公認理師資格試験 過去問解説 問29 「せん妄」について

公認理師資格試験 過去問解説 問29 「せん妄」について

第4回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

【令和3年10月29日14時】第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)合格発表|講習・試験・登録|一般財団法人 日本心理研修センター 公認心理試験

公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!

【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!

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【問29】「せん妄」について

問29 せん妄について、適切なものを1つ選べ。
① 小児では発症しない。

② 注意の障害を呈する。

③ 早朝に症状が悪化することが多い。

④ 予防には、補聴器の使用を控えた方がよい。

⑤ 予防には、室内の照度を一定にし、昼夜の差をできるだけ小さくすることが有効である。

出典:第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

正答は ②

② 注意の障害を呈する

せん妄とは?

せん妄 delirium とは、

脳が機能不全を起こした状態で、軽い意識障害や注意障害を中心にさまざまな精神症状がみられます。また症状の特徴として、数時間~数日単位で急に発症すること、症状は日内変動することがあります。

出典:重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤性せん妄|厚生労働省

とあります。

簡単に説明するのであれば、せん妄とは、身体的な異常や薬物の使用によって発症する急激な意識障害です。

意識障害に加えて、失見当識(時間や場所などがわからなくなる)などの認知機能障害や、幻覚・妄想、気分の変動などの精神症状が見られることが特徴です。

症状は急に発症し、変動もみられますが、通常は身体状態の回復などに伴い改善が得られていきます。

高齢者や入院治療が必要な重篤な身体疾患をもっている方が高リスクとされるほか、認知症など認知機能が既に低下している方や睡眠薬(特にベンゾジアゼピン系)を服用している方などに起きやすいことがわかっています。

選択肢の解説

①小児では発症しない

せん妄の高リスクは高齢であることですが、小児でもせん妄は発症します。

特に、小児集中治療室(PICU)においてせん妄が見られることがあるようです。

また、小児が発熱(高熱時)に伴い異常な言動が出現する状態を「熱せん妄」といいますが、こちらも小児のせん妄に該当します。

小児のせん妄に関するアセスメントツールも複数存在しているので、併せて確認しておきましょう。

  • CAPD(Cornell Assessment of Pediatric Delirium)
  • psCAM-ICU

以上のことから、選択肢①「小児では発症しない」は不適切な選択肢といえます。

②注意の障害を呈する

せん妄は意識障害と注意障害が典型的な症状です。

注意障害としては、注意を持続させたり切り替えることが困難となりやすく、作業に時間がかかったり、ミスや確認が増えるなどの行動がみられるようになります。

意識障害の程度が軽い場合でも注意障害が認められることがあるため、転倒などにも留意する必要がでてきます。

よって、選択肢②「注意の障害を呈する」は正しい選択肢とえいます。

③早朝に症状が悪化することが多い

せん妄の特徴のひとつとして、症状の日内変動(1日のなかで症状の程度が変化する)があります。

典型的には夜間に症状が悪化し、日中は程度が軽いことが多いとされています。

よって、選択肢③「早朝に症状が悪化することが多い」は不適切な選択肢となりますね。

④予防には、補聴器の使用を控えた方がよい

選択肢④と⑤は予防に関するものとなります。

せん妄の予防的な対策としては以下のものがあげられます。

【せん妄の予防】

  • 現状を理解しやすい環境を整える
    • 時計やカレンダー
    • 時間・場所などの項目を取り入れたコミュニケーションを増やす
  • 夜間の刺激をできるだけ少なくする
  • 睡眠の安定
  • 安心できる環境を整える
  • 身体状態の改善

補聴器の使用に関してですが、日中に感覚が遮断されていることは「現状を理解しやすい環境」や「夜間の刺激を少なくする(日中に刺激が少なくなり過ぎるため)」に反している事項になります。

できる限り日中は補聴器を使用するなど、通常通りに過ごすことが予防には効果的です。

そのため、選択肢④「予防には、補聴器の使用を控えた方がよい」は不適切な選択肢といえますね。

⑤予防には、室内の照度を一定にし、昼夜の差をできるだけ小さくすることが有効である

日中に室内の照度を一定にして昼夜の差をできるだけ小さくすることは、「現状を理解しやすい環境」や「睡眠の安定」と反しています。

良好な睡眠を確保したり、時間の感覚を失わないためにも、カーテンを開けて日の光を浴びることが予防には効果的となるでしょう。

よって、選択肢⑤「予防には、室内の照度を一定にし、昼夜の差をできるだけ小さくすることが有効である」は不適切な選択肢といえます。