公認理師資格試験 過去問解説 問17 関与しながらの観察
- 2023.01.04
- 公認心理師(第4回)
- 第4回公認心理師試験
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【問17】関与しながらの観察
問17 H. S. Sullivan の「関与しながらの観察」を深めていくために必要なことについて、最も適切なものを1つ選べ。
① 自分の中立的な立ち位置が揺れ動かないよう努めること。② 自分のその場での言動と関係付けてクライエントの反応を捉えること。
③ 自分の主観に現れてくるイメージをもとにしてクライエント理解を進めること。
④ 観察の精度を高める道具として、標準化された検査の導入を積極的に進めること。
⑤ これまでのやりとりの流れから切り離して、今ここのクライエントの感情を理解すること。
正答は ②
② 自分のその場での言動と関係付けてクライエントの反応を捉えること
関与しながらの観察
関与しながらの観察 participant observation は、アメリカの精神科医であるHarry Stack Sullivanサリヴァンによって提唱された概念で「治療者(観察者)は自分自身の影響を除外して患者を観察することはできない」というものになります。
対象者(以下、クライエント)の苦悩や葛藤に共感的理解などを示しながらもかかわるという「関与」をしながら、クライエントの表情や態度、状況を客観的に「観察」する態度のことである。
出典:公認心理師必携テキスト|学研
関与しながらの観察は、Lewin レヴィン が展開した個人の特性や環境などのさまざまな条件が相互作用するという場理論 field theory の考え方の影響を受けています。
公認心理師資格試験 過去問解説 問85 感情及び人格 認知-感情システム理論
つまり、「治療者ークライエントという文脈」で生じる関係性(場)を意識しつつ、「主観」も排除しませんが、治療者もひとつの環境と考えて、あくまで客観的な立場(第三者視点)で観察していくことが重要ということになります。
選択肢の解説
①自分の中立的な立ち位置が揺れ動かないよう努めること
関与しながらの観察では、心理面接のなかでの変化がクライエント内のみでなく、治療者-クライエント間の二者関係による相互作用を意識したうえで、観察者という第三者の視点を意識することが重要になります。
したがって、必ずしも「中立的な立場」であり続ける必要はありません。
よって、選択肢①「自分の中立的な立ち位置が揺れ動かないよう努めること」は適切な選択肢とは言えません。
②自分のその場での言動と関係付けてクライエントの反応を捉えること
治療者の言動とクライエントの反応の関係性を捉えようと意識する態度は、治療者自身もクライエントに影響を与える環境として捉えていると考えられます。
よって選択肢②「自分のその場での言動と関係付けてクライエントの反応を捉えること」は問題の回答として適切といえますね。
③自分の主観に現れてくるイメージをもとにしてクライエント理解を進めること
関与しながらの観察では、治療者自身の「主観」を無視する訳ではありませんが、あくまで治療者-クライエント間の二者関係(つまり文脈)に基づいての理解が重要視されます。
よって選択肢③「自分の主観に現れてくるイメージをもとにしてクライエント理解を進めること」は適切とはいえません。
④観察の精度を高める道具として、標準化された検査の導入を積極的に進めること
標準化された検査の導入を積極的に勧めるというよりは、標準化された検査を実施する際もただ検査結果のみで解釈するのではなく、検査中に生じる「二者関係」を意識する必要があります。
そのためこちらの選択肢④「観察の精度を高める道具として、標準化された検査の導入を積極的に進めること」も最も適切とはいえません。
⑤これまでのやりとりの流れから切り離して、今ここのクライエントの感情を理解すること
今ここのクライエントの感情を理解することは重要ですが、これまでのやりとりの流れ(文脈)も意識したうえでの「今ここのクラインエトの感情」が重要視されます。
よって選択肢⑤「これまでのやりとりの流れから切り離して、今ここのクライエントの感情を理解すること」も最も適切とはいえません。
まとめ
- 関与しながらの観察 participant observation:Sullivanサリヴァン
- レヴィンの場理論の影響も受け「治療者(観察者)は自分自身の影響を除外して患者を観察することはできない」と展開している
- 治療者自身も環境として、クライエントとの文脈に基づく二者関係を第三者視点(観察者)として観察していく態度が重要
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