすいため、「先延ばし」が多い
と考えられます。
また、完璧主義的懸念の高い「不健全完全主義者」は、課題がうまくいった場合でもネガティブな側面にのみ目が向きやすいとされており、ネガティブな考えや感情を繰り返し想い出す事によって、さらに「先延ばし」が増えるという悪循環につながる可能性が高いでしょう。
「先延ばし」の悪循環に関しては、こちらの記事をどうぞ💁🏻
「先延ばし」には時間管理のスキルよりもネガティブな感情のコントロールが効果的
まとめ
この記事では、感覚的には賛否両論のある「完全主義」と「先延ばし」との関連性をまとめました。
疑問の答えとしては、努力が伴うかどうかはさておき、「完全主義的な懸念」が高いタイプの人が「先延ばし」が多くなるようです。
評価を気にしているうえでの過剰な努力をする性格の人は「先延ばし」が増えてしまうということですね!
この「完全主義的懸念」は、「強迫観念」「こだわり」などと言い換えることもでき、強くなり過ぎると苦しさの原因となりやすく、カウンセリングの対象にもなります。
この辺りの話はいずれ別の記事で紹介しようと思います。
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この記事のポイント
「完全主義」には適応的な「完全主義的努力(完全主義者)」と不適応的な「完全主義的懸念(不健全完全主義者)」にわけることができる。
「完全主義的努力」の高い人は、成果(課題を終わらせること)にこだわるため、要領よく課題に取り組むことができ、「先延ばし」は少ない。
「完全主義的懸念」の高い人は、ミスや失敗を避けたい気持ちが強いため、必要でないような細かい部分にまでこだわってしまい、かえってパフォーマンスが低下してしまう。
「完全主義的懸念」の高い人は、うまくいった場合でもネガティブな側面に目が向きやすいため、自己効力感が下がり「先延ばし」が増えてしまう。
引用・参考文献(文中であげたもの以外を記載)
石田裕昭(2005). 大学生の完全主義傾向と課題解決方略の非効率性:なぜ彼らの努力は報われないのか, 社会心理学研究, 20(3), 208-215.
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