公認理師資格試験 過去問解説 問6 因子分析(調査用紙の回答形式)

公認理師資格試験 過去問解説 問6 因子分析(調査用紙の回答形式)

第4回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

【令和3年10月29日14時】第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)合格発表|講習・試験・登録|一般財団法人 日本心理研修センター 公認心理試験

 

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

 

 

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【問6】因子分析(調査用紙の回答形式)

問6 因子分析による解析を計画している調査用紙の回答形式として、最も適切なものを1つ選べ。

① 順位法

② 一対比較法

③ 自由回答法

④ 評定尺度法

⑤ 文章完成法

出典:第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ④

 

④ 評定尺度法

 

となります。

 

因子分析

因子分析 factor of analysis は、多変量解析の手法のひとつです。

 

心理学では「パーソナリティ特性」などの研究でよく用いられる手法ですね。

因子分析は、観測された変数が潜在変数(共通因子+独自因子)の影響をどの程度受けているかを探る手法といえます。

 

類似した考え方として、主成分分析がありますが、因子分析と主成分分析では、観測変数が原因であるか結果であるかという大きな違いがあります。

 

因子分析は結果である「観測変数」から原因と考えられる潜在変数「共通因子」を抽出していく方法になります。

 

 

以下に、因子分析をするための前提条件を記載するので押さえておきましょう。

  • 数量的なデータ = 間隔尺度あるいは比例尺度
  • 項目同士に相関関係があること
  • データ数が多いこと

 



 

選択肢の解説

① 順位法

順位法とは❓

複数被験者に複数の刺激対象を提示し、対象に対する順位をつけさせ、各対象ごとに度数表を作成し、各順位に対して与える逆の得点(順位1位を最低得点とする得点)に関して中央値を計算することにより得られる尺度は、通常順序尺度を構成する。

出典:心理学辞典|有斐閣

 

順位法のキーワードは、「度数表」「中央値」「順序尺度」となりますね。

 

因子分析の前提として「間隔尺度」「比例尺度」であることが挙げられています。

 

順位法であっても、数値を処理することで「間隔尺度」や「比例尺度」として使用することもできるようですが、基本的には「順序尺度」を構成するため最も適切な選択肢とは言い難いですね。

 

よって、選択肢①「順位法」は問題の回答として不適切になります。

 

② 一対比較法

一対比較法は、複数の刺激対象のなかから任意の2つの対象を取り出して、1対1で比較して順位や差をつけ、最終的に全ての比較結果を総合して評価する方法となります。

 

「順位法」が複数対象にそのまま順位づけをするのと比べて、「一対比較法」では必ず1対1の評価となるため、評価がやりやすい反面で、量が膨大となる可能性があります。

 

こちらも順位法と同様、得られたデータは基本的に順位尺度となるため、第一選択として因子分析による解析は行われません。

 

よって、選択肢②「一対比較法」は不適切な回答となりますね。

 

③ 自由回答法

自由回答法とは、調査用紙に質問項目のみを記載し、回答者に単語や文章を記入してもらう方法となります。

 

自由記述という言葉とほぼ同義ですね。

 

自由回答法で得られたデータ(結果)は基本的には数量的なものではありません

 

そのため、因子分析を解析手法として選択することはできず、質的な分析をすることになります。

 

よって、選択肢③「自由回答法」は回答として不適切といえます。

 

④ 評定尺度法

評定尺度法とは❓

絶対判断によって、特定の記述や形容語で表現される内容への当てはまりの程度をカテゴリ判断させる方法を用いて、順序尺度を構成する。比較判断を用いることも可能である。

出典:谷口高士(2017). 心理評価実験における尺度構成の方法, 日本音響学会誌, 73(12), 774-782.

 

評定尺度法を簡単に説明すると、「特定の言葉や形容語」がどの程度当てはまるかを数字で回答させる方法となります。

 

よくある「非常に当てはまるーやや当てはまるーどちらでもないーやや当てはまらないーほとんど当てはまらない」といった項目などが評定尺度法です。

 

ちなみに、「良いー悪い」「暖かいー寒い」などの反対の意味を持った形容語が用いられる場合をSD法といい、広い意味では評定尺度法に含まれます。

 

評定尺度法の特徴としては以下の内容が挙げられます。

単なる順序尺度や名義尺度としての意味合いしか持たない尺度となる場合もあれば、語の精査と試行錯誤によって間隔あるいは比率尺度に近い測定値が得られる場合もある。

出典:谷口高士(2017). 心理評価実験における尺度構成の方法, 日本音響学会誌, 73(12), 774-782.

 

つまり評定尺度法では、「順序尺度」「名義尺度」となる場合もあれば、「間隔尺度」「比率尺度」と同等の観測値が得られる場合もあるということですね。

 

因子分析では「間隔尺度」「比率尺度」が原則となりますので、基本的には調査用紙の様式はこの評定尺度法となります。

 

⑤ 文章完成法

こちらの選択肢にある「文章完成法」は調査用紙の回答様式ではなく心理検査ですね。

 

文章完成法の解釈では、基本的には因子分析は行われません。

 

よって、選択肢⑤「文章完成法」は不適切な回答と分かります。

 



 

まとめ

第4回公認心理師資格試験の問6は、因子分析(調査用紙の回答様式)に関する問題でした❗️

 

結論を述べると、

因子分析を用いるための調査用紙の回答様式 = 評定尺度法

となります。

 

質問紙尺度に関しては、以下の論文がわかりやすくオススメです。

リンクを貼らせていただきますね❗️