公認理師資格試験 過去問解説 問9 子どものディスレクシア
- 2023.01.18
- 公認心理師(第5回)
- 発達障害, 第5回公認心理師試験
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第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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問9 子どものディスレクシアの説明として、最も適切なものを 1 つ選べ。
① 知的能力障害(精神遅滞)を伴う。
② 生育環境が主な原因となって生じる。
③ 文字の音韻情報処理能力に問題はない。
④ 読字と同時に、書字にも障害がみられることが多い。
⑤ この障害のある人の割合は、言語圏によらず一定である。
出典:第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
ディスレクシアとは
ディスレクシア dyslexia とは、学習障害のひとつです。
発達性ディスレクシア
小児期に生じる特異的な読み書き障害は発達性ディスレクシアとして知られ、知的な遅れや視聴覚障害がなく充分な教育歴と本人の努力がみられるにもかかわらず、知的能力から期待される読字能力を獲得することに困難がある状態、と定義されます。
出典:学習障害(限局性学習症)|e-ヘルスネット|厚生労働省
つまり、発達性ディスレクシアは、「知的な遅れ」や「視聴覚障害」といった個人要因や「教育歴」や「勉強の不足」といった環境要因と独立して、その年齢や個人の能力から期待される読字能力(文字を読む能力)を身に付けることができない状態を意味しています。
日本では有病率が概ね4.5%程度とされており、漢字と比較してひらがなの方が障害の程度が低いとされています。
選択肢の解説
①知的能力障害(精神遅滞)を伴う
ディスレクシアの定義は先ほど説明した通り、「知的な遅れがない」ことが大前提となります。
「本人が期待される能力の獲得ができていないこと」が重要であり、知的能力障害の存在や視聴覚障害の存在など、文字を読む能力の獲得が困難となる可能性がある他の要因がない場合に診断がつくということになります。
よって、選択肢①「知的能力障害(精神遅滞)を伴う」は不適切な記述といえますね。
②生育環境が主な原因となって生じる
こちらは選択肢①と近い問題となっています。
ディスレクシアは脳の機能障害であり、「生育環境」などの要因に左右されません。
よって、選択肢②「生育環境が主な原因となって生じる」は不適切な記述といえます。
③ 文字の音韻情報処理能力に問題はない
発達性ディスレクシアの根底には「音韻処理困難」があるとされています。
音韻処理には、
- 字と音を結びつける
- 文字を単語として認識し、意味や読み方を記憶から探してくること
という段階があります。
ディスレクシアの音韻処理困難の詳細は明らかになっていませんが、音韻処理困難が存在していることは明らかになっており、音韻処理困難を考慮に入れた訓練などが検討されています。
よって選択肢③「文字の音韻情報処理能力に問題はない」は不適切な記述といえます。
④読字と同時に、書字にも障害がみられることが多い
なお、通常、読み能力だけでなく書字能力も劣っています。
出典:学習障害(限局性学習症)|e-ヘルスネット|厚生労働省
少し考えればわかることかもしれませんが、ディスレクシアによって読字が障害されると、それに伴って書字も障害されます。
そのため、日本では発達性読み書き障害と呼ばれることもあります。
以上のことから選択肢④「読字と同時に、書字にも障害がみられることが多い」は適切な記述といえます。
⑤この障害のある人の割合は、言語圏によらず一定である
日本語はひらがな・カタカナ・漢字の3つの文字表記がありますが、ひらがなの学習障害は0.8~2.1%の有病率とされます。漢字や英語の学習障害はそれよりさらに多いとも見積もられていますが、文字別の有病率も含めた詳細なデータは今後の研究課題です。
出典:学習障害(限局性学習症)|e-ヘルスネット|厚生労働省
このように詳細なデータは見つかりませんが、言語圏によって有病率に差があることが示唆されています。
よって、選択肢⑤「この障害のある人の割合は、言語圏によらず一定である」は不適切な記述といえます。
まとめ
- ディスレクシア dyslexia は学習障害のひとつで、「知的な遅れ」や「視聴覚障害」といった個人要因や「教育歴」や「努力不足」といった環境要因と独立して、その年齢や個人の能力から期待される読字能力(文字を読む能力)を身に付けることができない状態を意味している。
- 脳の機能障害であり、音韻処理困難がある。通常、読みが障害されると書字も障害される。
- 言語圏によって有病率は異なる。
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